ストレスチェックの『全国平均』とは?集団分析での活用法

ストレスチェックの集団分析で全国平均を基準に自社の結果を比較し職場環境改善に活かす方法を示すイメージ

ストレスチェックの「全国平均」は、集団分析で自社の状態を測るものさしになります。

集団分析の結果を前に、「この数字は高いのか低いのか」と迷ったことはありませんか。判断の基準になるのが、全国平均という数値です。

ただ、この全国平均には少し誤解されやすい性質があります。本記事では、全国平均の正体と、職場環境の改善にどう活かすかを、担当者の目線でわかりやすくお伝えします。

この記事でわかること
– ストレスチェックの「全国平均」が何を示す数値なのか
– 全国平均が毎年更新されない理由と、その出典
– 集団分析で全国平均を活用する手順と、比較時の注意点

ストレスチェックの集団分析で全国平均を基準に自社の結果を比較する様子を示すイメージ
目次

ストレスチェックの「全国平均」は集団分析の基準となる固定値です

結論からお伝えします。全国平均とは、集団分析で自社の結果を比べるための、固定された基準値です。

集団分析とは、ストレスチェックの結果を部署や年代などのまとまりで集計し、傾向を読み取る方法を指します。労働安全衛生法にもとづくストレスチェック制度の中で、努力義務として位置づけられています。

なお2025年の法改正により、2028年4月からは50人未満の事業場にも実施が義務化されます。集団分析を活かす場面は、今後さらに広がります。制度そのものを確認したい方は、ストレスチェックとは何かの基本もご覧ください。

このとき、自社の数値だけを見ても良し悪しは判断できません。比べる相手が必要になります。その比較対象が、全国平均です。

全国平均を使うと、次のことが見えてきます。

  • 自社のストレス状態が、世の中の平均と比べてどの位置にあるか
  • どの部署が、平均より負担を抱えているか
  • 改善の優先順位を、どこから着手すべきか

つまり全国平均は、自社の「現在地」を客観的に知るための地図のような存在です。次の章から、その中身を一つずつ見ていきましょう。

「全国平均」が毎年更新されないのはなぜか

最初に、いちばん誤解されやすい点をお伝えします。全国平均は、毎年更新される数値ではありません。

「全国平均」という名前から、毎年集計し直される最新値だと思われがちです。私たちのもとにも、「今年の全国平均はいつ出ますか」という質問がよく届きます。

しかし実際は違います。ストレスチェックの全国平均は、一度算出されたまま固定された数値です。年度ごとに変わるものではありません。

理由は、その成り立ちにあります。全国平均は、ある大規模な調査研究のデータをもとに作られた基準値だからです。詳しい出典は、次の章で具体的に確認します。

この性質を知っておくと、安心して使えます。毎年違う数値に振り回される心配は不要、ということです。

全国平均はどのデータから算出された数値なのか

全国平均の出どころは、明確に示されています。平成7〜11年度の労働省「作業関連疾患の予防に関する研究」です。

この研究では、全国の労働者から幅広くデータが集められました。数にして、約2.5万人分の調査データです。性別や職種を問わず、多様な集団からサンプルが取られています。

そのデータをもとに算出された基準値が、現在も使われている全国平均です。内訳などの細かい情報は公開されていません。ただ、出典そのものははっきりしています。

使われている質問票は、職業性ストレス簡易調査票という標準的な様式です。57項目で、仕事の負担・周囲の支援・心身の反応などを尋ねます。全国平均も、この調査票の回答をもとにしています。

出典は次の公的な資料で確認できます。

制度の基本的な考え方は、厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」でも確認できます。

集団分析で全国平均をどう活用するか(仕事のストレス判定図)

全国平均は、「仕事のストレス判定図」という形で実務に使われます。これが活用の中心です。

仕事のストレス判定図とは、集団分析の結果を全国平均と比べて、職場の健康リスクを見える化する手法です。難しく聞こえますが、考え方はシンプルになります。

ストレスチェックの仕事のストレス判定図で全国平均と比較し職場の健康リスクを把握する図

判定図は、2つの図で構成されます。

  • 量-コントロール判定図:仕事の量的な負担と、自分で仕事を進める裁量のバランスを見る
  • 職場の支援判定図:上司や同僚から、どれだけ支援を得られているかを見る

それぞれの軸で、自社の集団を全国平均と比較します。全国平均を100としたときに、自社が何点になるかを算出する仕組みです。

総合的な健康リスクも、標準を100として示されます。120なら、平均より約2割リスクが高いという読み方になります。数字が大きいほど、対策の優先度が上がると考えてください。

具体例で考えてみます。ある部署の総合健康リスクが、130と出たとします。これは全国平均の職場より、心身の不調が約3割起こりやすい状態を示します。背景には、仕事量の多さや支援の少なさが隠れています。判定図を見れば、どちらの要因が強いかまで読み取れます。原因の見当をつけてから動ける点が、判定図の強みです。

ざっくり言うと、「全国の平均的な職場と比べて、自社はどのくらい負担が重いか」を測る道具です。数字に苦手意識があっても、心配はいりません。注目すべきは、平均から大きく外れた部分だけです。集団分析の活用を深めたい方は、高ストレス者への対応方法もあわせてご覧ください。

全国平均と比較するときに気をつけたい3つの注意点

便利な全国平均ですが、使い方には注意点があります。読み違えると、誤った判断につながります。

ここでは、現場でつまずきやすい3つのポイントを整理します。集計を担当する前に確認しておくと安心です。

  1. 少人数の集団は慎重に扱う:10人未満では個人が推測されやすく、数値も振れやすくなります
  2. 固定値であることを忘れない:全国平均は最新の世相を反映した値ではありません
  3. 平均との差だけで決めない:数値は出発点であり、現場の声とあわせて解釈します

とくに小規模な事業場では、1つ目の注意が効いてきます。少人数の結果は、全国平均との単純比較だけで判断しないでください。

私が支援の現場で見てきた限り、数字を急いで結論づけた職場ほど、改善が空回りしがちでした。数値は地図であって、答えそのものではありません。

「全国平均」と「高ストレス者の基準」を混同しないでください

全国平均と、高ストレス者を選ぶ基準は、まったく別の仕組みです。よく混同されるので整理します。

高ストレス者の判定は、個人の回答を点数化して行います。一定の合計点を超えた人を、高ストレス者として選ぶ方法です。素点換算法などが使われます。これは個人を対象にした評価になります。

一方、全国平均は集団の傾向を見るための物差しです。個人を選ぶための数値ではありません。

  • 全国平均:集団分析で職場の傾向を比較する固定値
  • 高ストレス者の基準:個人を選定するための合計点の基準

2つは目的が異なります。集計のときは、どちらの話をしているかを意識してください。

全国平均を職場環境改善につなげる進め方

全国平均は、見て終わりでは意味がありません。職場環境の改善まで進めて、はじめて価値が出ます。

改善の進め方には、無理のない順序があります。次のステップで取り組んでください。

ステップ やること
1 集団分析で全国平均と自社を比較する
2 負担が高い部署・要因を特定する
3 現場の声を聞き、原因の仮説を立てる
4 業務量や進め方など、具体策を1つ決める
5 翌年の結果で効果を確認する

ポイントは、一度に多くを変えようとしないことです。優先度の高い部署から、1つずつ手を打ちます。

とくに3つ目の「現場の声を聞く」は飛ばさないでください。数値だけでは、本当の原因までは見えてきません。自由記述や面談から、現場のリアルな事情を補います。地道ですが、ここが改善の質を左右します。

当センターは、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定されています。500〜20,000名規模まで100社以上の集団分析を支援し、リピート率は9割以上です。分析結果の読み解きから改善提案まで、伴走してお手伝いします。

集団分析の集計や判定図の作成を自社だけで進めるのは、想像以上に手間がかかります。負担が大きいと感じたら、外部委託という選択肢もあります。外部に委託すると、調査票の回収やデータ入力を担う実施事務まで任せられます。社内では扱いにくい個人情報を、第三者の環境で管理できる点も安心材料です。なお50人以上の事業場では、検査結果を労働基準監督署へ報告する義務もあります。こうした手続きまで含めて、支援を受けられます。委託先の選び方は、ストレスチェック委託先の選び方で解説しています。

よくある質問(FAQ)

全国平均について、担当者からよく寄せられる質問をまとめました。

社内で説明する際の参考にしてください。短く要点だけお答えします。

Q. 全国平均は毎年変わりますか。
A. 変わりません。平成7〜11年度の研究データから算出された、固定の基準値です。

Q. 全国平均はどこの調査が出典ですか。
A. 労働省「作業関連疾患の予防に関する研究」です。全国約2.5万人のデータが使われています。

Q. 自社の数値が全国平均より高いと問題ですか。
A. すぐに問題と決めつける必要はありません。差の大きい部署から、原因を確認していきます。

Q. 少人数の部署でも全国平均と比べられますか。
A. 比較は可能ですが、慎重さが必要です。10人未満は個人が推測されやすく、数値も振れます。

Q. 仕事のストレス判定図は誰が作りますか。
A. 実施者や委託先が作成します。専用のツールや集計システムを使う方法が一般的です。

Q. 全国平均との比較結果は、何に活かせますか。
A. 職場環境の改善です。負担の高い部署を特定し、業務量や進め方の見直しにつなげます。

Q. 全国平均と高ストレス者の基準は同じものですか。
A. 別物です。全国平均は集団の傾向を見る値、高ストレス者の基準は個人を選ぶ合計点の基準になります。

まとめ:全国平均は「自社の現在地」を知るものさし

ストレスチェックの全国平均は、集団分析で自社を測るための固定の基準値です。

要点を振り返ります。全国平均は毎年更新されず、平成7〜11年度の研究データが出どころです。仕事のストレス判定図を通じて、自社の健康リスクを全国平均と比較できます。少人数の集団は、慎重に扱う必要があります。

数値は、職場をより良くするための出発点です。比較して終わりにせず、負担の高いところから一歩ずつ改善を進めていきましょう。自社の現在地を知ることが、その第一歩になります。比較で終わらせず、改善まで踏み込む姿勢。これが成果を分けます。

集団分析の読み解きや改善の進め方に迷ったら、抱え込まずにご相談ください。私たちが、面倒な部分を一緒に整理します。

 

この記事の編集・監修体制

編集:ストレスチェックサポートセンター編集部

本記事は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、500〜20,000名規模・100社以上のストレスチェック実施を支援してきたストレスチェックサポートセンター編集部が、厚生労働省など公的資料に基づいて作成しています。

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