「出勤はしているのに、どうも調子が上がらない」。そんな社員の不調、数字に表れないだけに対応が難しいですよね。
この記事では、健康経営の分野で注目されるプレゼンティーズムの意味を整理します。専門用語が苦手な総務・人事の方でも読めるよう、身近な例で解説していきます。
この記事でわかること
- プレゼンティーズムの意味とアブセンティーズムとの違い
- 健康関連コストの約8割を占めるとされる損失の中身
- 代表的な測定方法と、中小企業でもできる改善の進め方
結論から先に:プレゼンティーズムとは、出勤しているのに健康上の問題で本来のパフォーマンスを発揮できない状態のことです。経済産業省の資料では、東京大学の調査(2016年)として、企業の健康関連総コストの77.9%をプレゼンティーズムが占めると紹介されています。
プレゼンティーズムとは?アブセンティーズムとの違い
プレゼンティーズムとは、WHO(世界保健機関)が提唱した、出勤していながら健康問題によって労働遂行能力が低下している状態を指す指標です。
プレゼンティーズム=出勤しているが、心身の不調で本来の力を発揮できていない状態。
アブセンティーズム=健康問題が原因で欠勤・病欠している状態。
2つの違いを表で整理
両者は「出勤しているかどうか」で分かれます。まずは違いを一覧で押さえてください。
| プレゼンティーズム | アブセンティーズム | |
|---|---|---|
| 状態 | 出勤しているが不調で生産性が低下 | 欠勤・病欠で職場に不在 |
| 見えやすさ | 見えにくい(本人も自覚しにくい) | 勤怠記録で把握しやすい |
| 典型例 | 頭痛・花粉症・不眠・メンタル不調を抱えたまま勤務 | 体調不良による休職・病欠 |
| コストへの影響 | 健康関連総コストの77.9%(東京大学2016年調査) | 同調査で4.4% |
欠勤は勤怠データですぐ分かります。一方でプレゼンティーズムは、本人が「休むほどではない」と我慢しているため、会社からはほとんど見えません。ここが厄介な点です。
相談者うちは病欠が少ないので、健康面の損失はあまりないと思っていたのですが…。



実は損失の大半は、出勤している人の中に隠れています。病欠の少なさと健康リスクの低さは、別物として考えてみてください。
プレゼンティーズムによる損失はどれくらい?
経済産業省が健康経営の推進資料で紹介した東京大学の調査(2016年)によると、企業の健康関連総コストのうち77.9%をプレゼンティーズムが占めています。
医療費やアブセンティーズム(同調査で4.4%)よりも、はるかに大きな割合です。会社が払う健康コストの主役は、実は「出勤している人の不調」。数字で見ると印象が変わりますよね(参考: 経済産業省 健康経営)。


職場にある「隠れた損失」の具体例
プレゼンティーズムの原因は、特別な病気とは限りません。むしろ、ありふれた不調が積み重なっています。
- 花粉症や頭痛・肩こりを我慢しながらのデスクワーク
- 睡眠不足で午後の集中力が続かない
- 強いストレスや不安で、ミスや手戻りが増える
私たちが導入企業の担当者と話していると、「言われてみれば、あの残業の多い部署は皆どこか疲れていた」という気づきの声をよく聞きます。数字にする前から、現場は薄々感じているものです。
プレゼンティーズムを引き起こす主な原因
プレゼンティーズムの主な原因は、メンタルヘルス不調・睡眠問題・慢性的な身体症状・休みにくい職場風土の4つに整理できます。
とくにメンタルヘルス不調は、集中力・判断力の低下として長期間じわじわ効いてきます。うつ状態のまま出勤を続ければ、本人の回復も遅れ、周囲の負担も増える悪循環に入ります。高ストレス状態のサインと対応は、高ストレス者への対応の解説記事にまとめています。
「休まず出てくるのは偉い」という空気が強い職場ほど、不調の申告が遅れます。無理な出勤を評価する文化は、結果的に損失を拡大させる点に注意してください。
ここまで読んで「うちの会社の状態を一度把握したい」と感じた方は、ストレスチェックの外部委託から始めるのが近道です。迷ったら、まず現状を聞かせてください。
プレゼンティーズムはどう測定する?代表的な方法
プレゼンティーズムの測定には、WHO-HPQや東大1項目版(SPQ)など、本人の自己評価に基づく質問紙が使われます。
いずれも数分で答えられる簡単なものです。経済産業省の健康経営度調査でも、プレゼンティーズムの測定・開示は評価項目のひとつになっています。代表的な方法を比べてみましょう。
| 測定方法 | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|
| WHO-HPQ | 過去4週間の仕事の出来を0〜10点で自己評価 | WHO開発。国際比較が可能 |
| 東大1項目版(SPQ) | 病気やけがのないときの仕事の出来を100%として、過去4週間の自分を何%と評価するか回答 | 1問だけ。回答負担が最も軽い |
| WFun | 労働機能障害の程度を7項目で測定 | 産業医科大学が開発。不調の程度を把握しやすい |
他人との比較ではなく、同じ人の推移を追うのがコツ。運用で迷ったら思い出してください。



測定のためだけに、新しいアンケートを増やすのは正直しんどいです…。



その場合は、毎年実施しているストレスチェックに測定項目を組み合わせる方法があります。調査を増やさずに済むので、担当者の負担はほとんど変わりません。
プレゼンティーズム改善の進め方【4ステップ】
プレゼンティーズム対策は、①実態把握 ②原因分析 ③対策の実行 ④定点観測の4ステップで進めるのが基本です。
いきなり施策から入ると、効果の出ない福利厚生にお金を使いがちです。まず現状の見える化から。順番に見ていきます。
東大1項目版などの簡易な質問で、自社のプレゼンティーズムを測定します。年1回のストレスチェックと同時に行えば、社員の回答負担を増やさずに済みます。
長時間労働の是正、休暇を取りやすい雰囲気づくり、高ストレス者への面接指導の案内など、原因に対応した施策を絞って実行します。全部を一度にやる必要はありません。
同じ質問・同じ時期で毎年測り、数値の推移を確認します。改善が見えれば経営層への報告材料になり、健康経営優良法人の申請にも活かせます。


ストレスチェックを起点にすると始めやすい理由
中小企業がプレゼンティーズム対策を始めるなら、すでに義務として実施しているストレスチェックを起点にするのが最も現実的です。
ストレスチェックは労働安全衛生法第66条の10に基づく制度で、50人以上の事業場に年1回の実施が求められます(参考: e-Gov法令検索 労働安全衛生法)。
厚生労働省によると、2025年5月公布の改正法により、2028年(令和10年)4月1日からは50人未満の事業場にも対象が拡大されます(参考: 厚生労働省 ストレスチェック制度)。
つまりほぼすべての会社が、毎年必ず全社員の心の状態を測る機会を持つことになります。この機会に東大1項目版のような測定を1問加えるだけで、プレゼンティーズムの実態把握まで一気に進みます。新しい調査を立ち上げるより、ずっと低コストです。
当センターは、9年連続で経済産業省の健康経営優良法人に認定されている「当事者」として、この測定と改善のサイクルを自社でも回しています。
実施代行は500〜20,000名規模まで100社以上、リピート率は9割以上。受検率の引き上げ(受検率を上げる方法)から集団分析の報告会まで伴走しています。
私自身、集団分析の報告会で「数値の悪い部署ほど、誰も休んでいなかった」というケースを何度も見てきました。休まないことと健康であることは違う。プレゼンティーズムという言葉は、その違いに気づかせてくれます。委託先の選び方はストレスチェック委託先の選び方で詳しく解説しています。
プレゼンティーズムに関するよくある質問
検索で多く寄せられる疑問をまとめました。気になるところだけ拾い読みしてください。
- プレゼンティーズムとはどういう意味ですか?
-
プレゼンティーズムとは、出勤しているのに健康上の問題で本来のパフォーマンスを発揮できない状態のことです。WHO(世界保健機関)が提唱した指標で、健康経営の分野で広く使われています。
- アブセンティーズムとプレゼンティーズムの違いは何ですか?
-
アブセンティーズムは健康問題による欠勤・病欠、プレゼンティーズムは出勤しながら生産性が落ちている状態を指します。欠勤は勤怠記録で見えますが、プレゼンティーズムは測定しないと把握できません。
- プレゼンティーズムによる損失額はいくらですか?
-
経済産業省の資料で紹介された東京大学の調査(2016年)では、企業の健康関連総コストの77.9%をプレゼンティーズムが占めるとされています。金額は給与水準や測定方法で変わるため、まず自社で測定して規模感をつかむことが出発点になります。
- プレゼンティーズムの測定方法は?
-
WHO-HPQ、東大1項目版(SPQ)、WFunなどの質問紙による自己評価が代表的です。東大1項目版は「病気やけがのないときを100%として、過去4週間の仕事の出来は何%か」を答えるだけなので、中小企業でも導入しやすい方法です。
- プレゼンティーズムが高いとどういう意味ですか?
-
一般に「プレゼンティーズムが高い」は、不調による生産性の損失が大きい状態を指します。ただしWHO-HPQの絶対的プレゼンティーズムのように、値が高いほどパフォーマンスが良いことを示す指標もあるため、どの指標の数値かを確認してください。
- プレゼンティーズムの具体例は?
-
花粉症や頭痛を我慢しながらの勤務、睡眠不足による集中力低下、強いストレスや不安によるミスの増加などが典型例です。特別な病気に限らず、ありふれた不調の積み重ねが会社全体の損失につながります。
まとめ:見えない損失は、測れば減らせる
プレゼンティーズムとは、出勤していながら不調で力を出せない状態のこと。健康関連コストの77.9%を占めるとされる、企業にとって最大の「見えない損失」です。
- 損失の主役は欠勤ではなく、出勤している人の不調
- 東大1項目版なら1問で測定でき、ストレスチェックと同時に実施できる
- 実態把握→原因分析→対策→定点観測の4ステップで改善が回る
毎年のストレスチェックを「義務だから」で終わらせるか、経営の武器に変えるか。ここが分かれ道です。測定の設計から集団分析まで、面倒な部分は私たちが引き受けます。最短3日で受検を始められますので、迷ったら気軽に相談してください。
本記事は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、3〜20,000名規模・100社以上のストレスチェック実施を支援してきたストレスチェックサポートセンター編集部が、厚生労働省など公的資料に基づいて作成しています。
シー・システム株式会社は「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門 ネクストブライト1000)」に認定されています。












