「実施者は結局、誰に頼めばいいのか」。担当になった総務・人事の方が、最初に突き当たる疑問です。この記事では、実施者の役割と資格、なれない人、共同実施者、外部委託までを一度に整理します。
この記事でわかること
- ストレスチェック実施者の役割と法的な位置づけ
- 実施者になれる資格と研修の要件
- 実施者・実施事務従事者になれない人のルール
- 共同実施者の考え方と、社内にいないときの外部委託
結論から先に:ストレスチェックの実施者になれるのは、医師・保健師と所定の研修を修了した4職種だけです。4職種は歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師を指します。社内にいない場合は、外部委託で医師・保健師を実施者として確保できます。
ストレスチェックの実施者とは?何を担う人?
ストレスチェックの実施者とは、検査の企画と結果の評価を担う医師・保健師などの専門職です。労働安全衛生法第66条の10に基づく役割を指します。
具体的な仕事は3つあります。調査票や高ストレス者の選定基準への意見、検査結果の評価、そして面接指導が必要な方の確認です。誰を高ストレス者とするかは、会社ではなく実施者が判断します。検査結果という機微な個人情報を扱うため、守秘義務を負う専門職に限定されています。
実施者=検査の中身に責任を持つ専門職です。会社(事業者)は制度全体の責任者ですが、個人の結果を見て判断するのは実施者。「会社は枠組み、実施者は中身」と分けて覚えると混乱しません。
制度の全体像は厚生労働省「こころの耳」でも確認できます。まず押さえるべきは、この役割の輪郭です。

実施者になれる資格と研修の要件
ストレスチェックの実施者になれる資格は、法令で限定されています。医師・保健師は研修不要、歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師は研修修了が条件です。
資格ごとの条件は次のとおりです。医師と保健師は研修なしで実施者になれます。それ以外の職種は、研修の修了が前提条件になります。
| 資格 | 実施者になる条件 |
|---|---|
| 医師 | 研修不要(産業医が務める例が多い) |
| 保健師 | 研修不要 |
| 歯科医師・看護師 | 厚生労働大臣が定める研修の修了が必要 |
| 精神保健福祉士・公認心理師 | 同上の研修の修了が必要 |
看護師の方などが対象の実施者研修は、オンラインで受講できる開催も見られます。根拠となる条文は労働安全衛生法(e-Gov法令検索)の第66条の10です。社内で候補になるのは、まず産業医。次に保健師や研修修了者という順で探すのが定石です。
実施者・実施事務従事者になれない人は?
解雇・昇進・異動を直接決める権限を持つ人は、ストレスチェックの実施の事務に従事できません。
実施事務従事者とは、調査票の配布や回収、データ入力などで実施者を補助する担当者のことです。資格は不要で、総務の方が担う例が多くあります。ただし人事権を持つ立場の方は、この事務にも就けません。検査結果が人事評価に流用される事態を防ぐためのルールです。
「人事部だから適任」はよくある誤解です。むしろ人事部長や役員など人事権を持つ方は、個人結果に触れる業務から外す必要があります。担当を決める前に、権限の有無を必ず確認してください。
相談者人事部長の私が取りまとめ役では、まずいのでしょうか。



解雇や異動を決められる立場の方は、結果を扱う事務に関われません。窓口は人事権のない方に替えるか、事務ごと外部に任せてください。
実施者と実施事務従事者の役割の違いは、実施者と実施事務従事者の解説記事で詳しく比較しています。線引きの根拠まで知りたい方はあわせてどうぞ。
共同実施者・実施代表者とは?外部委託時の体制
実施者を複数置く場合、その一人ひとりを共同実施者と呼び、中心となる1名を実施代表者と呼びます。
外部委託した場合は、委託先が手配する医師や保健師が実施者になります。このとき自社の産業医を共同実施者に加えると、職場の実情を踏まえた評価につながります。委託したから産業医が不要になる、という関係ではありません。役割の重なりを整理した設計が肝心です。
補足:面接指導の医師は実施者と別でもよい?
別の医師でも問題ありません。高ストレス者への面接指導は「医師」が行うと定められており、実施者と同一である必要はないためです。職場を知る産業医に依頼すると、就業上の措置の助言まで一貫します。面接指導は本人の申出からおおむね1か月以内の実施が求められます。
面接指導の進め方は医師による面接指導の解説をご覧ください。高ストレス者への接し方は高ストレス者への対応方法で解説しています。
社内に実施者がいないときの進め方3ステップ
実施者が社内にいない会社は、委託先の選定、実施体制の確認、受検スタートという3ステップで準備できます。
準備を急ぐ理由もあります。令和10年(2028年)4月1日から、50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます(厚生労働省)。2025年5月公布の改正労働安全衛生法に基づく変更です。産業医のいない小規模事業場ほど、実施者の確保が最初の壁になります。
実施者となる医師・保健師を手配できるか、Web・紙・併用のどの受検方式に対応するかを確認します。資格を明示しない委託先は候補から外してください。
実施事務従事者を社内に置くか委託先に任せるか、高ストレス者の面接指導まで支援があるかを決めます。人事権のある方を体制に入れない点だけ注意が必要です。
受検者リストを共有すれば、案内から結果通知まで委託先が進めます。担当者の実作業は、ほぼリストの用意だけ。最短3日で受検を始めた企業もあります。
私たちの窓口でも、ここ1年は「産業医に実施者を断られた」という相談が目立ちます。実際に対応した多くの会社が、委託後は年間の事務をほぼ手放せました。当センターは9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定されています。リピート率は9割以上。数名〜6,000名規模まで100社以上の支援実績があります。委託先の比較軸はストレスチェック代行の選び方にまとめました。


よくある質問
実施者について、担当者の方から特に多い質問に答えます。
- ストレスチェックの実施者とは誰のことですか?
-
検査の企画や結果の評価を担う医師・保健師などの専門職です。高ストレス者の判断など検査の中身に責任を持ちます。労働安全衛生法第66条の10に基づく役割です。
- 実施者研修は誰が受ける必要がありますか?
-
歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師が実施者になる場合です。厚生労働大臣が定める研修の修了が求められます。医師と保健師は研修を受けなくても実施者になれます。
- 人事担当者や社長は実施者になれますか?
-
医師などの資格がなければ実施者にはなれません。さらに解雇・昇進・異動を直接決める権限を持つ方は、検査の事務にも関われません。
- 実施者と面接指導の医師は同じ人でないといけませんか?
-
同じである必要はありません。面接指導は医師が行うと定められており、実施者以外の医師でも実施できます。職場を知る産業医に依頼すると、その後の措置まで一貫した助言が得られます。
- 社内に実施者がいない場合はどうすればいいですか?
-
外部の専門機関への委託で解決できます。委託先が医師・保健師を実施者として手配するため、自社で専門職を探す必要はありません。産業医のいない50人未満の事業場でも実施できます。
まとめ:実施者の確保が制度運用の出発点
ストレスチェックの実施者は、医師・保健師と研修修了の専門職に限られます。社内で確保できなくても、外部委託という現実的な道があります。
- 実施者=検査の中身を判断する専門職。資格と研修の要件あり
- 人事権を持つ人は実施の事務に関われない
- 複数体制なら共同実施者。外部委託でも産業医との連携が活きる
2028年4月の義務化拡大を控え、実施者探しは早い者勝ちの様相です。頼れる専門職が見つからないまま年度末を迎える前に、貴社の人数と受検方式をお聞かせください。実施者の手配から面接指導まで、無理のない体制を一緒に設計します。制度の詳細は厚生労働省 ストレスチェック制度のページで確認できます。
本記事は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、3〜20,000名規模・100社以上のストレスチェック実施を支援してきたストレスチェックサポートセンター編集部が、厚生労働省など公的資料に基づいて作成しています。
シー・システム株式会社は「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門 ネクストブライト1000)」に認定されています。












