この場合は受検対象?―ストレスチェックの受検対象者とは?

組織1

ストレスチェックは、従業員数が50人以上の事業場において、特定の条件を満たす従業員を対象に、最低1年に1回、心の健康状態をチェックするための検査です。 今回は、ストレスチェックの受検対象者について紹介します。

目次

従業員について

対象となる従業員について、厚生労働省では以下のように定められています。

①期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労 働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上で ある者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されてい る者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。

②その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事 する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

引用元:厚生労働省 労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル

従業員のケース

ここからは、従業員の状況や雇用形態を踏まえて、ストレスチェックの受検対象者になるかご紹介していきます。

休職している従業員

病気やケガ、メンタルヘルス不調等で療養しており、ストレスチェックの実施期間に休職している従業員は受検しなくても問題ありません。

長期出張している従業員

長期の出張で社内にいない従業員は、受検の対象になります。実施時期に受検できない従業員の為に2次受検の機会を設けたり、実施期間を延長すると良いでしょう。

海外で勤務している従業員

海外の現地法人で採用され、勤務している従業員は、日本の法律が適応されないため、受検対象ではありません。しかし、日本の法人から異動により海外支店に配属となった従業員は受検対象となります。

退職が決まっている従業員

退職が決まっている従業員であっても、ストレスチェック実施期間に在籍している場合は受検対象になります。

入社直後の従業員

入社直後の場合は、厚生労働省が定める契約期間や労働時間を確認して、対象者になるかどうかを判断します。

ただし、入社直後にストレスチェックを実施すると、環境の変化や職場に慣れていないことから、ストレスが高くなる可能性があります。ストレスチェックの実施時期は、他の従業員と同じ日程でも別の日程でもかまいませんが、1年以内に行うようにしましょう。

在籍出向契約の従業員

在籍出向の場合、労働契約関係のある事業者で実施されます。労働契約関係が出向元事業者と出向先事業者のどちらにあるかどうかは、働き方(指揮命令権など)や賃金の支払い、就業規則の適用などをみて総合的に判断されます。ストレスチェックを出向元の事業者か出向先の事業者で行うかは事前に協議して定めておくことが望ましいですが、集団分析を行う場合は勤務している事業場単位で実施することが重要なので、可能であれば出向先事業者で実施するのがおすすめです。

派遣契約の従業員

派遣契約の従業員については派遣元事業者がストレスチェックを実施します。

ただし、集団分析については事業場単位で実施することが重要であるため、派遣先事業者は派遣契約の従業員も受検対象者に含め、ストレスチェック結果を集計・分析することが好ましいです。その場合、派遣契約の従業員は派遣元の事業場でも受検する機会が与えられますので、派遣契約の従業員と派遣元事業者に事前に受検の協力を依頼しておきましょう。

アルバイト・パート契約の従業員

1週間の所定労働時間数が4分の3以上あれば、アルバイトやパート契約の従業員もストレスチェックの受検対象者となります。そのため、週に1日しか勤務しないアルバイトやパート契約の従業員は受検対象から外れることになります。

役員も受検対象者?

ストレスチェックは、常時勤務している従業員を対象としています。その中でも役員は使用者に該当するため、ストレスチェックの受検対象者には該当しません。したがって、役員がストレスチェックを受検しなくても問題ありません。

ただし、ストレスチェックの集団分析は事業場の環境を改善することに役立ちます。したがって、役員もできるだけ受検することが望ましいです。

労働基準監督署に提出する報告書には、在籍労働者数や受検者数を記載する際に、役員の数は含まないため、注意が必要です。

関連記事:【解説】ストレスチェック実施後の労働基準監督署への報告

受検対象者に関する注意点

ここまでストレスチェックの実施対象者について紹介してきましたが、ここで注意点があります。

それは、事業場のストレスチェック実施義務の有無を確認するための従業員と、実際にストレスチェックの受検対象となる従業員は異なるということです。

従業員が50人以上の事業場にはストレスチェックを実施する義務があります。

労働安全衛生法施行令第5条には以下のように規定されており、ストレスチェックもこの規定に基づいた事業場に実施義務が課されています。

(産業医を選任すべき事業場)

第五条  法第十三条第一項 の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。

引用元:労働安全衛生法施工令

この条文における「常時五十人以上の労働者」とは、労働者の契約期間や労働時間に関わらず、通常使用されている従業員数を基準とします。

もし当てはまる従業員が50人以上いる場合、その事業場にはストレスチェックの実施義務があります。これが一つ目の従業員の意味です。

二つ目が冒頭でご紹介した厚生労働省が明記している内容で、正社員や契約社員のように、配属された事業場で継続して勤務しており、1週間の所定労働時間数の4分の3以上同じ事業場で勤務している従業員の事を指します。この規定があることが、1つめの従業員との違いです。

まとめると、

  • ストレスチェックの実施義務がある事業場かどうかを判断する時は常態として何人の従業員が働いているのかを集計する。(契約期間や労働時間は関係ない。)
  • ストレスチェックを受検する従業員は、契約期間や労働時間の規定が適用される。

厚生労働省が公開している、ストレスチェック制度に関する資料にも、以下のように明記されています。

Q0-13

ストレスチェックの実施義務の対象は、「常時 50 人以上の労働者を使用する事業場」とされていますが、この 50 人は、どこまで含めてカウントする必要があるのでしょうか。アルバイトやパート労働者も含めるのでしょうか。

労働安全衛生法第 66 条の 10 に基づくストレスチェックは、労働安全衛生法施行令第5条に示す「常時 50 人以上の労働者を使用する事業場」に実施義務が課されています。この場合の「常時使用している労働者が 50 人以上いるかどうか」の判断は、ストレスチェックの対象者のように、契約期間(1年以上)や週の労働時間(通常の労働者の4分の3以上)をもとに判断するのではなく、常態として使用しているかどうかで判断することになります。したがって、例えば週1回しか出勤しないようなアルバイトやパート労働者であっても、継続して雇用し、常態として使用している状態であれば、常時使用している労働者として 50 人のカウントに含めていただく必要があります。

引用元:厚生労働省 ストレスチェック制度関係 Q&A

ストレスチェックの対象という点で、2つの意味が混ざり合っていることに気をつけて判断するようにしましょう。

まとめ

今回は、ストレスチェックの受検対象者についてご紹介しました。

対象者の状況や雇用形態を確認して、適切にストレスチェックの実施が行えるようにしていきましょう。

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