前回の「その1」では、厚生労働省版ストレスチェック実施プログラムの導入からマスター登録までを解説しました。
設定が完了したらいよいよ「実施」です。プログラム上での操作と、法律で定められたプライバシー保護を両立させるためのポイントを解説します。
ストレスチェック実施プログラム初心者向け簡単マニュアル https://stresscheck.mhlw.go.jp/download/beginnermanual.pdf
ストレスチェック実施プログラム操作ガイド
https://stresscheck.mhlw.go.jp/download/sousa_guide.pdf
ストレスチェック実施プログラム実施者用管理ツールマニュアル
https://stresscheck.mhlw.go.jp/download/jisshisha_manual.pdf
1. 受検方式の準備(Webと紙の使い分け)
「その1」で登録した受検者情報をもとに、各従業員にWEB受検の場合ログイン情報を、紙受検の場合回答用紙を配布します。
① Web受検の場合
「③ 受検者情報」画面からログインIDとパスワードのリストを出力し、各個人に封書やメールで配布します。
Web受検の場合、従業員はブラウザからプログラムが設置されたサーバーのURLへアクセスし、職業性ストレス簡易調査票(57項目または80項目)に回答します。
② 紙受検の場合:調査票と封筒の準備
紙で実施する場合、以下の準備が必要です。
- 調査票の用意:厚労省のHPから「職業性ストレス簡易調査票」のPDFをダウンロードし、必要部数を印刷します。
- 回答用封筒の用意:記入済みの調査票が他人の目に触れないよう、必ず個人用の返信用封筒を用意します。
- Ver.4.0でのマークシート利用:最新版プログラムでは、特定のマークシートスキャナで読み取れる「マークシート回答用紙」に対応しています。大量の紙受検がある場合は、手入力の手間を省くためマークシートの活用を検討してください。
調査票の配布と回収の注意点
紙受検で最も紛失や情報漏洩のリスクが高いのが、配布と回収のプロセスです。
① プライバシーに配慮した配布
- 調査票、ログイン情報、実施の案内をセットにして、個別の封筒に入れて手渡し、または郵送します。
- 誰が紙受検で、誰がWeb受検かを管理台帳(プログラム外のExcel等)で明確にしておくと、配布漏れを防げます。
② 「実施事務従事者」による厳重な回収
- 記入済みの調査票は、必ず封筒に入れ、封をした状態で回収します。
- 回収箱を設置するか、直接「実施事務従事者(人事権のない担当者)」に郵送・手渡しするように徹底してください。
- 上司が部下の調査票をまとめて回収することは、中身が見えてしまう恐れがあり注意が必要です。

2. 判定基準の選定
受検期間が終了(または紙の回答を回収)したら、高ストレス者を抽出するための「判定」を行います。
高ストレス者判定の評価方法
プログラムの「⑧ 高ストレス者判定」画面で評価方法を選択します。
- Ver.4.0の変更点:以前のバージョンでは初期値が「単純合計評価」になっていましたが、Ver.4.0からは「未選択状態」に変更されました。これは、担当者が意図せずデフォルト設定で判定してしまうミスを防ぐための改善です。必ず自社のルールに合わせた方法を選択してください。
3. 紙受検データの取り込み
PCを持たない現場スタッフなどに対して「紙の調査票」で実施した場合は、そのデータをプログラムに取り込む必要があります。
- 手入力:「⑤ 受検結果取込」画面から、一人ずつ回答を転記します。
- マークシート利用:Ver.4.0の新機能として、特定のマークシートスキャナで読み取ったCSVデータを一括で取り込めるようになりました。これにより、転記ミスのリスクを大幅に軽減できます。
4. 個人の受検結果の出力と通知
判定が完了したら、結果を各従業員に通知します。
① 個人結果の出力
「⑨ 個人結果出力」画面から、個別の結果票をPDFや印刷物として出力できます。 結果票には、本人のストレスプロフィール(レーダーチャート等)や、高ストレス判定の有無、医師による面接指導の申し出方法が記載されます。
② 通知における厳格なルール
ここで最も注意すべきは、「本人の同意なく、結果を事業者に提供してはならない」という法的要件です。
労働安全衛生法に基づく指針:ストレスチェックの結果は、実施者(医師・保健師等)から本人に対して直接通知されなければなりません。事務担当者が結果を閲覧できるのは、本人の同意がある場合や、実施事務従事者として正当な権限がある場合に限られます。
5. 高ストレス者への面接指導勧奨
判定の結果、高ストレスと認められ、かつ「医師の面接指導が必要」とされた従業員に対しては、速やかに申し出を促します。
プログラムの「⑩ 面接指導対象者管理」画面を使用すると、誰が面接を希望しているかを管理できます。ただし、面接指導の申し出があった時点で、その従業員が「高ストレス者である」という情報が事業者に伝わることになるため、不利益な取扱いが起こらないよう社内規定を整備しておくことが不可欠です。
実務担当者へのアドバイス:未受検者への対応
実施期間中に受検が進まない場合、プログラムの「⑥ 受検状況確認」画面から、誰がまだ回答していないかを把握できます。 受検を勧奨すること(リマインドメールの送信など)は可能ですが、「受検の強要」は控えなければなりません。実施者及び実施s事務従事者には、あくまで自発的な受検を促すスタンスが求められます。
(その3に続く:次回は「集団分析の活用と労働基準監督署への報告」について解説します)



