「海外の駐在員にもストレスチェックは必要ですか」。総務のご担当者から、よくいただくご質問です。国内の従業員と扱いが違うのか、調べてもはっきりせずモヤモヤしますよね。この記事では、対象かどうかの判断基準と、海外から実施する具体的な方法を整理します。
この記事でわかること
- 海外駐在員がストレスチェックの対象になる条件
- 現地法人へ出向・転籍している場合の扱い
- 海外からWeb受検で実施する手順と運用のコツ
結論から先に:海外駐在員がストレスチェックの対象になるかは、日本国内の事業場と雇用関係があるかで決まります。本社在籍のままの赴任なら対象に含めるのが基本です。現地法人へ転籍し、日本の会社と雇用関係がなければ実施義務の対象外です。
海外駐在員はストレスチェックの対象になる?
海外駐在員が対象かどうかは、日本国内の事業場との雇用関係で決まります。実施義務を定めた労働安全衛生法第66条の10が、日本国内の事業場に適用される国内法だからです。
つまり「海外にいるかどうか」ではなく、「どこの事業場の労働者か」が判断の軸になります。まずは自社の駐在員が、どちらのパターンに当てはまるか確認してみてください。
相談者うちはタイと米国に駐在員が5名います。国内のストレスチェックに含めるべきでしょうか?



雇用契約が日本本社のままなら、対象に含めて実施するのが基本です。現地法人に転籍している方は義務の対象外ですが、ケアとして受検してもらう会社も増えていますよ。
対象に含めるケース:本社在籍のまま赴任・長期出張
日本本社と雇用契約を結んだまま海外で働く駐在員は、本社の「常時使用する労働者」に当たります。この場合、国内の従業員と同じように対象へ含めることが求められます。
数か月単位の長期出張者も考え方は同じです。所属はあくまで日本の事業場なので、出張中であることを理由に外す必要はありません。
対象外になるケース:現地法人へ転籍・現地採用
現地法人へ転籍し、日本の会社との雇用関係がなくなった駐在員はどうでしょうか。この場合は日本の労働安全衛生法上の実施義務の対象外です。現地で採用された外国人スタッフも同様に、現地の法制度に従うことになります。
| 駐在の形態 | 雇用関係 | 実施義務の扱い |
|---|---|---|
| 本社在籍のまま赴任 | 日本本社 | 対象に含めるのが基本 |
| 海外への長期出張 | 日本本社 | 対象に含めるのが基本 |
| 現地法人へ転籍 | 現地法人 | 日本の義務の対象外 |
| 現地採用スタッフ | 現地法人 | 日本の義務の対象外 |
迷ったときに確認する3つのポイント
実務で判断に迷いやすいのが、日本と現地の両方に籍がある在籍出向のケース。次の3点を確認すると整理しやすくなります。
- 雇用契約をどこの会社と結んでいるか
- 給与の支払いと指揮命令をどちらが行っているか
- 定期健康診断を日本側で実施しているか
在籍出向で日本本社との雇用関係が残る場合は、勤務実態をふまえた個別判断になります。日本側の健康診断を受けている駐在員なら、ストレスチェックも同じ枠での実施が自然です。判断に迷うときは産業医や社会保険労務士への確認が求められます。


ストレスチェック制度とは?押さえておく基本ルール
ストレスチェック制度とは、労働安全衛生法第66条の10に基づく検査の仕組みです。常時50人以上の労働者がいる事業場に、年1回の実施が義務付けられています。まずは制度の土台を短く押さえておきましょう。
ストレスチェックとは、質問票で労働者のストレス状態を調べる検査のことです。本人へ結果を通知し、不調への気づきを促します。メンタルヘルス不調の未然防止と職場環境の改善が目的で、2015年12月に義務化されました。
対象となる「常時使用する労働者」の範囲は、定期健康診断とほぼ同じです。正社員のほか、契約期間や労働時間の要件を満たすパート・契約社員も含まれます。高ストレスと判定された人への対応は高ストレス者への対応で確認できます。
制度はいま、大きな転換点にあります。2025年5月公布の改正労働安全衛生法で、50人未満事業場への拡大が決まりました。厚生労働省の案内によると、施行は2028年(令和10年)4月1日です。小さな本社で海外拠点を支えている会社にも、無関係ではありません。
制度の全体像は厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」で確認できます。条文の原文はe-Gov法令検索「労働安全衛生法」に掲載されています。
義務の有無だけで決めない|駐在員特有のメンタルリスク
海外駐在員は、義務の対象かどうかにかかわらず、メンタルヘルスケアの優先度が高い層です。慣れない言語や文化に加え、本社と現地の板挟みも起こりがちです。相談相手が少なく、ストレス要因が重なりやすい働き方だからです。
数字も深刻さを裏付けています。厚生労働省の令和7年度「過労死等の労災補償状況」では、精神障害の労災請求が4,958件に達しました。前年度から、実に1,178件の増加。支給決定件数も1,082件と増加が続いています。
忘れてはいけないのが安全配慮義務です。安全配慮義務とは、会社が従業員の心身の健康に配慮する義務のことです。雇用関係が続く限り、勤務地が海外でも変わりません。実施義務のない現地転籍者にも任意で受検機会を用意する会社が増えているのは、このためです。
私がお客様の総務担当者と話していて感じるのは、駐在員本人ほど不調を言い出せないという現実です。「現地で頑張っている手前、弱音を吐けない」という声を何度も聞きました。だからこそ、年1回のストレスチェックが本音を拾う貴重な機会になります。
「うちの駐在員はどこまで対象に含めるべきか」と迷ったら、体制づくりの段階で一度ご相談ください。状況を伺いながら、無理のない範囲設計を一緒に考えます。
海外駐在員にストレスチェックを実施するには?【5ステップ】
海外駐在員のストレスチェックは、5つのステップで進めます。時差と言語にさえ配慮すれば、国内の実施と同じ流れに載せられます。特別な仕組みは要りません。
駐在員・出向者・現地採用者を一覧にし、雇用関係がどこにあるかで対象を仕分けます。義務対象でない人を任意受検に含めるかも、この段階で決めておきます。
実施時期・受検方法・結果の取り扱いを案内します。現地採用者や外国籍の駐在スタッフも受検するなら、英語版の案内と質問票を用意しておくとスムーズです。
海外からの受検はWeb方式が現実的です。紙の質問票を国際郵送する手間がなく、時差があっても各自の都合で回答できます。受検期間は国内より長めに設定してください。
結果は本人へ直接通知します。高ストレス者から申出があれば、医師による面接指導につなぎます。海外在住者はオンライン面談や一時帰国のタイミングを活用する方法があります。
拠点ごとの集団分析ができれば、海外特有のストレス要因が見えてきます。結果を眺めて終わらせず、赴任前研修や現地サポート体制の見直しに活かしてください。
私も導入支援の中で、時差の壁を何度も見てきました。受検期間にゆとりを持たせた会社ほど、締切前の追い込みに追われていません。面接指導の流れは面接指導の進め方を、受検手順はWeb受検の流れを参考にしてください。



時差があると受検期間の管理が大変そうです。未受検のまま終わりませんか?



受検期間を長めに取り、未受検の方へ現地時間に合わせてリマインドすれば大丈夫です。私たちが支援した企業でも、この2つの工夫だけで海外拠点の受検が最後まで進んだ例が多いですよ。


海外拠点の実施は英語対応・Web受検の外部委託が現実的です
駐在員を含む実施は、多言語とWeb受検に対応した外部機関への委託が現実的です。案内文の翻訳や時差をまたぐ進捗管理を、自社だけで回すのは正直しんどい作業だからです。委託すれば、担当者の作業は対象者名簿の準備が中心になります。
ストレスチェックサポートセンターは、英語・ベトナム語での受検に対応しています。Web受検・紙受検・併用のいずれも選べます。海外拠点はWeb、国内工場は紙という使い分けもできます。受検開始まで最短3日というスピード感も強みです。
数名〜6,000名規模の自治体・民間企業を含む、100社以上の支援実績があります。リピート率は9割以上です。9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定されている当事者です。制度対応だけで終わらない運用を提案しています。
プライバシーマークも継続取得しています。結果データは自社サーバーで管理し、海外からの回答を含む個人情報を厳重に扱います。
委託先を比較する視点は委託先の選び方にまとめました。海外対応の可否は業者差が大きく、契約前の確認が欠かせません。決め手は、言語対応と運用サポートの厚さ。
海外駐在員のストレスチェックに関するよくある質問
最後に、海外駐在員のストレスチェックについて検索されることの多い疑問へ、ひとつずつお答えします。
- ストレスチェックは海外勤務者も対象ですか?
-
日本の事業場と雇用関係が続いている海外勤務者は、対象に含めるのが基本です。一方、現地法人へ転籍し日本の会社と雇用関係がない場合は、実施義務の対象外です。
- 海外駐在員に日本の労働基準法は適用されますか?
-
労働基準法や労働安全衛生法は、日本国内の事業場に適用される法律です。海外の事業場での勤務には、そのまま及ばないのが原則です。ただし日本の会社と雇用関係がある限り、安全配慮義務など契約上の責任は海外勤務中も残ります。
- ストレスチェックは従業員何人から義務になりますか?
-
現在は常時50人以上の労働者がいる事業場に、年1回の実施義務があります。2025年5月公布の改正労働安全衛生法で50人未満の事業場にも拡大されました。義務化は2028年(令和10年)4月1日からです。
- 海外出張が多い社員はストレスチェックの対象ですか?
-
出張が多くても、所属先が日本国内の事業場であれば対象です。受検時期に帰国できない場合は、Web受検を使えば海外からでも回答できます。受検期間を長めに設定すると未受検を防げます。
- 海外駐在員が高ストレス判定になったら面接指導はどうしますか?
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本人から申出があれば、医師による面接指導の機会を設けることが求められます。海外在住の場合は、オンラインでの面談や一時帰国に合わせた実施が現実的です。申出しやすい雰囲気づくりも会社側の大切な役割です。
- 日本語が読めない駐在スタッフにも実施できますか?
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多言語対応の実施機関を使えば可能です。ストレスチェックサポートセンターは、英語とベトナム語の受検に対応しています。外国籍の従業員や現地スタッフの任意受検にも、同じ仕組みを使えます。
まとめ|「雇用関係がどこにあるか」から確認を
海外駐在員のストレスチェックは、雇用関係の所在を確認すれば迷わず整理できます。最後に要点を振り返ります。
- 日本本社に在籍したままの駐在・長期出張は対象に含めるのが基本
- 現地法人への転籍者・現地採用者は日本の実施義務の対象外
- 義務がなくても安全配慮義務の観点から任意受検の価値は大きい
- 海外からの実施はWeb受検+長めの受検期間+現地時間リマインドが有効
駐在員の心の健康は、遠く離れているぶん見えにくいものです。年1回のストレスチェックを、海外で奮闘するメンバーの声を聴く仕組みとして育てていきましょう。対象範囲の整理から多言語対応まで、迷ったら私たちに相談してください。
本記事は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、3〜20,000名規模・100社以上のストレスチェック実施を支援してきたストレスチェックサポートセンター編集部が、厚生労働省など公的資料に基づいて作成しています。
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