「うちの規模でも相談窓口は必要なの?」と迷っていませんか。総務や人事を兼務していると、法対応の確認だけでも正直大変ですよね。この記事では、設置義務の根拠から窓口の作り方、外部委託の判断基準まで整理します。
この記事でわかること
- ハラスメント相談窓口の設置が義務になる法律と対象企業
- 設置しない場合の罰則と3つのリスク
- 窓口の作り方5ステップと外部委託の判断基準
結論から先に:ハラスメント相談窓口の設置は、労働施策総合推進法第30条の2などに基づく全事業主の義務です。2022年4月からは中小企業も対象になりました。刑事罰はありませんが、勧告に従わない場合は企業名が公表される可能性があります。
ハラスメント相談窓口の設置は義務?根拠となる法律
ハラスメント相談窓口の設置は、労働施策総合推進法第30条の2により全企業に義務付けられています。
「パワハラ防止法」という通称のほうが、耳にした機会は多いかもしれません。ハラスメント相談窓口とは、職場のハラスメントについて労働者の相談に応じ、適切に対応するための体制のことです。
ハラスメントの種類ごとに根拠法が異なります
相談体制の整備義務は、パワハラだけのものではありません。セクハラとマタハラにも、それぞれ根拠となる法律があります。
| ハラスメントの種類 | 根拠となる法律 | 義務化の時期 |
|---|---|---|
| パワハラ | 労働施策総合推進法第30条の2 | 大企業2020年6月/中小企業2022年4月 |
| セクハラ | 男女雇用機会均等法第11条 | 企業規模を問わず義務 |
| マタハラ(妊娠・出産・育児等) | 男女雇用機会均等法第11条の3、育児・介護休業法第25条 | 企業規模を問わず義務 |
条文の原文はe-Gov法令検索(労働施策総合推進法)で確認できます。実務では3種類を別々の窓口にする必要はなく、一体の窓口で受け付ける形が一般的です。
中小企業はいつから義務化された?
パワハラ相談窓口の設置は、2022年4月1日から中小企業にも義務化されました。それまでの努力義務期間は終了しています。
対象は、正社員だけでなくパートや契約社員も含む全労働者。「従業員50人未満だから対象外」という例外はありません。人数の少ない会社ほど兼務担当者に負担が集中するため、早めの体制づくりが求められます。
どのくらいの企業が対応済み?最新の実態データ
厚生労働省の令和5年度実態調査では、過去3年間にパワハラを受けた労働者は19.3%です。
この「職場のハラスメントに関する実態調査」の数字は、およそ5人に1人という水準です。同じ調査では、企業の対策で最も多い取り組みが「相談窓口の設置と周知」で約7割とされています。
裏を返せば、約3割の企業では窓口整備がまだ道半ばということ。2025年6月公布の改正労働施策総合推進法では、カスタマーハラスメント対策も新たに事業主の義務とされました。関連資料は厚生労働省「あかるい職場応援団」にまとまっています。
相談者調査の数字を見ると不安になります。うちは窓口の名前だけ決めて、実際はほとんど動いていません…。



「形だけ窓口」のご相談は実はとても多いです。後半の5ステップで、機能する窓口に整えていきましょう。


設置しないと罰則はある?放置した場合の3つのリスク
相談窓口を設置しなくても刑事罰はありません。ただし勧告に従わない企業は、労働施策総合推進法第33条第2項により企業名公表の対象になります。
「罰金がないなら後回しでいい」と考えるのは危険です。放置した場合のリスクは、大きく3つに分けられます。
リスク1:行政指導・企業名公表
措置義務を怠ると、労働局による助言・指導・勧告の対象になります。行政への報告を拒んだり虚偽の報告をしたりすると、20万円以下の過料が科される規定もあります。
リスク2:安全配慮義務違反による損害賠償
相談を受け止める体制がないまま被害が深刻化すると、どうなるでしょうか。会社が安全配慮義務違反を問われ、損害賠償責任を負う可能性があります。裁判に発展すれば、金銭面だけでなく対応工数の負担も長期化します。
リスク3:人材流出と採用への悪影響
私はこれまで100社以上のメンタルヘルス対策を支援してきました。その経験から言うと、罰則より「相談先がない職場」と見られる実害のほうが大きいと感じます。退職理由の聞き取りで、ハラスメントへの不対応が挙がる会社は珍しくありません。
ハラスメント対策とあわせてストレスチェックの体制づくりを考えている方は、現状の課題整理も兼ねて一度ご相談ください。
ハラスメント相談窓口の作り方5ステップ
相談窓口は「担当者決定→規程整備→対応フロー→周知→運用」の5ステップで整備できます。
順番に進めれば、専任者のいない中小企業でも無理なく形になります。各ステップの要点を押さえていきましょう。
人事・総務部門から担当者を選びます。相談者が話しやすいよう、可能なら男女それぞれ1名以上の配置が望まれます。面談だけでなく、記録が残り心理的負担の少ないメール受付も用意してください。
ハラスメントの禁止と懲戒の根拠を就業規則に明記します。相談を理由とする不利益取扱いの禁止は、同法第30条の2第2項で定められた必須事項です。
受付→事実確認→行為者・被害者への措置→再発防止という流れを先に決めておきます。厚生労働省「あかるい職場応援団」の対応マニュアルをひな形にすると、作成が早く進みます。
窓口は、知られていなければ無いのと同じです。ポスター・社内イントラ・入社時研修など複数の経路で伝えます。連絡先と「相談しても不利益にならないこと」をセットで伝えてください。
相談記録の様式と保管ルールを決め、担当者には守秘を徹底させます。プライバシーが守られた実績の積み重ねが、窓口への信頼を育てます。
社内の窓口だけで大丈夫?外部委託を検討すべきケース
社内窓口だけでは「上司や人事に知られそう」という心理的ハードルが残ります。厚生労働省の指針でも、外部機関への相談対応の委託が措置の一つとして認められています。
実際、検索エンジンでは「社内相談窓口 意味ない」という言葉が数多く調べられています。窓口を作った側と使う側の温度差は、想像以上に大きいのです。
導入支援の現場で私が何度も耳にするのは、「窓口を作って2年、相談は1件も来ていない」という声です。相談ゼロは、問題ゼロの証明ではありません。次のような状況なら、外部委託を検討してください。
- 担当者が兼務で、事実確認まで手が回らない
- 経営層や管理職に関する相談が想定され、社内では中立性を保ちにくい
- 周知しても相談が来ず、従業員が社内窓口を信頼していない様子がある



外部に頼むと、費用も手間もかかりそうで踏み切れません。



窓口単体で考えるより、ストレスチェックなど毎年の義務対応とまとめて外部化すると、負担を抑えやすいですよ。
ストレスチェックと一体で進めるハラスメント対策
ストレスチェックの集団分析を使うと、ハラスメントが起きやすい部署をデータで把握できます。労働安全衛生法第66条の10に基づく制度で、相談窓口と並ぶ予防策です。
集団分析とは、ざっくり言うと部署ごとのストレス状態を数値で見える化する仕組みです。相談窓口が「起きた問題を受け止める仕組み」なら、こちらは「問題の芽を早く見つける仕組み」。詳しくは集団分析の解説記事で紹介しています。
私自身、集団分析で数値が悪化した部署からハラスメントが見つかった事例を担当した経験があります。数値の変化が、声を上げられない人の代わりにSOSを出してくれたのだと感じました。高ストレス判定が出た従業員への対応は高ストレス者対応の解説記事にまとめています。
厚生労働省の発表では、令和10年4月1日から50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます(厚生労働省 ストレスチェック制度)。ハラスメント窓口と同時に体制を整えると、二度手間を防げます。
当社は9年連続で経済産業省の「健康経営優良法人」に認定されています。500〜20,000名規模まで100社以上のストレスチェック実施を支援し、リピート率は9割以上です。最短3日で受検を開始できます。未実施のリスクは罰則の解説記事、委託先の比較は選び方の記事を参考にしてください。


よくある質問(FAQ)
ハラスメント相談窓口の設置義務について、よく検索されている質問に答えます。
- ハラスメント相談窓口の設置は中小企業でも義務ですか?
-
はい、義務です。労働施策総合推進法に基づき、2022年4月1日から中小企業も対象になりました。セクハラ・マタハラに関する相談体制は、企業規模を問わず以前から義務とされています。
- ハラスメント相談窓口は社外に設置してもよいですか?
-
社外への設置も認められています。厚生労働省の指針では、外部機関への相談対応の委託が措置の一つとして示されています。社内と外部の窓口を併設すると相談者が選べるため、相談のハードルが下がります。
- ハラスメント相談窓口の担当者は誰がなるべきですか?
-
人事・総務部門の担当者や管理職が担うのが一般的です。相談者が話しやすいよう男女それぞれの担当者を置き、秘密保持を徹底できる人を選んでください。担当者にはハラスメント対応の研修受講が望まれます。
- 相談窓口を設置しないと罰則はありますか?
-
刑事罰はありません。ただし労働局の助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合は企業名が公表される可能性があります。ハラスメントの放置は、安全配慮義務違反として損害賠償につながるおそれもあります。
- マタハラの相談窓口も義務ですか?
-
はい、義務です。妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントは、男女雇用機会均等法第11条の3と育児・介護休業法第25条で相談体制の整備が求められています。パワハラ・セクハラと一体の窓口で対応できます。
- 相談窓口がない会社の場合、従業員はどこに相談できますか?
-
全国の労働局や労働基準監督署内にある「総合労働相談コーナー」で無料相談ができます。厚生労働省のポータルサイト「こころの耳」(https://kokoro.mhlw.go.jp/)でも電話・SNS・メールで相談を受け付けています。
まとめ:窓口設置を「義務対応」で終わらせない
ハラスメント相談窓口の設置は、企業規模を問わずすべての事業主の義務です。最後に要点を振り返ります。
- 根拠は労働施策総合推進法第30条の2など。中小企業も2022年4月から義務
- 刑事罰はないが、勧告に従わないと企業名公表の可能性がある
- 担当者決定から運用まで5ステップ。機能しない窓口は外部委託も選択肢
ハラスメント対策もストレスチェックも、目指すところは同じです。働く人が安心して力を発揮できる職場づくり。迷ったら、まず自社の体制を紙に書き出すところから始めてください。
自社だけで抱え込む必要はありません。ストレスチェックの体制づくりから集団分析の活用まで、私たちが伴走します。まずは資料で、外部委託した場合の流れを確認してみてください。
本記事は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、3〜20,000名規模・100社以上のストレスチェック実施を支援してきたストレスチェックサポートセンター編集部が、厚生労働省など公的資料に基づいて作成しています。
シー・システム株式会社は「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門 ネクストブライト1000)」に認定されています。












