土日の内見案内に契約書類、夜まで鳴りやまない問い合わせ。不動産業の現場は、外から見える以上に気の抜けない仕事ですよね。この記事では、店舗が分散しがちな不動産会社でのストレスチェックの進め方を解説します。
この記事でわかること
- 不動産会社の実施義務は「店舗(事業場)ごと」に判断されること
- 営業ノルマやクレーム対応など、不動産業特有のストレス要因
- 繁忙期を避けて全店一括で実施する段取りと外部委託の使いどころ
結論から先に:不動産業のストレスチェックは、労働安全衛生法第66条の10に基づく年1回の検査です。常時50人以上の事業場(本社・店舗)はすでに実施義務の対象です。50人未満の店舗も、2028年(令和10年)4月1日から義務になります。
不動産業にストレスチェックの義務はある?判断は店舗ごと
不動産業のストレスチェックの義務は、法人全体ではなく事業場(本社・店舗)単位の人数で判断するのが基本です。
ストレスチェックとは、労働安全衛生法第66条の10に基づき、働く人の心理的な負担を質問票で年1回調べる検査です。2015年から、常時50人以上の事業場を持つ事業者に実施が義務付けられています。
不動産業でいえば、本社・売買仲介店・賃貸仲介店・管理事務所がそれぞれ1つの事業場にあたります。本社が80人でも、駅前の店舗が6人なら、義務の判断は別々。この「店舗ごとに数える」感覚が最初のつまずきどころです。
2028年4月から50人未満の店舗も義務化
根拠は2025年5月に公布された改正労働安全衛生法です。厚生労働省は、2028年(令和10年)4月1日から50人未満の事業場も義務になると公表しています。数人規模の仲介店舗を多く抱える不動産会社ほど、この改正の影響は大きくなります。
制度の最新情報は厚生労働省のストレスチェック制度ページで確認できます。条文を確認したい方はe-Gov法令検索の労働安全衛生法を参照してください。
不動産業で働く人はなぜ高ストレスになりやすい?
不動産業の従業員は、営業目標・顧客対応・不規則な休みという3つの負荷が重なりやすい働き方をしています。

売買仲介では成約数や歩合が収入に直結し、数字のプレッシャーが続きます。賃貸仲介は1〜3月の繁忙期に業務が集中し、休憩も取りづらい状態に。管理部門には入居者からのクレームや設備トラブルの連絡が、時間を選ばず入ってきます。
しかも休みは水曜など平日が中心で、家族や友人と予定が合いません。疲れを口に出せないまま、成績表だけが独り歩きする職場も少なくないようです。
実際、厚生労働省「令和7年度過労死等の労災補償状況」によると、仕事の強いストレスによる精神障害の労災請求件数は4,958件で、前年度より1,178件増えました。
業種を問わず増加が続いており、不動産業も例外ではありません。セルフケアの情報は、厚生労働省のポータルサイトこころの耳にまとまっています。
相談者うちの営業は「数字がすべて」という空気です。ストレスチェックをやっても、正直に答えてくれるでしょうか?



個人の結果は上司にも会社にも渡らない仕組みです。その点を受検案内で最初に伝えると、営業職の回答は驚くほど素直になりますよ。
私が不動産会社の総務担当の方と話して印象に残っているのは、「不調のサインは店長の勘頼みだった」という言葉です。個人プレーが基本の営業組織では、数字が落ちるまで誰も気づけません。
だからこそ、年1回の定点観測に意味があります。高ストレスと判定された後の対応は高ストレス者対応の解説記事にまとめています。
不動産会社でストレスチェックを実施する流れ【5ステップ】
不動産会社のストレスチェックは、体制づくりから集団分析まで5つのステップで進めます。
ポイントは実施時期です。引越しシーズンの1〜3月は避け、閑散期に受検期間を設定しましょう。
実施者となる医師・保健師などを確保し、社内の実施規程を整えます。産業医のいない小規模な店舗網でも、外部機関の実施者を活用できます。
店舗ごとの対象者名簿を作り、目的と結果の取り扱いを全員に案内します。事務スタッフやパートも、常時使用していれば対象に含めるのが基本です。
外回りの多い営業職はスマホでのWeb受検、店頭スタッフは紙の調査票と、働き方に合わせて選びます。併用すれば受検漏れを減らせます。
結果は実施者から本人へ直接通知します。高ストレスと判定された人から申出があれば、医師による面接指導の実施が求められます。
店舗別・職種別の傾向を分析し、目標設定や人員配置の見直しにつなげます。50人以上の事業場は労働基準監督署への報告が求められます。
なお集団分析の実施方法については、2026年6月30日に労働安全衛生規則の改正が行われました。制度は今も動いています。店舗別の集計をどう活かすかは集団分析の解説記事を参考にしてください。
店舗が分散する不動産会社ならではの3つの注意点
不動産会社のストレスチェックでは、少人数店舗の分散・営業職の受検率・結果への不安の3点がつまずきやすいポイントです。


注意点①:店舗ごとに任せると事務局が回らない
数人規模の店舗が点在する不動産会社で、配布・回収・督促を店長任せにすると、進捗はばらばらになります。店長は接客と数字で手一杯。事務まで抱えれば、未実施の店舗が必ず出ます。
現実的なのは、全店舗を同じ期間で一括実施し、本社の事務局が進捗を一元管理する設計です。2028年4月の義務化で対象店舗はさらに増えます。いまのうちに全店一括の体制へ移しておくと、後の負担が軽くなります。
注意点②:外回りの営業職は受検が後回しになる
内見案内や現地調査で外に出ずっぱりの営業職は、机に向かう時間がほとんどありません。紙の調査票だけの運用では、回収率が伸びずに期間延長を繰り返しがちです。
対処はシンプルで、スマホによるWeb受検の導入です。移動の合間に5分あれば回答できます。仕組みの詳細はWeb受検の解説記事で、受検率を高める声かけの工夫は受検率向上の解説記事で紹介しています。
注意点③:「結果が査定に響く」という不安への手当て
歩合や成績と隣り合わせの職場では、「正直に答えたら評価が下がるのでは」という不安が受検率を下げます。



「高ストレス判定が出たら、担当エリアを外されるのでは」と営業から聞かれました。どう答えればいいでしょうか?



本人の同意がない限り、会社側は個人の結果を見られません。結果を理由にした不利益な取り扱いも禁止されています。この2点を受検案内に明記するだけで、現場の空気は変わりますよ。
個人結果は実施者から本人へ直接届き、会社が受け取れるのは個人を特定できない集団分析だけです。この仕組みを案内文で図解してください。
外部委託すると何が楽になる?不動産会社の委託先選び
外部委託すると、実施者の確保から調査票の配布・回収、結果通知、集団分析までを一括で任せられます。
事務局に残る仕事は、名簿の準備と社内への声かけくらいです。自社で行う場合との違いを整理しました。
| 作業 | 自社で実施 | 外部委託 |
|---|---|---|
| 実施者の確保 | 医師・保健師を自分で探す | 委託先の実施者が担当 |
| 調査票の配布・回収 | 店舗ごとに店長が管理 | 紙・Webとも委託先が管理 |
| 結果の集計・通知 | 事務局+実施者で対応 | 委託先が本人へ直接通知 |
| 個人情報の管理 | 社内で保管体制が必要 | 委託先が外部で管理 |
| 全店舗のとりまとめ | 店舗ごとに別々の作業 | 全店舗を一括で実施 |
委託先を選ぶ基準は、店舗網ごと預けられる体制があるかどうかです。当センターは500〜20,000名規模の自治体・民間企業を含む100社以上の導入実績があり、紙・Web・併用のすべてに対応しています。全店一括でも最短3日で受検を始められます。
個人情報の面では、プライバシーマークを継続取得し、結果データを自社サーバーで管理しています。翌年も利用されるお客様は9割以上です。運営会社は9年連続で経済産業省の「健康経営優良法人」に認定されています。
私の実感では、繁忙期前に段取りを固めた会社ほど、受検率も改善の動きも順調です。委託先を比べる視点は委託先の選び方の解説記事にまとめました。
不動産業のストレスチェックに関するよくある質問
不動産会社の総務・人事担当の方からよくいただく質問をまとめました。
- 不動産会社でもストレスチェックの実施は義務ですか?
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常時50人以上の事業場(本社・店舗)を持つ不動産会社は、業種を問わず実施義務があります。義務の判断は法人全体ではなく事業場単位が基本です。改正労働安全衛生法により、2028年(令和10年)4月1日からは50人未満の店舗も義務になります。
- ストレスチェックは意味がないって本当ですか?
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「結果を誰も見ていない」運用にすると形骸化するのは事実です。一方で、秘密が守られる体制を周知して受検率を上げ、集団分析を店舗運営の見直しに使えば、不調の早期発見と離職予防に働きます。効果は制度ではなく運用で決まります。
- 賃貸店舗のパート・アルバイトも対象になりますか?
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契約期間が1年以上で、週の労働時間が正社員の4分の3以上あるパート・契約社員は対象に含めるのが基本です。短時間のアルバイトは義務の対象外ですが、希望者に受けてもらう運用は可能です。名簿づくりの段階で雇用形態ごとに整理しておきましょう。
- 外回りの多い営業職の受検率を上げる方法はありますか?
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スマホで回答できるWeb受検の導入が最も効果的です。移動の合間に5分程度で回答できます。あわせて「個人の結果は会社に渡らない」ことを受検案内に明記すると、様子見していた営業職も動きやすくなります。
- ストレスチェックをしてくれる業者はどこで探せますか?
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健診機関・EAP会社・ストレスチェック専門機関などが外部委託を受けています。選ぶ際は、医師・保健師など実施者の体制、プライバシーマーク等の個人情報管理、紙とWebの両対応の3点を確認してください。店舗が分散する不動産会社は、全店一括で任せられるかどうかも判断基準になります。
- 不動産会社の実施時期はいつがよいですか?
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引越しシーズンの1〜3月と、その準備が始まる12月は避けるのが無難です。閑散期にあたる6〜10月ごろに受検期間を設けると、営業・事務とも落ち着いて回答できます。年1回の実施が求められるため、毎年同じ時期に固定すると定着しやすくなります。
まとめ:全店一括の段取りが、不動産業の実施成功のカギ
不動産業のストレスチェックは、常時50人以上の事業場ではすでに義務です。50人未満の店舗も2028年(令和10年)4月1日から義務になります。厚生労働省「令和5年度ストレスチェック実施状況」によると、対象事業場の実施率は83.6%です。実施は業界を問わず当たり前になりつつあります。
- 義務の判断は本社・店舗ごと。2028年4月から50人未満の店舗も義務化
- 営業ノルマ・クレーム・不規則な休みが重なる業界だからこそ定点観測を
- 繁忙期を避けた全店一括実施と、スマホWeb受検の併用が受検率のカギ
お客様の住まい探しを支える仕事だからこそ、働く人自身の心の健康が土台になります。店舗数も雇用形態も、会社ごとに事情はさまざまです。全店一括の段取りに迷ったら、店舗数と人数構成を聞かせてください。一緒に進め方を整えます。
本記事は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、3〜20,000名規模・100社以上のストレスチェック実施を支援してきたストレスチェックサポートセンター編集部が、厚生労働省など公的資料に基づいて作成しています。
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