「夜勤の看護師にどう案内すればいいのか」「結果を院内の誰が見るのかと聞かれて答えに詰まった」。医療機関のストレスチェックには、一般企業にはない悩みがつきものですよね。この記事では病院・クリニック特有のつまずきどころと解決策を、担当者目線でお伝えします。
この記事でわかること
- 医療機関に義務があるかどうかの判断基準(事業場単位・50人の数え方)
- 病院・クリニックでストレスチェックが進みにくい3つの壁
- 夜勤・交代制でも受検率を落とさない実施の工夫
- 集団分析を病棟単位の改善につなげる方法と2027年施行の改正点
結論から先に:常時50人以上の労働者を使用する医療機関には、労働安全衛生法第66条の10に基づき年1回のストレスチェック実施義務があります。夜勤・交代制の多い職場では、紙とWebの併用と外部委託の活用が現実的な解決策です。
医療機関にもストレスチェックの義務はある?【制度の基本】
常時50人以上の労働者を使用する医療機関には、年1回のストレスチェックの実施が義務付けられています。根拠となる法律は労働安全衛生法第66条の10です。
ストレスチェックとは、質問票で従業員のストレス状態を年1回調べる法定の検査のことです。ざっくり言うと「心の健康診断」。本人がセルフチェックで自分の状態に気づくための仕組みです。
注意したいのは、義務の判定が法人全体ではなく事業場単位で行われる点です。本院と分院、系列クリニックは別々に人数を数えます。週の労働時間が正社員の4分の3以上あるパートの看護師や医療事務も対象です。(参考: 厚生労働省 ストレスチェック制度/e-Gov 労働安全衛生法)
50人未満のクリニックはいつから義務になる?
厚生労働省によると、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、労働者数50人未満の事業場にも2028年(令和10年)4月1日からストレスチェックが義務化されます。
職員20〜30名のクリニックや訪問看護ステーションも、あと2年足らずで対象になります。実施者の確保や規程づくりには、意外と時間がかかります。今のうちに小さく始めておくと、義務化のタイミングで慌てずに済みます。
なぜ医療機関のストレスチェックは難しいのか【3つの壁】
医療機関でストレスチェックの運用が進みにくい原因は、夜勤・交代制、職種の多様さ、人間関係の近さという3つの構造的な壁に集約されます。
私がご相談を受ける病院の担当者さんは、ほぼ例外なくこのどれかで悩んでいます。
壁1:夜勤・交代制で案内が全員に届かない
病棟の看護師は二交代・三交代で動いており、全員が同じ時間に集まる機会がありません。朝礼で配って回収する、という一般企業の定番手法が通用しないのです。院内メールを日常的に見ない職種も多く、Webの案内が数週間放置されることもあります。
壁2:職種ごとにストレス要因がまったく違う
看護職の感情労働、当直医の長時間労働、受付のクレーム対応、リハビリ職の身体負担。同じ院内でも、部署ごとにストレスの中身は大きく異なります。全職員をひとまとめにした集計では、負荷の高い部署が平均値に埋もれてしまいます。求められるのは、職種・部署ごとの見方です。
壁3:「同僚に結果を見られたくない」という不安
医療機関は職員同士の距離が近く、事務長も看護部長も顔見知りです。結果を扱う担当者が身近な同僚だと、「正直に答えたら不利になるのでは」という警戒心が生まれます。この警戒心が、受検率と回答の正直さを下げてしまうのです。
結果の入力や通知など実務を担う「実施事務従事者」には、人事権を持つ職員(院長・事務長・看護部長など)はなれません。小規模な医療機関ほど該当者が多く、担当者選びでつまずきやすいポイントです。
相談者看護部から「結果は誰が見るんですか」と質問攻めにあって困っています…。



その質問が出るのは健全な証拠です。「結果は外部機関が管理し、院内の誰も個人結果を見られない」と案内できる体制にすると、警戒心は大きく和らぎますよ。


この3つの壁は、実施設計の工夫でどれも越えられます。「うちの職員数と職種構成ならどんな設計になるのか」を先に知りたい方は、規模を伝えるだけで使える無料見積りから始めてみてください。
医療機関のストレスチェック実施の流れ【5ステップ】
医療機関のストレスチェックは、衛生委員会での審議から労働基準監督署への報告まで、5つのステップで1サイクルが完了します。
流れ自体は一般企業と同じです。ただし各ステップに、医療機関ならではの判断ポイントがあります。
実施時期・受検方式・結果の取り扱いを審議し、院内規程にまとめます。年度替わりや監査など、看護部の繁忙期を避けた日程にすると受検率が変わります。
実施者は医師・保健師などの有資格者が担います。院内に医師がいても、職員との距離の近さを考えて外部の実施者に任せる選択もできます。
紙・Web・併用から、部署の働き方に合う方式を選びます。夜勤者にはQRコード掲示、パソコンを使わない部署には紙、事務部門にはWebが定番です。
結果は本人に直接通知します。高ストレス者から申出があれば、医師による面接指導をおおむね1か月以内に行うことが求められます。段取りは面接指導の流れで解説しています。
夜勤スタッフの受検率をどう上げる?
夜勤・交代制の医療機関では、紙とWebの併用と2〜3週間の受検期間の確保が、受検率を保つ最も確実な方法です。
「全員に同じ方法で」と考えるほど受検率は下がります。鍵は、部署ごとに受けやすい方式を用意する発想への切り替えです。
- 病棟スタッフには休憩室にQRコードを掲示し、私用スマホで隙間時間に回答してもらう
- 紙で受ける部署には封筒つきの調査票を配り、封をしたまま回収箱へ入れてもらう
- 受検期間は2〜3週間とり、中間時点で未受検者だけに個別リマインドを送る
リマインドを師長経由の「声かけ依頼」にすると、催促が圧力に変わりがちです。未受検者を特定できるWebの仕組みで、本人にだけそっと届ける形なら角も立ちません。文面の工夫は未受検者への対応で紹介しています。
私自身、「夜勤明けに書いてもらったら回答が雑になった」という反省談を担当者さんから何度も聞いてきました。効くのは、休憩室のQRポスター1枚。外国人の看護補助者が多い施設なら、英語・ベトナム語の調査票対応も確認してください。
集団分析は病棟単位で活かす【2027年施行の改正に注意】
集団分析の結果は、病棟・外来・事務部門など部署単位で読み解くことで、医療機関の職場環境改善に直結します。
集団分析とは、個人の結果を部署ごとに集計し、職場単位のストレス傾向を見える化する手法のことです。「仕事のストレス判定図」を使えば、仕事の量的負担と裁量度のバランスが病棟ごとに一目で分かります。
法改正の動きにも注意が必要です。厚生労働省は2026年6月30日に労働安全衛生規則を改正し、集団分析を特定の個人を識別できない方法で実施することを新たに規定しました。施行は2027年(令和9年)4月1日です。数人しかいない部署は単独で集計せず、複数まとめて分析する設計が求められます。
高ストレス者が特定の病棟に集中していたら、人員配置や夜勤回数を見直すサインです。個別対応の進め方は高ストレス者の選定基準と対応で確認できます。


院内で完結させる?外部委託する?
院内に医師や保健師がいる医療機関でも、結果の秘密保持と担当者の工数を考えると、外部委託が現実的な選択肢になります。
「有資格者がいるのだから自前でできるはず」。医療機関ならではの発想ですが、自院実施を続けている病院は多くありません。判断材料を表で整理します。
| 比較項目 | 院内で実施 | 外部委託 |
|---|---|---|
| 実施者の確保 | 院内の医師・保健師に依頼が必要 | 委託先の実施者に任せられる |
| 結果の秘密保持 | 「同僚が結果を扱う」不安が残る | 個人結果は外部管理で院内の誰も見ない |
| 担当者の工数 | 案内・回収・集計・面談調整まで自前 | 案内文と名簿の準備が中心 |
| 集団分析 | 集計・分析のノウハウが必要 | 部署別の分析レポートまで納品される |
| 費用 | 外部費用は抑えられるが人件費が隠れる | 1人あたりの委託費用が発生する |
壁3で触れた「見られたくない」不安への答えとして、院内の誰も個人結果を見ない体制は特に効果的です。費用感は外部委託の費用相場を参考にしてください。



うちは院長が産業医の経験もあります。それでも外部に頼む意味はありますか?



資格の面では院長も実施者になれます。ただ、経営者と実施者が同じだと職員は本音で答えにくくなります。あえて外部に切り離すことで、検査の信頼性を守れるんです。
当センターは500〜20,000名規模・100社以上の導入実績があり、交代制職場のWeb・紙・併用受検を数多く支援してきました。翌年も継続いただくリピート率は9割以上です。プライバシーマークを取得し、個人情報は自社サーバーで管理しています。
医療機関のストレスチェックでよくある質問
最後に、病院・クリニックの担当者の方からよくいただく質問にお答えします。
- ストレスチェックは誰が実施できますか?
-
実施者になれるのは医師・保健師のほか、所定の研修を修了した看護師・精神保健福祉士・歯科医師・公認心理師などです。実施者とは別に、人事権を持たない実施事務従事者を置く必要があります。
- ストレスチェックの結果は院長や事務長に見られますか?
-
個人の結果は、本人の同意がない限り事業者に提供されません。労働安全衛生法第66条の10で、結果提供には本人の同意が必要と定められています。院長・事務長であっても、同意なしに個人結果は見られません。
- ストレスチェックを受ける時間に賃金は発生しますか?
-
受検時間の賃金に法令上の明確な定めはなく、労使の取り決めによります。ただし厚生労働省は、業務時間内に受検できる配慮が望ましいとしています。回答は10分程度で済みます。
- 50人未満のクリニックもストレスチェックが義務になりますか?
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2025年5月公布の改正労働安全衛生法により、2028年4月1日から労働者数50人未満の事業場も義務になります。それまでは努力義務の扱いです。担当者が兼務の小規模クリニックほど、早めの体制づくりが鍵になります。
- 労働基準監督署への報告は病院にも義務がありますか?
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常時50人以上の労働者を使用する事業場には、業種を問わず報告義務があります。ストレスチェックの実施状況を所定の報告書にまとめ、年1回の提出が求められます。病院・クリニックも例外ではありません。
- 高ストレス者と判定された職員には何をすればいいですか?
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本人から申出があった場合、医師による面接指導をおおむね1か月以内に実施することが求められます。申出を理由とする配置転換などの不利益な取り扱いは禁止されています。
まとめ:医療機関のストレスチェックは「全職種が受けやすい設計」で決まる
医療機関のストレスチェックを成功させる鍵は、夜勤・交代制を含む全職種が無理なく受けられる設計にあります。
要点を3つに整理します。自院と照らし合わせてみてください。
- 50人以上の事業場は年1回の実施義務あり。50人未満も2028年4月から義務化
- 夜勤・交代制の職場は、紙とWebの併用+2〜3週間の受検期間で受検率を守る
- 秘密保持と工数を考えるなら、外部委託で「院内の誰も個人結果を見ない」体制に
当センターは最短3日で受検を開始でき、Web・紙・併用のすべてに対応しています。9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定された体制で、集団分析から面接指導の手配まで一緒に進めます。「うちの体制で回るだろうか」と迷ったら、まず現状を聞かせてください。
本記事は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、3〜20,000名規模・100社以上のストレスチェック実施を支援してきたストレスチェックサポートセンター編集部が、厚生労働省など公的資料に基づいて作成しています。
シー・システム株式会社は「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門 ネクストブライト1000)」に認定されています。










