従業員が10人を超えた頃、「安全衛生推進者はいますか」と社労士から聞かれて戸惑った経験はありませんか。次々に増える義務への対応、正直大変ですよね。この記事では、選任義務の対象から資格・手順・罰則までを一気に整理します。
この記事でわかること
- 安全衛生推進者の選任義務がある事業場の条件(10〜49人・業種)
- 選任できる人の資格要件と講習、14日以内に行う選任の手順
- 選任しない場合の罰則と、2028年のストレスチェック義務化への備え
結論から先に:安全衛生推進者は、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場で選任が求められる安全衛生の担当者です(労働安全衛生法第12条の2)。期限は選任すべき事由が発生した日から14日以内で、労働基準監督署への報告は不要です。
安全衛生推進者とは?何をする担当者?
安全衛生推進者とは、小規模な事業場で職場の安全と従業員の健康を守る業務を担当する人のことです(労働安全衛生法第12条の2)。
従業員50人以上の事業場には、衛生管理者や産業医の選任義務があります。では49人以下なら誰も置かなくてよいのかというと、そうではありません。10〜49人の事業場では、代わりに安全衛生推進者がその役割を担う仕組みです。
- 施設・設備・作業方法の点検と、危険や健康障害を防ぐ措置
- 従業員への安全衛生教育の実施
- 健康診断の実施など、健康の保持増進のための取り組み
- 労働災害の原因調査と再発防止対策
実際の現場では、この選任が漏れている会社が目立ちます。
選任義務があるのはどんな事業場?【10〜49人・業種で判定】
安全衛生推進者(または衛生推進者)の選任義務は、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場にあります(労働安全衛生規則第12条の2)。
判定のポイントは2つ。人数の数え方と、業種の区分です。
人数は「事業場ごと」に、パート・アルバイトも含めて数える
人数のカウントは会社全体ではなく、本社・支店・工場といった事業場単位で行います。日雇いを除き、継続して雇用しているパート・アルバイトも「常時使用する労働者」に含めて数えてください。9人の事業場が1人採用して10人になれば、その時点で選任義務が発生します。
業種によって「安全衛生推進者」か「衛生推進者」かが分かれる
どちらを選任するかは、労働災害のリスクが高い業種かどうかで決まります(労働安全衛生法施行令第2条の業種区分)。
| 選任する担当者 | 対象業種の例 |
|---|---|
| 安全衛生推進者(安全+衛生を担当) | 建設業、製造業、運送業、林業、清掃業、電気・ガス業、通信業、各種商品卸売・小売業、旅館業、自動車整備業 など |
| 衛生推進者(衛生のみ担当) | 上記以外の業種(金融・保険業、IT・情報サービス業、士業・コンサルティングなどの事務中心の業種) |
相談者うちは事務中心の20人の会社です。それでも選任が必要なのでしょうか?



はい、必要です。事務中心の業種なら「衛生推進者」を1名選んでください。健康診断やメンタルヘルス対策など、衛生面の担当者という位置づけです。


安全衛生推進者になれる人は?資格要件と講習
安全衛生推進者には、養成講習の修了者や一定の実務経験者など、担当業務に必要な能力を持つ人を選ぶことが求められます(労働安全衛生規則第12条の3)。
国家試験はなく、次のいずれかに当てはまれば選任できます。社内の総務担当者が講習を受けて就くケースが最も一般的です。
- 都道府県労働局長の登録を受けた機関の養成講習を修了した人
- 大学・高専卒業後1年以上、安全衛生の実務経験がある人
- 高校卒業後3年以上、安全衛生の実務経験がある人
- 5年以上の安全衛生の実務経験がある人
- 衛生管理者の免許保持者や労働安全・労働衛生コンサルタントなど
養成講習の時間は、安全衛生推進者が計10時間(多くの機関で2日間)、衛生推進者は計5時間(1日)です。Web受講に対応する登録機関もあり、受講料は機関ごとに異なるため、申し込み前に確認してください。原則として、その事業場に専属の人を選びます。労働安全コンサルタント等へ委嘱する場合は例外です。
選任の手順は3ステップ【労基署への報告は不要】
安全衛生推進者の選任は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に行うことが求められます(労働安全衛生規則第12条の3)。
手続き自体はシンプル。次の3ステップで完了します。
事業場ごとの人数(パート・アルバイト含む)が10〜49人かを確認します。業種区分もあわせてチェックし、安全衛生推進者か衛生推進者かを判定してください。
養成講習の修了者や実務経験者の中から選びます。該当者がいない場合は、養成講習の受講を前提に候補者を決め、早めに申し込みましょう。
選任した人の氏名を、作業場の見やすい場所への掲示などで関係労働者に周知します(労働安全衛生規則第12条の4)。労働基準監督署への報告書の提出は不要です。
衛生管理者や産業医と違って選任報告の様式はありません。その手軽さゆえに、周知まで済ませていない会社が多いのも実情です。掲示まで終えて、はじめて選任完了と考えてください。
選任しないとどうなる?罰則と実務上のリスク
安全衛生推進者の選任義務に違反した場合、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金の対象となる可能性があります。
罰金額の大きさ以上に怖いのは、労災発生時の影響です。事故後の調査で選任漏れが判明すると、安全管理体制の不備として指摘されます。安全配慮義務違反を問われる民事上のリスクも無視できません。
私たちがストレスチェックのご相談を受ける50人前後の企業でも、「推進者は決めていたが、周知はしていなかった」「そもそも誰が担当か分からない」というケースを何度も見てきました。選任・周知・記録の3点セットを、この機会に整えておきましょう。
2028年のストレスチェック義務化で推進者の役割はどう変わる?
厚生労働省は2026年6月10日、令和10年(2028年)4月1日から労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されると公表しています(厚生労働省 ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策)。
根拠は2025年5月公布の改正労働安全衛生法です。安全衛生推進者を置く10〜49人の事業場は、まさにこの新義務の対象です。つまり推進者は、今後ストレスチェックの社内窓口や実施事務従事者(受検案内や結果の取りまとめなど事務を担う人)を兼ねる可能性が高い存在になります。いわば、メンタルヘルス対策の司令塔という新しい顔。



推進者の選任だけでも手一杯なのに、ストレスチェックまで社内でできる気がしません…。



全部を自社で抱える必要はありませんよ。実施者や結果管理は外部委託できます。当社は500〜20,000名規模まで100社以上の実施を代行しており、最短3日で受検を始められます。迷ったら相談してください。
50人未満の事業場向けの実施方法は、厚生労働省のポータルサイト「こころの耳」でも案内されています。


従業員が50人以上になったら?体制の切り替え一覧
事業場の労働者が常時50人以上になると、安全衛生推進者に代えて衛生管理者などの選任が求められ、労働基準監督署への報告義務も加わります。
会社の成長にあわせて、義務は段階的に切り替わります。50人の節目でご相談いただく総務の方の多くは、「何と何を同時に始めるべきか」で悩まれています。次の表で全体像をつかんでください。
| 項目 | 10〜49人の事業場 | 50人以上の事業場 |
|---|---|---|
| 担当者の選任 | 安全衛生推進者・衛生推進者 | 衛生管理者+産業医 |
| 会議体 | 不要(安全衛生の話し合いは任意) | 衛生委員会の設置・毎月開催 |
| ストレスチェック | 2028年4月から義務化 | すでに毎年1回の実施義務あり |
| 労基署への報告 | 選任報告は不要(周知のみ) | 選任報告書・実施状況報告の提出が必要 |
採用が進んで50人が見えてきたら、推進者の後任計画とあわせて衛生管理者の資格取得を早めに進めておくと、切り替えがスムーズです。




よくある質問
安全衛生推進者の選任義務について、検索の多い疑問にお答えします。
- 安全衛生推進者の選任は必須ですか?
-
常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場では、安全衛生推進者(事務中心の業種では衛生推進者)の選任が求められます(労働安全衛生法第12条の2)。任意の役職ではなく、法律上の義務です。
- 安全衛生推進者は誰でもなれますか?
-
誰でもなれるわけではありません。登録機関の養成講習を修了した人が代表例です。大卒後1年以上、高卒後3年以上、または通算5年以上の安全衛生実務の経験でも選任できます。国家試験はなく、講習の受講が最も一般的なルートです。
- 選任したら労働基準監督署への届出は必要ですか?
-
安全衛生推進者の選任について、労働基準監督署への報告や届出は不要です。ただし選任者の氏名の周知は必要です。作業場の見やすい場所への掲示などが求められます(労働安全衛生規則第12条の4)。
- 安全衛生推進者を選任しないと罰則はありますか?
-
選任義務に違反すると、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金の対象となる可能性があります。労災発生時には選任状況が真っ先に確認されるため、金額以上に企業責任への影響が大きい点に注意してください。
- 安全衛生推進者と安全衛生責任者は同じですか?
-
別の制度です。安全衛生推進者は10〜49人の事業場に置く担当者です。一方の安全衛生責任者は、建設現場などの請負体制で連絡調整を担う別制度の役割です。名前は似ていますが、根拠条文も対象も異なります。
- 10人未満の会社でも選任は必要ですか?
-
常時使用する労働者が10人未満の事業場には、安全衛生推進者の選任義務はありません。ただし従業員の安全と健康への配慮義務自体はどの規模でもあるため、担当者を決めておく取り組みには意味があります。
まとめ:14日以内の選任と周知、そして2028年への備えを
安全衛生推進者の選任義務のポイントを振り返ります。
- 対象は常時10〜49人の事業場。事務中心の業種は衛生推進者を選任
- 期限は選任事由の発生から14日以内。労基署への報告は不要で、周知が必須
- 違反は50万円以下の罰金の対象。労災時のリスクはそれ以上
- 2028年4月からは50人未満でもストレスチェックが義務化。推進者が対応の要に
体制づくりは、面倒に見えて実は従業員からの信頼を積み上げる近道です。ストレスチェックの準備まで手が回らないなら、9年連続健康経営優良法人の当社が伴走します。リピート率9割以上のノウハウで担当者の負担を抑え、2028年の義務化に間に合わせましょう。
本記事は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、3〜20,000名規模・100社以上のストレスチェック実施を支援してきたストレスチェックサポートセンター編集部が、厚生労働省など公的資料に基づいて作成しています。
シー・システム株式会社は「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門 ネクストブライト1000)」に認定されています。











