職場環境改善に有効?―集団分析の活用方法とは?

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ストレスチェックの結果は、個人に通知されますが、ある程度の規模の事業所内などでは集団分析を実施することがあります。

集団分析は義務ではありませんが、実施結果を分析して振り返ることで、職場環境の改善に役立てることができます。

今回は集団分析の目的や活用方法などについてご紹介します。

目次

集団分析の目的とは?

集団分析は、部署や職位などの単位ごとにストレスチェック実施後のデータを分析し、人間関係や就労時間などの問題を明らかにして、職場環境を改善することを目的としています。集団分析の特徴は、高ストレス者がどのような属性に多いかなど、具体的な要素を明確にできることです。

したがって、集団分析の結果を職場環境の改善につなげるためには、適切な分析を行い、組織の問題点を洗い出して対策を講じ、その対策が効果を示していたかどうかを検証することが必要です。このようなPDCAサイクルを通じて、職場環境を適切に評価し、職場環境の改善やメンタルヘルスの問題を未然に防ぐことができます。

集団分析結果の公開範囲について

ストレスチェックの結果を取り扱う実施者は、従業員の健康情報の秘密を厳守する責任があります。しかし、集団分析結果は個人の評価に影響を与えないため、従業員の同意を得ずに、実施者から事業主に結果を提供しても問題ありません。そのため、事業主は、集団分析のどの範囲までを公開し、どのような目的で利用するかをあらかじめ衛生委員会などで話し合い、社内規定に明記しておくとよいでしょう。

10人未満の属性の場合

分析対象となった属性が10人未満の場合、個人が特定される危険性があるため、分析結果を事業者に提示することは原則としてできません。

ただし、ストレスチェックの合計点の平均値や仕事のストレス判定図を用いた場合は、個人の結果が特定されるものではない方法のため、3名以上10人未満での集団分析を行うことは可能です。その場合は衛生委員会などで調査審議を行い、従業員に周知する必要があります。

参考:厚生労働省 ストレスチェック制度関係 Q&A

集団分析は努力義務であり法的に罰則はない

従業員が50人以上いる事業所では、年に1度のストレスチェックが義務付けられています。一方、集団分析は努力義務であり、未実施でも法的な罰則はありません。

ただし、集団分析を実施することで、職場環境を改善し、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防止するなどのメリットがあります。

集団分析を行うメリット

集団分析を実施することにはメリットがあります。主に、職場環境の改善、離職率の低下、組織の強みの明確化などです。ここでは、それぞれのメリットについてご紹介していきます。

改善が必要な属性を可視化できる

集団分析を行うことの大きな利点は、属性による分類(支店、部署、職種、年齢、性別など)で、高ストレスな環境を引き起こす要因を統計的に可視化できることです。組織内におけるストレスの種類や程度を数値化することができ、職場改善に取り組む際に共通の認識を持つことができます。

離職率低下につながる

集団分析によって特定された組織や属性の高ストレス要因について、効果的な対策を検討し、対象の支店や部署に指導を行うことで、離職率が低下しやすくなります。

組織の強みを明確化できる

組織の強みを明確化できることも集団分析のメリットです。ストレス度合いの数値が低かった部署や支店の事例や取り組みを、事業所全体に取り入れることで、職場環境が整備され、仕事の質や従業員の定着率の向上につながりやすくなります。また、企業のネガティブな面だけでなく、ポジティブな側面を見出すことで、職場全体のモチベーションの上昇にもつながります。

集団分析の評価・計算方法と見方

厚生労働省が推奨する集団分析の評価方法には、ストレスチェックの分析手段として職業性ストレス簡易調査票(57項目)または簡易版(23項目)があります。これらの2つの手段を使用した場合は、仕事のストレス判定図を使って評価ができます。

仕事のストレス判定図は、仕事におけるストレス要因の程度と、それが従業員の健康に与えるリスクを可視化することができます。また、仕事量の負担やコントロール、上司・同僚の支援などを全国平均と比較し、健康リスクの大きさを評価・把握することができます。

参考:厚生労働省 職業性ストレス簡易調査票を用いた ストレスの現状把握のためのマニュアル

関連記事:【解説】集団分析における「仕事のストレス判定図」とは?

集団分析結果を活用するためには

集団分析の結果が確定したら、いよいよ職場環境の改善に向けた取り組みに移りましょう。環境を変えることで、集団分析の効果を実感できるようになります。ここからは、職場内で実践するために必要なことについてご紹介していきます。

集団分析結果に基づき職場環境を見直す

まずは、全従業員にとって働きやすい環境を実現するために、職場のレイアウトの変更や物品の配置、照明や換気など、できることから取り組んでいきましょう。

高ストレス者が多かった支店や部署では、職場環境に変化を加えることに対して批判的な考え方をする従業員が出てくる可能性があります。このような場合には、職場環境の改善に取り組むことが前向きなアプローチであることを理解してもらうことが重要です。また、高ストレス要因の改善だけでなく、職場の強みを生かす方法を考えていくことも良いでしょう。

他の支店や部署の取り組みを活用する

集団分析結果で良い結果を出している支店や部署の取り組みを活用することも重要です。

これらの取り組みや強みを全社的に活用することで、企業全体の職場環境を改善することができます。

ストレスチェックや集団分析を実施した反省点を次年度に生かす

毎年行うストレスチェックの結果や集団分析結果、その後の職場環境改善に関する実施内容を記録し、保管しておきましょう。

ただし、単に記録を保管するだけではなく、取り組み全体を通じての感想や困難だったこと、課題点や反省点などを整理して、次年度に生かしていくことが大切です。集団分析は手間がかかるように感じるかもしれませんが、ストレスチェックサービスを提供している企業を利用することで、集団分析の集計時間の短縮や作業の効率化に繋がります。

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まとめ

今回は、集団分析の目的や活用方法についてご紹介しました。

ストレスチェックに伴う集団分析は、あくまで企業の努力義務ですが、集団分析には様々なメリットがあります。分析結果や問題点の可視化により、企業が成長するためのヒントを得ることができるでしょう。

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