「持病のある社員が出たけれど、会社として何をすればいいのか分からない」。そんな戸惑いを抱える総務・人事のご担当者は少なくありません。この記事では、厚生労働省のガイドラインをもとに、企業が進める両立支援の中身を、はじめての方にもわかる言葉でまとめます。
この記事でわかること
- 治療と仕事の両立支援ガイドラインの位置づけと目的
- 令和8年4月から努力義務になった背景と、企業がすべきこと
- ガイドラインに沿った両立支援の進め方(5ステップ)
- 中小企業が無理なく始めるためのコツと相談先
結論から先に:治療と仕事の両立支援ガイドラインとは、がんや脳卒中などの治療を続ける社員が働き続けられるよう、企業の取り組み手順を厚生労働省が示した手引きです。令和8年4月から、両立支援は事業主の努力義務になりました。
治療と仕事の両立支援ガイドラインとは?
治療と仕事の両立支援ガイドラインとは、厚生労働省が2016年に策定した、企業向けの実務手引きです。正式名称は「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」といいます。
ざっくり言うと、病気を治しながら働き続けたい社員を、会社がどう支えるかをまとめた道しるべです。対象は、がんや脳卒中、心疾患などの継続的な治療が必要な社員です。
ここで押さえたいのは、似た名前の文書が2つある点です。ひとつが実務手引きの「ガイドライン」、もうひとつが法律にひもづく「指針」です。役割の違いを整理します。
| 文書 | 性格 | 主な中身 |
|---|---|---|
| 両立支援ガイドライン(2016年〜) | 実務の手引き | 進め方・様式例・支援ツール |
| 治療と就業の両立支援指針(令和8年告示第28号) | 法律にもとづく指針 | 努力義務の具体的な内容 |
まずは実務のバイブルがガイドライン、と覚えておけば十分です。次の章で、なぜ今この支援が求められるのかを見ていきます。
なぜ今、両立支援が必要とされるのか?
厚生労働省によると、労働人口の約3人に1人が、何らかの疾病を抱えながら働いています。もはや治療と仕事の両立は、特別な人の話ではありません。

医療の進歩で、かつては「不治の病」とされた病気も、通院しながら働ける時代になりました。一方で、診断をきっかけに離職してしまう方も残っています。
働き手が貴重な中小企業にとって、経験を積んだ社員の離職は大きな痛手。両立支援は、単なる福祉ではなく、人材を守る経営の一手です。私たちが日々ご支援している現場でも、支える仕組みがある会社ほど、社員の定着が安定している実感があります。
ポイント:両立支援は「辞めさせない工夫」です。復帰の見通しが立つことで、社員は安心して治療に専念できます。
【令和8年4月〜】両立支援は事業主の努力義務に
改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)により、令和8年4月1日から、治療と就業の両立支援は事業主の努力義務になりました。根拠は同法第27条の3です。
努力義務とは、罰則はないものの、企業に取り組みが求められる法的な位置づけです。「やってもやらなくてもよい」ではなく、「取り組む姿勢が問われる」段階に入ったとお考えください。
あわせて、国は「治療と就業の両立支援指針」(令和8年厚生労働省告示第28号)を定めました。事業主には、社員からの相談に応じる体制の整備などが求められます。
ここに注意:努力義務でも、無関心な対応が続けば、安全配慮義務違反を問われる場面が生まれます。「知らなかった」で済ませない備えが求められます。
安全配慮義務との関係が気になる方は、あわせて高ストレス者への対応もご確認ください。メンタル不調も、両立支援の対象になり得るためです。
ガイドラインに沿った両立支援の進め方【5ステップ】
両立支援は、社員本人・会社・主治医・産業医が情報をつなぎながら進めます。ガイドラインは、その流れを5つのステップで示しています。

会社の基本方針を示し、相談窓口を決めます。社員が「相談してよい」と思える空気づくりが出発点です。
仕事内容や勤務時間を、会社と本人でまとめます。主治医が働き方を理解するための資料になります。
勤務情報をもとに、就業できるかどうかの意見を主治医に求めます。本人を通じて会社に届けてもらいます。
主治医の意見書を産業医に渡し、就業上の配慮を検討します。時短勤務や配置換えなどの措置を具体化します。
治療の予定と職場の配慮を1枚にまとめます。定期的に面談し、体調に合わせて中身を更新してください。
産業医との連携が要になります。面接指導の流れは、産業医の面接指導の記事もあわせてご覧ください。
対象となる主な疾病は?
ガイドラインが想定する対象は、反復・継続した治療が必要と医師が判断した疾病です。がんや脳卒中など、通院しながら働くケースが中心になります。
| 主な対象疾病 | 両立の例 |
|---|---|
| がん | 通院日の休暇・体調に応じた時短 |
| 脳卒中・心疾患 | 復職後の業務負荷の調整 |
| 糖尿病・肝疾患 | 定期通院の時間確保 |
| 難病 | 症状の波に合わせた勤務配慮 |
体の病気だけでなく、うつ病などのメンタル不調も、両立支援の考え方が生きます。心の不調は見えにくいぶん、早めの気づきがカギになります。
両立支援を進めるときの注意点
両立支援で最も気をつけたいのは、病気に関する情報の取り扱いです。健康情報は機微な個人情報のため、本人の同意なく共有してはいけません。
相談者病名を職場のみんなに知られてしまうのが心配で、社員が相談をためらいそうです……。



その不安はもっともです。情報を扱う担当者を絞り、共有範囲を本人に確認してから進めると、安心して相談してもらえますよ。
もうひとつの注意点は、会社だけで抱え込まないことです。主治医・産業医・本人の三者をつなぐ調整役として、両立支援コーディネーターという専門人材もいます。
両立支援コーディネーターとは、本人の同意のもとで関係者の調整を担う支援者です。産業保健総合支援センター(さんぽセンター)などで相談できます。
中小企業が無理なく両立支援を始めるコツ
専任の産業保健スタッフがいない中小企業でも、両立支援は始められます。まずは相談窓口を1つ決め、社内に周知するだけで第一歩になります。
厚生労働省の「治療と仕事の両立支援ナビ」には、様式例や事例が無料で公開されています。ゼロから作らず、既存の型を使ってください。
私たちがご相談を受ける中でも、いきなり完璧な制度を目指して止まってしまう会社が目立ちます。小さく始めて、事例が出るたびに整えるほうが続きます。
あわせて、メンタル不調の早期発見にはストレスチェックが役立ちます。当社は9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、プライバシーマークのもと自社サーバーで個人情報を管理しています。健康情報を安心して預けられる体制を整えています。
これまで100社以上・数名〜6,000名規模の導入を支援し、翌年も継続いただくリピート率は9割以上です。制度対応に不慣れなご担当者にこそ、伴走型でお手伝いします。
外部の力を借りる選び方は、委託先の選び方の記事も参考になります。自社に合う支援の形を一緒に探しましょう。
よくある質問
- 治療と仕事の両立支援ガイドラインとは何ですか?
-
厚生労働省が2016年に策定した、企業向けの実務手引きです。がんなどの治療を続ける社員が働き続けられるよう、会社の取り組みの進め方や様式例をまとめています。正式名称は「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」です。
- 両立支援は法律で義務ですか?
-
令和8年4月1日から、事業主の努力義務になりました。改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)第27条の3が根拠です。罰則はありませんが、企業に取り組む姿勢が求められる位置づけです。
- 両立支援の対象になる病気は何ですか?
-
反復・継続した治療が必要と医師が判断した疾病が対象です。がん、脳卒中、心疾患、糖尿病、肝疾患、難病などが代表例です。うつ病などのメンタル不調も、同じ考え方で支援できます。
- 勤務情報提供書は誰が作りますか?
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会社と社員本人が一緒に作成します。仕事内容や勤務時間、通勤の状況などをまとめ、本人を通じて主治医に渡します。主治医が就業の可否を判断するための材料になります。
- 中小企業でも両立支援はできますか?
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専任スタッフがいなくても始められます。相談窓口を1つ決めて社内に周知するだけでも第一歩になります。厚生労働省の「治療と仕事の両立支援ナビ」の様式例や、さんぽセンターの無料相談を活用してください。
- ストレスチェックと両立支援は関係がありますか?
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深く関係します。ストレスチェックは、メンタル不調の早期発見に役立つ仕組みです。不調のサインに早く気づけば、休職や離職を防ぎ、心の病気の両立支援にもつなげられます。
まとめ:小さく始めて、社員を守る仕組みへ
治療と仕事の両立支援ガイドラインは、病気を抱える社員を支える実務の道しるべ。令和8年4月からは、両立支援が事業主の努力義務になりました。
まずは相談窓口を決め、勤務情報提供書などの様式をそろえるところから始めてください。産業医やさんぽセンターと連携すれば、少人数の会社でも十分に運用できます。
心の不調の早期発見という入り口から、両立支援を整えたい会社もあるはずです。ストレスチェックの運用でお困りなら、迷わずご相談ください。現場の担当者と一緒に、無理のない形を考えます。
参考: 厚生労働省「治療と仕事の両立について」/治療と仕事の両立支援ナビ/厚生労働省 ストレスチェック制度
本記事は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、3〜20,000名規模・100社以上のストレスチェック実施を支援してきたストレスチェックサポートセンター編集部が、厚生労働省など公的資料に基づいて作成しています。
シー・システム株式会社は「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門 ネクストブライト1000)」に認定されています。












