ストレスチェックを自社で実施する方法

目次

はじめに なぜ今「自社実施」が注目されるのか

労働安全衛生法の改正により、常時50人以上の労働者を使用する事業場においてストレスチェック制度の実施が義務化されてから約10年が経過しました。さらに、2025年の法改正により、これまで努力義務であった50人未満の小規模事業場においても2028年までに義務化される見通しとなっています。

多くの企業が外部機関へ委託していますが、「コスト削減」や「社内での迅速な職場環境改善」を目的に、自社で全てのプロセスを完結させることはできないかと考えられた方へ向けて、本記事では、自社でストレスチェックを安全かつ確実に実施するための実務手順を解説します。

1.自社実施の法的根拠と必須要件


ストレスチェック制度は、単なるアンケートではありません。労働安全衛生法第66条の10に基づき、厳格なルールが定められています。

実施義務の対象

現在、常時50人以上の労働者がいる事業場は年1回の実施が義務です。対象者には、正社員だけでなく、一定の条件を満たすパート・アルバイトも含まれます。2028年度以降対象となる50名未満の事業場においても同様です。

自社実施で守るべき「3つの柱」

自社で実施する場合、特に以下の法的要件に注意が必要です。

  1. 情報の不利益取扱いの禁止 結果を理由に解雇や配置転換など、労働者に不利益な扱いをしてはなりません。
  2. 守秘義務 ストレスチェック結果(個人結果、面接指導結果)の取り扱いには厳格な守秘義務が伴います。
  3. 実施体制 誰が「実施者」となり、誰が「事務従事者」となるかを事前に決める必要があります。

2.実務体制の構築:誰が何を行うべきか

自社実施において最も重要なのが実施体制の役割分担です。人事担当者が直接回答データを見てしまうような場面は避けなければなりません。

① 実施者(医師・保健師等)

ストレスチェックの企画や結果の判定を行う主責任者です。実施者を担えるのは医師、保健師、または一定の研修を修了した看護師・精神保健福祉士・歯科医師・公認心理師と定められています。外部に委託しない場合は自社の産業医に依頼するのが一般的です。

(e-GOV法令検索 労働安全衛生法https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057

② 実施事務従事者(実務の補助)

名簿から対象者リスト作成、調査票の発行、配布や回収、記入されたデータの入力など、多岐にわたって事務作業を行います。
【重要】 人事権を持つ者(社長、人事部長、部長級など)は、実施事務従事者になることができません。一般社員や、人事権を持たない総務担当者が適任です。


3.衛生委員会での調査審議と社内規程の策定

実施前に必ず、衛生委員会または安全衛生委員会で以下の事項を審議し、社内規定を作成しなければなりません。

  • ストレスチェックの実施目的
  • 実施体制(誰が実施者になるか)
  • 実施時期と使用する調査票
  • 高ストレス者の選定基準
  • 面接指導の申し出方法
  • 結果の保存方法(5年間の保存義務)

ストレスチェック制度導入には衛生委員会による調査審議が法的に必須です。議事録を残し、全従業員に周知しましょう。


4.【実践】自社でストレスチェックを運用する手順

外部委託せず、自社で実施する際の具体的な手順です。

使用ツールの選定

厚労省が提供している「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を活用すれば、無料で実施可能です。
(厚生労働省 ストレスチェック実施プログラムダウンロードサイトhttps://stresscheck.mhlw.go.jp/
(厚生労働省 ストレスチェック実施プログラムマニュアルhttps://stresscheck.mhlw.go.jp/download/beginnermanual.pdf

環境設定

受検方法、項目数、再受験の可否など環境設定をします。

職場・受検者の登録

部署など職場名、受検対象者のリストをシステムに登録します。CSV形式の名簿をインポートすることができます。

調査票の配布・Web受検案内

従業員へ調査票を印刷して配布、またはWeb受検の案内を周知します。

受検と回収

従業員が回答します。自社実施の場合、回収した調査票は「実施者」または「実施事務従事者」以外が中身を見てはいけません。紙の場合は封筒に封印させる、Webの場合はアクセス権限を限定するなどの対策が必要です。

結果の判定と通知

従業員の回答内容を集計して高ストレス者の選定を行い、本人に直接結果を通知します。

ポイント:「実施者」または「実施事務従事者」以外は、本人の同意がない限り、個人のストレスチェック結果を知ることはできません。

面接指導の実施

高ストレス者から申し出があった場合、医師による面接指導を設定します。これは事業者の義務です。

集団分析と職場環境改善

個人の結果を部署ごとに集計し、集団分析を行います。これにより、どの部署に負荷がかかっているかを把握し、職場環境改善に繋げます。

労基署への報告

実施後、速やかに「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を所轄の労働基準監督署に提出します。現在は電子申請による提出も推奨されています。50名未満の事業所に関しては、労基署への報告義務はありません。


自社実施でよくある課題と解決策

従業員が「本音」で答えない

回答内容が会社にバレるのではないか、という不安から、回答を控えめにするケースが自社実施の場合は特にあります。
実施事務従事者の独立性を強調し、実施前に明確に説明することが重要です。

産業医との連携がスムーズにいかない

産業医が多忙な場合、面接指導の調整が難航することがあります。 実施計画を早めに産業医と共有しておきましょう。

データの保存と管理

健康診断結果と同様、5年間の保存義務があります。紙の場合は鍵付きの書庫、デジタルの場合は暗号化されたサーバーを用意して、アクセス権限を厳格に管理します。



まとめ 自社実施は「組織の健康」を自分たちで守る第一歩

ストレスチェックを自社で実施することは、単なるコスト削減手段ではありません。自社の強みと課題を、外部の手を借りずに直接把握し、スピーディーに職場環境改善へと繋げる強力な武器になります。

「法律を守ること」をゴールにするのではなく、従業員が安心して働ける環境をどう作るかを念頭に置き、運用を開始してください。

外部委託するのも有効な選択肢

小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルでは、従業員のプライバシー保護の観点から外部委託を推奨しています。また、人的リソースの確保、従業員の回答控え、紙実施の場合印刷、配布のコスト、結果保存に用いるサーバーのコストなどの問題は、外部委託することですべて解決できます。
ストレスチェックサポートセンターではストレスチェックに関する一切の代行を承っております。
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