ストレスチェックの「受検対象者」となる労働者の基本基準
ストレスチェック制度を実施するにあたり、企業の担当者が実務上最も判断に迷いやすいのが「誰を対象者に含めるべきか」という点です。厚生労働省の指針に基づき、ストレスチェックとは、原則として「常時使用する労働者」に実施しなければならないと定められています。
この「常時使用する労働者」に該当するかどうかは、正社員かどうかの肩書ではなく、以下の2つの法的な要件をいずれも満たしているかで判断します。
- 期間の定めのない契約により雇用されている者(期間が定められている場合でも、1年以上使用されることが予定されている者、または更新により1年以上使用されている者を含む)
- 1週間の労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である者
この2つの条件を満たす場合は、どのような雇用形態であっても法的な受検対象者となります。
【雇用形態別】パート・アルバイト・派遣社員の判断実務
実際の現場では、様々な働き方の従業員が在籍しています。雇用形態ごとの具体的な取り扱いについて解説します。
パート・アルバイト・契約社員の判断
上記の「1年以上使用される見込み」であり「週の労働時間が通常の労働者の4分の3以上」という基準を満たしていれば、パート、アルバイト、契約社員などの短時間労働者であってもすべて受検対象者となります。
一方で、週の労働時間が4分の3未満の労働者については、法的な義務の対象外となります。ただし、職場のメンタルヘルスケアをより包括的に進める目的や、後述する集団分析の精度を向上させるために、企業の自主的な判断で受検の機会を提供することは可能です。
派遣労働者の取り扱い
派遣労働者については、一般的に雇用関係のある「派遣元(派遣会社)」にストレスチェックの実施義務があります。したがって、派遣先の企業が自社のストレスチェックに対象者として含める必要は法的にはありません。
ただし、実際に派遣社員が稼働している職場環境のストレス状況を把握するため、派遣先での集団分析の実施や派遣元との連携を考慮することが推奨されています。
対象者へ受検を促すための実務手順と配慮
対象者が確定した後は、スムーズに受検してもらうための体制を整えます。デリケートな個人のメンタルヘルスを扱うため、対象者への丁寧な説明とプライバシーの配慮が不可欠です。
1. 衛生委員会でのルール審議
まずは衛生委員会(小規模事業場で設置義務がない場合は、それに代わる従業員代表との話し合いの場)を設け、対象者の範囲や実施時期、具体的な実施手順を審議し、社内規程として明文化します。
2. 対象者への事前周知と案内
従業員が安心して正直に回答できるよう、案内文のポイントを押さえ、以下の内容を明確に伝えてください。
- 個人結果の通知方法や見方:結果は産業医などの実施者から本人へ直接通知され、同意書による本人の明確な同意がない限り、会社が中身を見ることは絶対にありません。
- 不利益な取扱いの禁止:受検結果や、後述する面接指導の申し出を理由に、解雇や不当な配置転換を行うことは法律で固く禁じられています。
- 安全配慮義務の履行:ストレスチェックは、企業が労働者の心身の安全に配慮する責任を果たすための重要なステップであることを理解してもらいます。
3. WEB受検の活用による受検率の向上
対象者にストレスなく受検してもらうためには、スマートフォンやPCからいつでも回答できる環境作りが効果的です。web受検等のデジタル運用の導入は、対象者の受検ハードルを下げるだけでなく、未受検者への催促や結果回収といった担当者の事務負担を大幅に軽減します。
4. 高ストレス者への面接指導
実施者の判定により「高ストレス者」と認められた従業員から申し出があった場合、企業は医師による面接指導の機会を提供しなければなりません。
【参考】集団分析における対象者の扱い
ストレスチェックは個人のケアだけでなく、組織の課題を可視化する集団分析を行ってこそ意味があります。集団分析では、部署ごとの総合健康リスクを算出し、全国平均(100)と比較して職場のストレス状況を評価します。
ただし、集団分析は原則として「10人以上の集団」で行う必要があります。対象者が少ない部署では個人が特定されてしまう恐れがあるため、事前の同意を得るか、近接する部署と合算して分析を行うといった実務上の配慮が必要です。
集団分析は必須ではありませんが、派遣先での部署での数値の検証のため、派遣先においてもストレスチェックの実施がなされるのが好ましいです。
ストレスチェック対象者に関するよくあるFAQ
Q1. 従業員がストレスチェックの受検を拒否した場合、義務違反になりますか?
ストレスチェックの受検は労働者に対して義務付けられているものではないため、企業が受検を強制することはできません。受検を拒否した労働者がいたとしても、それを理由に不利益な取扱いを行うことは法律で禁止されています。ただし、企業にはストレスチェックを「実施する義務」があるため、対象者全員に受検の機会を提供し、受検を案内したという実績を残しておく必要があります。
Q2. パートやアルバイトの受検基準にある「1年以上」はどのように判断しますか?
過去に引き続き1年以上雇用されている実績がある場合はもちろん、契約期間の定めがあっても「更新により1年以上使用されることが予定されている場合」も含みます。当初の契約期間が短くても、実態として更新が繰り返され1年以上になる見込みであれば、その時点で常時使用する労働者として受検対象者に含めるのが実務上適切です。
Q3. 50人未満の事業場で実施しなかった場合の罰則やリスクは?
法改正により今後50人未満の事業場でも実施が義務化されます。現行法において、50人以上の事業場が労基署報告を怠った場合は50万円以下の罰金が科せられる規定がありますが、50人未満の事業場への施行後の具体的な罰則適用の有無や詳細については現時点で不明です。しかし、実施を怠った状態で従業員がメンタルヘルス不調に陥った場合、企業としての安全配慮義務違反を問われ、民事上の大きな法的リスクを負う可能性がある点に留意する必要があります。
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