従業員が50人に近づくと、急に「衛生管理者の選任」という言葉が現実味を帯びてきます。専門用語が多く、正直どこから手を付ければいいか分かりにくいですよね。この記事では、選任義務の基準から手続き、罰則までを総務・人事の目線で整理します。
この記事でわかること
- 衛生管理者の選任が義務になる人数と数え方
- 規模別の必要人数・資格・専任要件
- 選任から労働基準監督署への届出までの4ステップ
- 選任しない場合の罰則と、50人以上で同時に発生する義務
結論から先に:衛生管理者の選任は、業種を問わず常時50人以上の労働者を使用する事業場の義務です(労働安全衛生法第12条)。選任は事由発生から14日以内に行い、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ報告することが求められます。
衛生管理者の選任は何人から義務?
衛生管理者の選任は、常時50人以上の労働者を使用する事業場で、業種を問わず義務となります(労働安全衛生法第12条、労働安全衛生法施行令第4条)。
まず言葉の整理から始めましょう。ざっくり言うと、衛生管理者は「職場の健康面の管理役」です。
衛生管理者とは、労働安全衛生法にもとづき、職場の衛生に関する技術的事項を管理する担当者です。健康障害の防止や衛生教育、週1回以上の職場巡視などを担います。
相談者先月、従業員がちょうど50人になりました。今すぐ何かしないといけないのでしょうか?



はい、50人に達した日から14日以内の選任が必要です。ただ、手順さえ分かれば難しくありません。順番に見ていきましょう。
「常時50人」は事業場ごと・雇用形態を問わず数える
人数は会社全体ではなく、本社・支店・工場といった事業場単位で数えます。パートやアルバイトも、継続して雇用していれば人数に含めます。派遣社員は、受け入れている派遣先の人数にも算入される点に注意してください。


50人未満の事業場は「衛生推進者」を選任する
常時10〜49人の事業場に衛生管理者の選任義務はありません。代わりに、衛生推進者(業種によっては安全衛生推進者)の選任が求められます(労働安全衛生法第12条の2)。免許試験は不要で、実務経験や講習で担当できる点が衛生管理者との違いです。
衛生管理者は何人必要?規模別の人数と資格
衛生管理者の必要人数は事業場の労働者数で決まり、50〜200人なら1人以上、200人を超えると2人以上が必要です(労働安全衛生規則第7条)。
まずは自社の事業場規模を下の表に当てはめてみてください。
| 事業場の労働者数 | 必要な衛生管理者数 |
|---|---|
| 50〜200人 | 1人以上 |
| 200人超〜500人 | 2人以上 |
| 500人超〜1,000人 | 3人以上 |
| 1,000人超〜2,000人 | 4人以上 |
| 2,000人超〜3,000人 | 5人以上 |
| 3,000人超 | 6人以上 |
業種によって必要な免許が異なる
製造業・建設業・運送業・農林畜水産業など現場系の業種では、第一種衛生管理者免許(または医師、労働衛生コンサルタントなど)が必要です。一方、情報通信業や金融業、小売業などの事務系業種は、第二種衛生管理者免許でも選任できます。
資格を持つ従業員が社内にいない場合は、これから受験してもらうか、有資格者の採用が必要になります。免許取得までの期間も考えて、50人到達の前から候補者を決めておくと慌てません。
専属・専任・衛生工学衛生管理者の要件
衛生管理者は原則としてその事業場に専属の人(その事業場だけに勤務する人)から選びます。多くの会社では総務や人事との兼務で問題ありません。
専任(衛生管理の業務だけを行う人)が必要になるのは、常時1,000人を超える事業場などの大規模な場合です。常時500人を超え、有害業務に30人以上が従事する事業場もあります。この場合は専任のほか、衛生工学衛生管理者免許を持つ人の選任も求められます。中小企業で該当するケースは多くありません。
選任から届出までの4ステップ【14日以内】
衛生管理者は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任することが求められます(労働安全衛生規則第7条)。選任後は、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ報告します。
実務の流れは次の4ステップです。
社内に衛生管理者免許の保有者がいるか確認します。いなければ受験計画を立てるか、有資格者の採用を検討してください。業種に合う免許区分(第一種か第二種か)の確認も忘れずに。
常時50人以上となった日から14日以内に、社内で衛生管理者を選任します。辞令や社内通知で選任日を記録に残しておくと、後の報告や監督署対応がスムーズです。
「衛生管理者選任報告」の様式に記入し、免許証の写しを添えて提出します。提出先は、所轄の労働基準監督署。様式は厚生労働省のサイトからダウンロードでき、電子申請にも対応しています。
選任後は、少なくとも週1回の作業場巡視が求められます(労働安全衛生規則第11条)。健康診断の実施管理や衛生教育も、衛生管理者の担当業務です。
50人到達のタイミングでは、ストレスチェックなどの準備も同時に走ります。体制づくり全体で迷ったら、抱え込まずに私たちへ相談してください。
衛生管理者を選任しないとどうなる?
衛生管理者の選任義務に違反すると、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金の対象になり得ます。
罰金だけの話ではありません。労働基準監督署の調査では選任状況が確認されやすく、未選任だと是正勧告につながります。従業員の健康トラブルが起きた際に、安全配慮義務を果たしていたかを問われる場面でも不利に働きかねません。
「名前だけ」の選任にも注意が必要です。選任していても週1回の巡視などの職務が実態として行われていなければ、体制が機能しているとは言えません。
なお、同じ50人基準で義務になるストレスチェックにも、未実施時のリスクがあります。詳しくはストレスチェックを実施しない場合の罰則の記事で解説しています。
50人以上の会社は衛生管理者だけでは終わらない
常時50人以上の事業場では、衛生管理者のほかに産業医・衛生委員会・ストレスチェックも義務になります。
私はこれまで100社以上のストレスチェック導入を支援してきました。その中で最も多いのが「50人を超えた瞬間、何から手を付けるべきか分からない」という総務担当者の声です。義務は一つずつ来るのではなく、まとめて来ます。
| 50人以上で発生する主な義務 | 根拠・ポイント |
|---|---|
| 衛生管理者の選任 | 労働安全衛生法第12条・14日以内 |
| 産業医の選任 | 労働安全衛生法第13条・14日以内 |
| 衛生委員会の設置 | 毎月1回以上の開催 |
| ストレスチェックの実施 | 労働安全衛生法第66条の10・年1回 |
| 定期健康診断結果報告 | 労働基準監督署へ提出 |


ストレスチェックは範囲が広がる方向にあります。厚生労働省の公表では、令和10年(2028年)4月1日から50人未満の事業場も実施が義務になります。50人前後の会社にとって、体制整備はもう待ったなしの状況です。



衛生管理者の選任だけで手一杯です。ストレスチェックまで自社でやるのは正直きついです…。



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衛生管理者の選任義務に関するよくある質問
検索でよく見られる疑問をまとめました。気になる項目から確認してください。
- 衛生管理者は何人から必要ですか?
-
常時50人以上の労働者を使用する事業場で、1人以上の選任が必要です。人数は会社全体ではなく事業場単位で数え、継続雇用しているパートやアルバイトも含めます。業種による例外はありません。
- 衛生管理者を選任しないのは義務違反ですか?
-
常時50人以上の事業場で選任していない状態は、労働安全衛生法第12条への違反となる可能性があります。同法第120条により50万円以下の罰金の対象になり得るほか、労働基準監督署の調査でも指摘されやすい項目です。
- 衛生管理者には誰でもなれますか?
-
誰でもなれるわけではありません。第一種・第二種衛生管理者免許のほか、医師や労働衛生コンサルタントなどの資格保有者から選任します。製造業や建設業など有害業務のある業種では、第一種以上の免許が必要です。
- 衛生管理者の選任届はいつまでに提出すればいいですか?
-
選任報告の提出期限は「遅滞なく」とされ、明確な日数の定めはありません。ただし選任自体の期限は事由発生から14日以内です。選任が済み次第、所轄の労働基準監督署へ速やかに提出してください。
- 衛生管理者は専任でなければなりませんか?
-
多くの事業場では総務や人事との兼任で問題ありません。専任が必要なのは、常時1,000人超の事業場などに限られます。常時500人超で有害業務に30人以上が従事する場合も対象です。中小企業で該当する例は少数です。
- 従業員が50人未満でも衛生管理者は必要ですか?
-
50人未満の事業場に衛生管理者の選任義務はありません。ただし常時10〜49人の事業場では、衛生推進者(業種により安全衛生推進者)の選任が必要です。また令和10年4月からは、50人未満でもストレスチェックが義務になります。
まとめ:衛生管理者の選任は「50人」が合図です
衛生管理者の選任義務は、常時50人以上の労働者を使用する事業場に業種を問わず発生します。合図は、従業員50人。選任は14日以内、報告は遅滞なく行うことが求められます。
詳しい制度情報は、厚生労働省のストレスチェック制度ページやe-Gov法令検索の労働安全衛生法で確認できます。メンタルヘルス対策全般は厚生労働省「こころの耳」も役立ちます。
衛生管理者の選任やストレスチェックの体制づくりは、面倒に見えて、実は段取りが9割です。手続きに追われる時間を減らして、担当者の方が本来の仕事に集中できる状態を一緒につくれたら嬉しいです。資料だけでも、まず気軽に取り寄せてみてください。
本記事は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、3〜20,000名規模・100社以上のストレスチェック実施を支援してきたストレスチェックサポートセンター編集部が、厚生労働省など公的資料に基づいて作成しています。
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