メンタル不調で休職した社員が出ると、「復職までの流れをどう決めればいいのか」と頭を抱える担当者は少なくありません。毎回その場で対応していると、判断がぶれて現場も本人も混乱します。この記事では、厚生労働省の手引きにそった職場復帰支援プログラムの作り方を、総務・人事担当者の目線でやさしく整理します。
この記事でわかること
- 職場復帰支援プログラムとプランの違い
- 厚生労働省の5ステップにそったプログラムの作り方
- 作成前にそろえておく体制とひな形の使い方
- 作成でつまずきやすい注意点と、その防ぎ方
結論から先に:職場復帰支援プログラムは、厚生労働省の手引きが示す5つのステップを土台に、自社の流れとルールを社内規程として明文化すれば作れます。個人ごとの復職計画である「職場復帰支援プラン」とは別物で、先に会社全体の共通ルールを整えるのが近道です。

職場復帰支援プログラムとは?プランとの違い
職場復帰支援プログラムとは、休職から復職までの流れや手順を、あらかじめ会社のルールとして定めた社内の仕組みです。
まず整理したいのが、よく似た2つの言葉の違いです。「プログラム」は会社全体の共通ルール。「プラン」は、休職した一人ひとりに合わせて作る個別の復帰計画のことです。ここを混同すると、作成の順番を間違えます。
先に土台となるプログラムを整え、そのルールにそって個別のプランを立てる。これが正しい順番です。まずは会社の共通ルールづくりから始めてください。
職場復帰支援プログラム=会社全体の復職ルール(一度作れば全員に適用)。職場復帰支援プラン=休職者ごとに作る個別の復帰スケジュール(人ごとに毎回作成)。
相談者いままで復職のたびに、その場で相談して決めていました。それだとダメなんでしょうか…。



その都度対応でも復職はできます。ただ、判断が担当者ごとにぶれてしまいがちです。共通ルールがあると、本人も上司も安心して進められますよ。
なぜ職場復帰支援プログラムが必要なのか
職場復帰支援プログラムがあると、復職の判断基準と手順が全社で統一され、再発や早期の再休職を防ぎやすくなります。
心の不調は、体の病気と違って回復の度合いが見えにくいもの。無理に早く戻せば再発し、慎重すぎれば復帰が遠のきます。共通のルールがないと、この難しい判断を担当者が毎回一人で背負うことになります。
私がご相談を受けた企業でも、明確な手順がないまま復職させ、数週間で再び休職に至った例がありました。あらかじめ流れを決めておけば、こうした事態は減らせます。
制度面の背景も押さえておきましょう。ストレスチェックは2015年12月から、労働安全衛生法第66条の10にもとづき義務化されています。不調を早く見つけ、働きやすい職場につなげる仕組みです。
2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、令和10年(2028年)4月1日から従業員50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます。復職支援の体制づくりも、あわせて進めておくと安心です。
不調の入り口を早く拾う仕組みと、復職を支える仕組みは両輪です。ストレスチェックの準備状況もあわせて確認してください。


職場復帰支援プログラムの作り方【厚労省の5ステップ】
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、職場復帰を5つのステップで進めることが示されています。プログラムは、この5ステップごとに自社の対応を定めれば完成します。
各ステップで「だれが」「何を」「どの書類で」行うかを決めるのが、作り方の中心です。手引きの流れをなぞりながら、自社の実情に落とし込んでください。
診断書の提出先や、休業中の連絡方法、傷病手当金の案内などをルール化します。「会社から連絡してよい頻度」を決めておくと、本人も安心して療養できます。
復職の意思が固まったら、主治医に「復帰可能」の診断書をもらいます。会社が求める働き方を伝えるための情報提供書のひな形を、あらかじめ用意しておいてください。
産業医や人事、上司が情報を持ち寄り、復帰の可否を判断します。ここで個別の職場復帰支援プランを作成。勤務時間や業務量を段階的に戻す計画を、本人と一緒に決めます。
プランをもとに、事業者が正式に復職を決定します。就業上の配慮の内容を文書で本人へ伝えてください。口頭だけの約束は、後の行き違いのもとになります。
復帰はゴールではなく再スタートです。定期的な面談で体調と業務量を確認し、必要に応じてプランを見直します。フォロー期間の目安も、プログラムに明記しておきましょう。


復帰後の面談の進め方は、次の記事でも具体的に解説しています。あわせて参考にしてください。


プログラム作成前に準備すべきことは?
作成前にそろえたいのは、関係者の役割分担と、各ステップで使う書類のひな形です。この2つがあると、作成作業は一気に進みます。
職場復帰支援は、担当者一人では進みません。人事・上司・産業医・産業保健スタッフが、それぞれ何を担うかを先に決めてください。だれが本人の窓口になるかを明確にすると、連絡の行き違いが減ります。
ひな形は、ゼロから作る必要はありません。厚生労働省の手引きや、働く人向けのポータルサイトに、様式例や解説が公開されています。まずは公的な資料をたたき台にしてください。
入手先は、厚生労働省のストレスチェック制度のページと、働く人のメンタルヘルス・ポータルこころの耳が確実です。無料の一次情報から始めれば、初年度の負担を抑えられます。
- 関係者の役割分担(人事・上司・産業医・保健スタッフ)
- 主治医への情報提供書と、復帰判定の記録様式
- 職場復帰支援プランと、フォローアップ面談の記録様式
作成でよくある3つの注意点
作成でつまずきやすいのは、プランとの混同・個人情報の扱い・主治医と産業医の判断の違い、この3点です。
主治医の「復帰可能」は、日常生活が送れる水準の判断です。実際の業務に耐えられるかは、産業医が会社の情報をもとに別途判断します。両者の役割の違いを、プログラムに書き分けてください。
2つ目は、会社全体のルールと個別プランを分けて書くことです。プログラムに個人の事情を書き込むと、毎回作り直しが必要になります。共通部分と個別部分を切り分けてください。
3つ目は、健康情報の取り扱いです。診断書や面談記録は、機微な個人情報にあたります。だれがどこまで閲覧できるかを、プログラムの中で明確に定めることが求められます。私が支援した現場でも、閲覧範囲を先に決めた企業はトラブルが起きにくい傾向でした。



うちには産業医がいないのですが、それでもプログラムは作れますか?



作れます。地域の産業保健センターや外部の産業医サービスを活用する前提で、ルールを組み立てれば大丈夫です。だれに相談するかまで書いておくと、いざというとき迷いません。
自社作成と専門家サポート、どちらを選ぶ?
産業保健の体制が整っていない場合は、専門家のサポートを受けたほうが、担当者の負担を抑えながら実効性のあるプログラムを作れます。
公的なひな形を使えば費用は抑えられます。ただし、役割分担や判断基準の設計、産業医との連携づくりを社内で担う必要があります。産業保健スタッフがいる企業に向いています。
私たちストレスチェックサポートセンターは、ストレスチェックの実施からメンタルヘルス体制づくりまでを支援しています。9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、数名〜6,000名規模の企業や自治体を100社以上支援してきました。個人情報はプライバシーマークを取得した自社サーバーで管理しています。
最短3日で受検をスタートできる体制があり、リピート率は9割以上です。翌年も継続してお任せいただく企業がほとんどで、Web受検・紙受検・併用のいずれにも対応しています。
まとめ:復職を支える仕組みを先に整える
職場復帰支援プログラムは、厚生労働省の5ステップを土台に、自社の流れとルールを社内規程として明文化すれば作れます。会社全体の共通ルールと、個別の復帰プランを分けて考えることが出発点です。
大切なのは、休職者が出てから慌てない備え。あらかじめ手順と役割、書類のひな形を用意しておけば、担当者も本人も落ち着いて復帰へ進めます。復帰後のフォローまで含めて設計してください。
「何から手をつければいいか分からない」という段階でも大丈夫です。まずは関係者の役割分担から。迷ったら専門のスタッフに気軽に相談してください。面倒な仕組みづくりを、一緒に片づけます。
- プログラム(共通ルール)とプラン(個別計画)を分ける
- 厚労省の5ステップごとに自社の対応を定める
- 復帰後のフォローアップ期間まで明記する
よくある質問
職場復帰支援プログラムの作成について、総務・人事担当者からよく寄せられる質問をまとめました。
- 職場復帰支援プログラムとプランは何が違いますか?
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プログラムは会社全体で共通する復職ルールで、一度作れば全員に適用されます。プランは休職した一人ひとりに合わせて作る個別の復帰計画です。先にプログラムを整え、そのルールにそって個別のプランを作成します。
- 職場復帰支援プログラムの作成は義務ですか?
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プログラムの作成自体を直接義務づける規定はありませんが、厚生労働省は手引きで策定を強く推奨しています。安全配慮義務の観点からも、復職の手順を定めておくことが望まれます。中小企業でも早めの整備が求められます。
- ひな形はどこで入手できますか?
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厚生労働省のストレスチェック制度のページや、働く人のメンタルヘルス・ポータル「こころの耳」に、手引きや様式例が公開されています。これらの公的資料をたたき台にして、自社の実情に合わせて調整するのが効率的です。
- 産業医がいない中小企業でも作れますか?
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作れます。地域産業保健センターや外部の産業医サービスを活用する前提で、ルールを組み立てれば問題ありません。だれに相談し、だれが判断するかをプログラムに明記しておくと、いざというとき迷わずに対応できます。
- 主治医が復帰可能と言えば、すぐ復職させてよいですか?
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主治医の判断は日常生活が送れる水準を示すもので、そのまま業務に耐えられるとは限りません。会社の業務内容をふまえ、産業医が就業の可否や配慮の必要性を別途判断します。両者の意見をそろえてから復職を決定してください。
- 復帰後のフォローはどのくらい続ければよいですか?
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明確な決まりはありませんが、復帰直後は再発のリスクが高いため、数か月は定期的な面談を続けるのが一般的です。体調と業務量を確認しながら、必要に応じてプランを見直します。フォロー期間の目安をプログラムに書いておくと運用しやすくなります。
制度の根拠は、e-Gov法令検索の労働安全衛生法で確認できます。関連するメンタルヘルス対応は、次の記事もあわせてご覧ください。
本記事は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、3〜20,000名規模・100社以上のストレスチェック実施を支援してきたストレスチェックサポートセンター編集部が、厚生労働省など公的資料に基づいて作成しています。
シー・システム株式会社は「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門 ネクストブライト1000)」に認定されています。











