「シフトも繁忙期もあるうちのホテルで、ストレスチェックなんて回せるの?」。宿泊業の総務・人事の方から、そんな声をよく聞きます。フロントも清掃も調理も動きっぱなしで、正直それどころではないですよね。
この記事では、宿泊業のストレスチェックの義務の範囲と、ホテル・旅館ならではの進め方を整理します。100社以上・最大20,000名規模の実施を支援してきた経験から、現場のつまずきどころもお伝えします。
この記事でわかること
- 宿泊業でストレスチェックが義務になる条件と50人の数え方
- 2028年4月からの50人未満義務化が小規模旅館に与える影響
- シフト制・繁忙期・外国人スタッフがいても無理なく回す5ステップ
結論から先に:宿泊業のストレスチェックは、従業員が常時50人以上の事業場(ホテル・旅館単位)で義務です。2028年(令和10年)4月1日からは50人未満にも義務が広がり、小規模な旅館・ホテルも対象になります。
宿泊業にストレスチェックは義務ですか?【50人の数え方】
宿泊業のストレスチェックは、労働安全衛生法第66条の10に基づき、従業員が常時50人以上のホテル・旅館(事業場)で義務とされています。業種による除外はなく、宿泊業も製造業やIT企業と同じ扱いです。
ストレスチェックとは、働く人のストレス状態を年1回調べる検査です。労働安全衛生法第66条の10により、2015年12月から常時50人以上の事業場に義務付けられています。標準の質問票は57項目で、回答は10〜15分ほどで終わります。
数え方のポイントは2つあります。まず、50人は会社全体ではなく「事業場ごと」=館ごとで数えるのが原則です。そして、週1日勤務のパート・アルバイトでも、継続して雇っていれば頭数に含まれます。
| ケース | 現在の扱い | 2028年4月から |
|---|---|---|
| 1館で従業員60人のシティホテル | 義務 | 義務(変わらず) |
| 3館合計90人・各館30人の旅館チェーン | 各館とも努力義務 | 全館で義務 |
| 従業員15人の小規模旅館 | 努力義務 | 義務 |
宿泊業はこの「館ごとカウント」の影響が大きい業界です。会社全体では100人を超えるのに、館単位では50人に届かず、これまでは努力義務どまり。私が支援に入る旅館チェーンでも、この形が一番多いパターンでした。
2028年4月から50人未満の旅館・ホテルも義務化されます
2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化されます。厚生労働省によると、施行日は2028年(令和10年)4月1日です。
家族経営に近い旅館や、20〜30人規模のビジネスホテルも、この日から対象です。館ごとに見れば50人未満が多い宿泊業にとって、実質的な「全館義務化」に近い変化といえます。
制度の詳細は厚生労働省のストレスチェック制度ページと、e-Gov法令検索の労働安全衛生法で確認できます。
相談者うちは各館30人くらいの旅館が3つ。2028年になってから考えれば間に合いますか?



宿泊業は繁忙期に動けない期間が長いので、前倒しをすすめています。閑散期に1度お試し実施をしておくと、義務化後は同じ段取りを繰り返すだけで済みますよ。
国の動きは実施の先も見ています。厚生労働省は2026年6月30日に、集団分析(結果を部署ごとに集計する分析)の実施方法について労働安全衛生規則の改正を行いました。「受けさせて終わり」ではなく、結果を職場改善につなげる前提で制度が動いています。
「何から手を付ければいいか分からない」という段階のご相談で構いません。当センターは最短3日で受検を始められる体制で、複数館の一括実施にも対応しています。まずは館数と規模を聞かせてください。
宿泊業で働く人のストレス要因は?現場特有の4つ
宿泊業のストレス要因は、接客の感情労働・不規則なシフト・繁忙期の業務集中・清掃などの身体的負担という4つに整理できます。順に見ていきます。
感情労働とカスタマーハラスメント
フロントは、理不尽な要求にも笑顔で応じることを求められる仕事です。ホテルスタッフの「あるある」を扱うYouTube動画を見ると、無茶な要望への対応ネタに共感の声が集まっています。それだけ現場に思い当たる人が多いのだと感じました。
数字にも表れています。厚生労働省が2026年7月に公表した「令和7年度 過労死等の労災補償状況」によると、仕事のストレスによる精神障害の労災請求は4,958件で、前年度から1,178件増えました。接客を伴う職場ほど、心の不調を早く拾う仕組みが要ります。従業員向けの相談窓口は、厚生労働省のポータルサイト「こころの耳」でも案内されています。
不規則なシフトと夜勤
ナイトフロントや早朝の朝食対応など、宿泊業は24時間止まりません。生活リズムが崩れやすく、疲れに気づきにくい働き方です。夜勤者は日中の説明会にも出られないため、受検の機会づくりに工夫が求められます。
繁忙期の業務集中と人手不足
大型連休・夏休み・年末年始は、休みが取りづらいうえ残業も増えます。人手不足で1人が複数の持ち場を掛け持ちする施設も少なくありません。忙しさの波が大きいことは、実施時期の設計にも直結します。
客室清掃・配膳の身体的負担
ベッドメイクや布団上げ、宴会場の配膳は体力勝負。57項目の調査票には身体的負担に関する設問も含まれており、こうした職種の負荷も数値で見えるようになります。部署別の傾向をつかめる点は、宿泊業こそ活用しがいがあります。


シフト制・多拠点でも回る実施の進め方【5ステップ】
宿泊業のストレスチェックは、①体制づくり→②時期の設定→③受検方法の設計→④面接指導の導線→⑤集団分析、の5ステップで進めると無理がありません。それぞれ宿泊業ならではのコツがあります。
実施者(医師・保健師など)と、結果を扱う実施事務従事者を決めます。館ごとに産業医がいない場合は、外部委託で実施者を確保する方法が現実的です。人事権を持つ支配人は実施事務従事者になれない点に注意してください。
大型連休・夏休み・年末年始を避け、自館の閑散期に受検期間を2〜4週間確保します。毎年同じ時期に固定すると、シフト作成時に受検時間を織り込めるようになります。
フロントや事務はWeb受検、PCを使わない清掃・調理スタッフは紙やスマホ受検、と分けます。夜勤者には控室に案内と用紙を置くだけでも受検率が変わります。全員に同じ方法を強いないことがコツです。
高ストレスと判定された人が申し出れば、医師による面接指導につなぐ流れを事前に決めておきます。結果は本人の同意なく会社に渡らないため、申し出やすい雰囲気づくりが受検案内の段階から必要です。
フロント・客室・調理・宴会など、部署別に結果を集計して職場改善につなげます。「どの持ち場に負荷が偏っているか」が数字で見えるのは、多職種が同居する宿泊業ならではの収穫です。
受検率の底上げ策は受検率を上げる方法の記事で、面接指導の詳しい流れは面接指導の解説記事で紹介しています。集団分析の読み方は集団分析の活用方法の記事が参考になります。
外国人スタッフ・複数館でも一括で任せられる外部委託
シフト調整・多拠点・多国籍という宿泊業の三重苦は、外部委託でまとめて解消できます。担当者の仕事は名簿の準備と案内が中心になり、実施者の確保や結果管理を自社で抱える必要がなくなります。
当センターでは英語・ベトナム語の受検に対応しています。外国人スタッフが増えた旅館のお客様から、「母国語で受けられて初めて本音の回答が集まった」と伺ったことがあります。日本語の調査票を配るだけでは、せっかくの検査が形だけになりかねません。
Web受検・紙受検・併用のすべてに対応し、最短3日で受検を始められます。9年連続で経済産業省の健康経営優良法人に認定されており、リピート率は9割以上です。委託先の比較ポイントは実施機関の選び方の記事にまとめています。
複数館の結果を横並びで比較できるのも一括委託の利点です。館ごとの集団分析を本部で見比べれば、応援配置や設備投資の判断材料になります。


よくある質問(FAQ)
宿泊業のお客様から実際によく受ける質問をまとめました。同じ悩みを持つ方は多いので、社内説明の材料にも使ってください。
- パート・アルバイトもストレスチェックの対象になりますか?
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契約期間が1年以上(または更新で1年以上見込み)で、週の労働時間が正社員の4分の3以上あれば実施対象です。週の労働時間が2分の1以上の方にも、実施が望ましいとされています。繁忙期だけの短期アルバイトは通常含まれません。
- ストレスチェックの結果は会社にバレますか?
-
個人の結果は本人の同意がない限り会社に提供されません。結果を扱えるのは実施者と実施事務従事者だけで、支配人や人事担当が勝手に見ることはできない仕組みです。安心して正直に回答してください。
- 繁忙期と重なって受検率が上がりません。いつ実施すべきですか?
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自館の閑散期に受検期間を2〜4週間設定するのが基本です。毎年同じ時期に固定すると、シフトに受検時間を組み込みやすくなります。期間中に休業日や連休明けを含めると、夜勤明けの方も受けやすくなります。
- 夜勤スタッフやPCを使わない清掃スタッフはどう受検させますか?
-
紙の調査票とWeb受検を併用するのが現実的です。夜勤者には控室に案内と用紙を置き、清掃スタッフには朝礼で配布・回収する方法が定着しやすいです。個人のスマホから受けられるWebシステムも有効です。
- 外国人スタッフには日本語の調査票のままでよいですか?
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日本語が十分でない方には、母国語や英語での受検環境を用意することが望ましいです。設問の意味が取れないまま回答すると、結果の信頼性が下がります。当センターは英語・ベトナム語での受検に対応しています。
- 高ストレスと判定された従業員が出たら何をすればいいですか?
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本人から申し出があれば、医師による面接指導を実施することが求められます。申し出から面接までは、おおむね1か月以内が目安です。詳しい対応は高ストレス者対応の記事で解説しています。
まとめ:2028年を待たず、閑散期のいまから準備を
宿泊業のストレスチェックは、現在は常時50人以上の館で義務、2028年4月1日からは50人未満の館にも義務が広がります。館ごとカウントの宿泊業では、対象が一気に増える変化です。
成否を分けるのは、閑散期に合わせた時期設計と、紙・Web併用の受検方法です。シフトの谷に一度回してしまえば、翌年からは同じ段取りの繰り返し。従業員が人間らしく働ける職場づくりの、最初の一歩になります。
「うちの規模だと費用はいくら?」という段階のご質問で構いません。複数館の一括見積りにも対応していますので、迷ったら相談してください。
本記事は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、3〜20,000名規模・100社以上のストレスチェック実施を支援してきたストレスチェックサポートセンター編集部が、厚生労働省など公的資料に基づいて作成しています。
シー・システム株式会社は「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門 ネクストブライト1000)」に認定されています。











