適応障害で仕事を休む従業員に会社がするべきこととは?

きぶんがひどい

ここ数年、適応障害などの心の病による休職が増えてきています。今回は適応障害の症状や原因、従業員が休職を申し出た場合の申請手続きなどについてご紹介します。

目次

適応障害とは?

適応障害とは、強いストレスが原因となって発症し、日常生活が困難になる心の病です。そのストレス因子が除去されれば症状が消失する特徴を持っています。適応障害の原因には、異動や離婚などの生活の変化に対応できない場合や、仕事や家庭での問題に関する悩みが多いです。治療法には、カウンセリングや薬物療法などがあります。

適応障害の症状

適応障害の症状は、主に情緒面や行動面から引き起こされます。

情緒面の症状としては、抑うつ感不安感感情の高ぶり集中力の低下などがあります。行動面の症状としては、家に引きこもるもの忘れがひどくなる会話が少なくなるなどがあります。適応障害は誰にでも起こり得る身近なもので、罹患率は 5 %~ 20 %とも言われています。

従業員の休職の際に必要な手続きや流れ

従業員が適応障害を理由に休職したいと申請した場合、企業側が取るべきアクションや手続きの流れについてご紹介します。休職する従業員が自分で必要な手続きを調べて実行するのは困難なので、企業側がサポート体制を整えておく必要があります。

従業員が主治医によって適応障害と診断され、休職が必要とされた場合、診断書を基に状態を確認し、休職期間や今後の対応について話し合います。産業医がいる企業では、産業医と相談しながら進めるといいでしょう。

休業補償が受けられる場合の手続き方法

従業員が業務上の理由で休業する場合、以下の3つの条件を満たす場合に、労働災害(労災)として認定され、労働基準監督署から休業補償給付が支払われます。

  • 労災認定の対象となる精神疾患であること
  • 発病前の約6ヶ月間に業務による強い心理的負荷が認められること
  • 個人的な問題による発病ではないこと

参考:厚生労働省 精神障害の労災認定

休業補償申請の手順

3つの条件を満たす場合、以下の手順に従って休業補償を申請することで、補償を受けることができます。

  1. 企業は休業補償給付支払請求書と平均賃金算定内訳の事業主欄、医師証明欄を記入する。(医師証明欄の記入は従業員から証明書を提出してもらう必要があります。)
  2. 休業補償給付支払請求書を労働基準監督署に提出する。
  3. 労働基準監督署が該当従業員に支給・不支給の決定を行う(通知書が送付されます)。

労災が認められた場合、従業員の口座に休業補償が直接振り込まれます。

最終的に労災であるかどうかは、労働基準監督署が判断します。そのため、医師による証明書があっても、必ずしも労災認定になるわけではありません。

参考:厚生労働省 休業(補償)等給付傷病(補償)等年金の請求手続

傷病手当金が適用される場合の手続き

傷病手当金は、労災申請が通らなかった場合や労災認定までの期間中、または労災認定後の給付停止期間中に受け取ることができる給付金です。

精神疾患による労災認定率は約30%で、認定されるまでに7ヵ月から1年かかることがあります。そのため、労災申請中に傷病手当金を受け取ることを従業員に提案するのもいいでしょう。

ただし、休業補償と傷病手当金をどちらも受け取ることはできません。労災が認められ、休業補償が給付された場合、傷病手当金は健康保険に返還する必要があります。

傷病手当金を受給するための手続きは以下の手順から行うことができます。

  1. 休職する従業員が傷病手当金申請書を入手する(企業担当者から従業員に送付するパターンもあります)
  2. 従業員が主治医に意見欄の記入を依頼する
  3. 本人記入欄を従業員が記入する
  4. 企業の担当者が「事業主が証明する欄」を記入する
  5. 賃金台帳や勤務表などの必要添付書類を添えて、保険組合や共済組合などに郵送する
  6. 審査後、保険組合や共済組合などから労働者に傷病手当金が支給される

参考:全国健康保険協会岩手支部 傷病手当について

適応障害による休職後の対応について

従業員が復職する際には不安が大きいため、企業側がフォローを行うことが重要です。休職期間の終了が近づいてきたら、従業員の意向や健康状態を確認し、主治医や産業医の意見も聞きながら、職場復帰支援プランを作成します。企業担当者、復職する従業員、主治医の三者が把握し合意することが大切です。

復帰後の初期段階では、1対1の面談を頻繁に行うと良いでしょう。復職者は、自分が無理をしていることに気づかないことがあります。健康状態を確認し、業務内容や職場環境が適切かどうかを確認しましょう。

従業員に過度な負担がかからないように業務内容や量を調整しながら継続的にサポートすることが重要です。

適応障害による休職から復職できない場合

適応障害による休職期間の延長は法律で定められていません。そのため、企業ごとの就労規則に基づいて対応します。

企業によっては、休職期間満了時に従業員が復職できない場合、自然退職や普通解雇として扱う場合もあります。ただし、労災での休職の場合は自然退職として扱うことはできません。

休職した従業員が休職期間満了時に復職できない場合は、まず自社の就労規則を確認して従業員に伝えるよう心掛けましょう。

従業員の適応障害を防ぐための対策

ここからは、従業員の適応障害を防ぐための対策についてご紹介します。

ストレスチェックを定期的に実施する

ストレスチェックとは、従業員のストレス状態を把握する調査です。50人以上の従業員がいる事業場では、年に1回以上のストレスチェック実施が義務付けられています。

ストレスチェックにより、高ストレス状態にある従業員に対して産業医面談や仕事軽減措置などの対応が可能となり、メンタルヘルス不調の予防につながります。

さらに、ストレスチェックによって従業員自身も自分のストレス状態を認識できるメリットがあります。早期対策が打てるよう、ストレスチェックを活用して従業員の健康管理を行いましょう。

関連記事:担当者必見!!-ストレスチェック制度の概要とは?

職場改善研修を実施する

組織全体でメンタルヘルスケアの研修を行い、管理職が適切にメンタルケアを実行できるようにすることも望ましいです。具体的には、部長や課長、マネージャーなどの管理職が適切に部下に対してメンタルケアを実行できるようにするラインケア研修がおすすめです。

また、心理的安全性の高い組織を作るために、メンバー間や上下関係で思ったことや懸念点を共有しやすくすることで、適応障害の予防効果が期待できます。

研修に関する問い合わせはこちら

セルフケアの重要性を従業員に伝える

従業員にセルフケアの重要性を伝えることも大切です。セルフケアとは、従業員が自分自身のメンタルヘルスを健康に保つために行う対策のことを指します。

心地よいと感じることや、心身の回復ができることを知っておくことは、セルフケアにおいて非常に重要です。身近なセルフケア方法を提案し、従業員がストレスを管理するのに役立てましょう。

関連記事:セルフケアの重要性とは?

まとめ

今回は、今回は適応障害の症状や原因、従業員が休職を申し出た場合の申請手続きなどについてご紹介しました。

適応障害は、労働環境や周囲の環境など、本人以外に原因があることが多いため、企業側は環境の改善に努めることが重要です。年1回のストレスチェックなどを実施し、従業員のメンタルヘルスケア対策を行うことが大切です。

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