「リモートの社員が増えてから、誰がどれだけ疲れているのか見えない」と感じていませんか。エンジニアの離職が続くと、採用コストの面でも痛手ですよね。この記事では、リモート・客先常駐・多国籍という3つの壁に沿って、IT企業でのストレスチェックの進め方を整理します。
この記事でわかること
- IT企業でストレスチェックが義務になる範囲と2028年の変更点
- エンジニア組織で高ストレス者が出やすい構造的な理由
- リモートワーク中心でも受検率を落とさない実施のコツ
- 自社実施と外部委託の選び方
結論から先に:IT企業のストレスチェックは、常時50人以上の事業場で2015年から義務です。2028年4月1日からは50人未満にも義務が広がります。リモート中心の組織でも、Web受検を使えば案内から結果通知までオンラインで完結できます。
IT企業にストレスチェックの義務はある?対象の条件
IT企業でも、常時50人以上の労働者がいる事業場では、2015年からストレスチェックが義務です。根拠は労働安全衛生法第66条の10で、業種による例外はありません。
ストレスチェックとは、労働者のストレス状態を年1回、質問票で調べる法定の検査のことです。ソフトウェア開発でもWebサービス運営でも、扱いは変わりません。
注意したいのは人数の数え方です。50人には正社員だけでなく、契約社員やアルバイトも含めて数えます。自社で雇用しているエンジニアなら、客先に常駐していても自社の人数に含めます。派遣エンジニアの場合は、実施義務が派遣元にあります。
さらに大きな変化が控えています。2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、2028年(令和10年)4月1日からは50人未満の事業場にも実施が義務化されます。少数精鋭のスタートアップや、地方の開発拠点も対象です。
人数は会社全体ではなく事業場ごとに判断します。開発拠点が複数ある場合は、拠点単位で50人の基準を確認してください。(参考: 厚生労働省 ストレスチェック制度/e-Gov 労働安全衛生法)
IT業界で高ストレス者が出やすい3つの理由
IT業界は、納期前の長時間労働・リモートでの孤立・常駐先で小さい裁量という3つの負荷が重なりやすい仕事です。そのぶん、不調のサインは表に出にくくなります。
厚生労働省は職場のストレスを「仕事の量」「裁量」「周囲の支援」の3軸で捉えています。開発の現場ではどうでしょうか。納期前は業務量が一気に跳ね上がります。仕様は顧客都合で変わり、自分の裁量では動かせません。そしてリモートや常駐先では、不調に気づいてくれる同僚がそばにいないのです。
私がIT企業の総務担当の方から受けた相談で印象的だったのは、「出社していた頃は顔色で分かったが、画面越しでは分からない」という言葉です。チャットの文面は、不調が深刻になる直前まで元気に見えます。だからこそ、年1回のストレスチェックが数少ない気づきの機会になります。
相談者うちのエンジニアは黙々と仕事をするタイプが多く、面談でも本音を話してくれません。チェックをする意味はあるのでしょうか。



口数の少ない職場ほど数字が役に立ちます。本人も自覚していない疲労が点数に表れるからです。離職が続く前に、チームごとの負荷の偏りに気づけた会社を何社も見てきました。


高ストレスと判定された社員への具体的な対応は、高ストレス者への対応方法で詳しく解説しています。
リモートワーク中心でもストレスチェックはできる?
リモートワーク中心のIT企業でも、Web受検を使えばストレスチェックは案内・回答・結果通知までオンラインで完結できます。
ITリテラシーの高い組織とWeb受検の相性は抜群です。パソコンでもスマホでも回答でき、所要時間は1人あたり10分ほど。紙の調査票を郵送する手間はかかりません。
むしろ課題は受検率です。出社の機会がない分、案内メールがチャットの通知に埋もれ、後回しにされがちです。受検期間を2〜3週間確保し、部署ごとの受検状況を見ながらリマインドを送ってください。鍵は、締切直前ではなく中間時点での声かけ。具体的な工夫は受検率を上げる方法にまとめています。
高ストレス者への面接指導も、厚生労働省の通達に基づき、一定の要件を満たせばオンラインで実施できます。全国に社員が散らばっていても、面談のために来社を求める必要はありません。テレワーク下のメンタルヘルス対策は、厚生労働省のポータルサイト「こころの耳」でも特設ページが公開されています。
IT企業のストレスチェック実施手順【5ステップ】
ストレスチェックの実施は、体制づくりから集団分析まで5つのステップで進めます。リモート前提のIT企業でも、流れ自体は変わりません。
実施者(医師・保健師など)と、事務を担う実施事務従事者を決めます。産業医に実施者を依頼するのが一般的です。外部委託の場合は、この体制ごと任せられます。
実施時期・対象者・結果の取り扱いを衛生委員会で調査審議し、社内規程にまとめます。リモート社員の受検方法やオンライン面談の扱いも、ここで決めておくと迷いません。
目的と個人情報の守られ方を伝える案内文を出し、受検期間中にWebまたは紙で回答してもらいます。受検を強制はできないため、案内の丁寧さが受検率を左右します。
結果は実施者から本人へ直接通知します。高ストレス者から申出があれば、医師による面接指導につなげます。オンライン面談も要件を満たせば利用できます。
部署や職種ごとの傾向を分析し、翌年の改善につなげます。常時50人以上の事業場では、実施状況の報告書を労働基準監督署へ提出することが求められます。
自社実施と外部委託、どちらを選ぶ?
総務や人事が他業務と兼務しているIT企業では、担当者の工数と個人情報管理の負担を考えると、外部委託が現実的な選択肢になります。
| 項目 | 自社実施 | 外部委託 |
|---|---|---|
| 担当者の工数 | 案内・督促・集計まで自社対応 | 大部分を委託先に任せられる |
| 個人情報の管理 | 閲覧制限の仕組みを自社で構築 | 委託先が外部で厳格に管理 |
| 実施者の確保 | 産業医などへ個別に依頼 | 委託先の実施者をそのまま利用 |
| 費用 | 人件費として発生 | 1人あたりの受検費用が発生 |
担当者1人で抱え込むと、案内文の作成から高ストレス者への連絡まで、通常業務が止まるほどの作業量になります。個人の結果は社内でも閲覧が厳しく制限されるため、管理の仕組みづくりも負担。エンジニアの情報を扱う会社だからこそ、社員の健康情報の扱いには慎重さが求められます。
当センターは500〜20,000名規模まで100社以上の導入実績があり、リピート率は9割を超えています。最短3日で受検を開始できるため、「気づいたら年度末が近い」という場合でも間に合います。



外部に委託すると、かえって社内の実態が見えなくならないでしょうか。



むしろ逆です。個人結果を外部で安全にお預かりする代わりに、部署別の集団分析レポートをお返しします。担当者は結果の管理ではなく、改善の検討に集中できます。
委託先を比較する際の具体的なポイントは、ストレスチェック委託先の選び方を参考にしてください。
エンジニア組織で差がつく集団分析と多言語対応
ストレスチェックを形骸化させないIT企業は、職種別の集団分析と、外国人エンジニアへの多言語対応まで設計しています。
開発・営業・カスタマーサポートでは、ストレスの出方がまったく違います。職種や部署の単位で集団分析をすると、どのチームに負荷が偏っているかが数字で見えてきます。狙いは、感覚ではなく数字による負荷の見える化。集団分析の読み方は集団分析の基本と活用方法で解説しています。
私の実感では、集団分析の結果を役員や開発マネージャーに報告する場を設けた会社ほど、翌年の受検率と改善の動きが良くなっています。
制度面の動きにも触れておきます。厚生労働省は2026年6月30日に、集団分析に関する労働安全衛生規則の改正を公布しました。個人を特定できない方法での実施が新たに規定され、2027年4月1日に施行されます。集団分析の扱いは、今後さらに厳格さが求められます。
もう一つの壁が言葉です。外国人エンジニアを採用するIT企業では、日本語の設問に正確に答えられない社員が出てしまいます。当センターは英語・ベトナム語の受検に対応しており、多国籍の開発チームでも全員が同じ条件で受検できます。


IT企業のストレスチェックに関するよくある質問
IT企業の担当者から実際によく寄せられる質問をまとめました。自社の状況に近いものから確認してください。
- 客先常駐のエンジニアは、常駐先と自社のどちらでストレスチェックを受けますか?
-
雇用契約を結んでいる会社に実施義務があります。SES契約(客先に常駐して開発を支援する契約)の場合は、雇用元である自社で受検します。派遣契約の場合は派遣元の会社に実施義務があります。
- 業務委託のフリーランスエンジニアもストレスチェックの対象ですか?
-
対象外です。ストレスチェックの対象は雇用関係のある労働者で、業務委託契約のフリーランスには実施義務が及びません。ただし契約名が業務委託でも、実態が雇用に近い場合は労働者と判断される可能性があります。
- 2026年4月からストレスチェックが義務化されるという話は本当ですか?
-
正確ではありません。50人以上の事業場では2015年からすでに義務です。改正労働安全衛生法は2025年5月に公布され、50人未満の事業場への義務化は2028年(令和10年)4月1日から始まります。
- リモート勤務の社員が高ストレス判定になった場合、面接指導もオンラインでできますか?
-
できます。厚生労働省の通達に基づき、一定の要件を満たせば情報通信機器を使った面接指導が認められています。全国にリモート社員がいる会社でも、オンライン面談で対応できます。
- ストレスチェックの結果を会社や上司が見ることはできますか?
-
本人の同意がない限り見られません。結果は実施者から本人へ直接通知され、会社への提供には本人の同意が必要です。上司や人事が無断で閲覧することは制度上できない仕組みです。
- エンジニアが受検してくれない場合、受検を強制できますか?
-
強制はできません。受検するかどうかは本人の意思に委ねられています。ただし事業者には実施義務があり、受検の勧奨も認められています。目的と個人情報の守られ方を丁寧に伝えて、受検を促してください。
まとめ|リモートでも多国籍でも、仕組みを作れば回る
IT企業のストレスチェックは、常時50人以上の事業場で義務です。2028年4月1日からは50人未満にも広がります。リモート・客先常駐・多国籍という3つの壁は、Web受検・受検期間の設計・多言語対応で越えられます。
- 事業場ごとにパート含む人数を確認し、義務の範囲を把握する
- Web受検+中間リマインドで、リモートでも受検率を確保する
- 職種別の集団分析と多言語対応で、結果を職場改善につなげる
毎年の実施を「面倒な義務」で終わらせず、エンジニアが長く働ける環境づくりの機会に変えていきましょう。9年連続で経済産業省の健康経営優良法人に認定されている当センターが、体制づくりから伴走します。進め方に迷ったら、まずは気軽に相談してください。
本記事は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、3〜20,000名規模・100社以上のストレスチェック実施を支援してきたストレスチェックサポートセンター編集部が、厚生労働省など公的資料に基づいて作成しています。
シー・システム株式会社は「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門 ネクストブライト1000)」に認定されています。










