労働安全衛生法に基づき、2028年より全事業場にて義務化されるストレスチェック制度。実務担当者がまず直面する課題は、「誰をストレスチェックの対象に含めるべきか」という判定です。
正社員だけでなく、パート・アルバイトや派遣労働者の扱いを誤ると、労働基準監督署への報告不備に繋がるだけでなく、メンタルヘルス不調の未然防止という本来の目的を果たせなくなります。本記事では、法的根拠に基づいた対象者の要件を解説します。
ストレスチェック対象者の基本要件(常時使用する労働者)
ストレスチェックの対象となるのは、原則として「常時使用する労働者」です。厚生労働省の定義では、以下の「契約期間」と「労働時間」の2つの要件をいずれも満たす者が対象となります。
1. 契約期間の要件
期間の定めのない雇用契約の者はもちろん、有期契約労働者であっても、以下のいずれかに該当する場合は「常時使用」とみなされます。
- 1年以上継続して雇用されている者
- 1年以上継続して雇用されることが見込まれる者
- 契約更新により1年以上雇用されることが予定されている者
2. 労働時間の要件
1週間の所定労働時間が、その事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である者が対象です。
【実務担当者へのアドバイス】 一般的なフルタイム労働者が週40時間勤務の場合、週30時間以上働くパートタイマーや契約社員は、法的な実施義務の対象となります。実施漏れがないよう、人事マスターデータの契約条件を事前に確認しておきましょう。
パート・アルバイトの判断基準と推奨される対応
前述の「4分の3」の労働時間に満たない短時間労働者(パート・アルバイト)については、法律上の実施義務はありません。しかし、ストレスチェック制度概要で示されている通り、会社独自の判断で対象に含めることは可能です。
特に、週の労働時間が「通常の労働者の概ね2分の1以上」である場合、職場環境がメンタルヘルスに与える影響は無視できません。企業の安全配慮義務の観点からは、可能な限りこれらの労働者も対象に含めることが望ましいとされています。
派遣労働者の扱いは「派遣元」の責任
派遣労働者に関しては、「誰が実施義務を負うのか」という点で混乱が生じやすいポイントです。
- 実施義務者:派遣元事業者(派遣会社) ストレスチェックの実施、結果の通知、および医師による面接指導の実施義務は、派遣元事業者にあります。
- 派遣先事業者の役割: 派遣先の企業は、自社の集団分析を行う際に派遣労働者のデータを含めることが「努力義務」とされています。また、派遣労働者が安全に働ける環境を整える義務(安全配慮義務)は派遣先にもあるため、状況に応じた配慮が必要です。
役員や休職者の判定実務
役員(取締役)の扱い
原則として、役員は労働者ではないため、ストレスチェックの対象外です。ただし、部長職などを兼務し、賃金が支払われている「兼務役員」の場合は、労働者としての側面から対象に含める必要があります。
休職者・長期出張者
実施期間中に休職している者や、海外出張などで物理的に受検が困難な者については、対象から外しても差し支えありません。ただし、休職から復職したばかりの従業員に対しては、個別に受検の機会を検討するなど、高ストレス者への対応の一環として柔軟なフォローが求められます。
まとめ:適切な対象者選定が制度の信頼性を高める
ストレスチェック対象者の選定は、制度を運用する上での「土台」となります。判定に迷うケースがある場合は、以下のステップで進めることをお勧めします。
- 衛生委員会で自社の対象者範囲(パートの扱い等)を審議し、承認を得る。
- 決定した事項をストレスチェック実施規定に明記し、従業員へ周知する。
- 判定が困難な特殊事例については、地域産業保健センターやストレスチェック代行機関などの専門機関に相談する。
正しい対象者把握に基づき、従業員が安心して受検できる体制を構築しましょう。


