ストレスチェックの担当を任されて、「実施事務従事者って結局なに?自分がやっていいの?」と戸惑っていませんか。名前が硬くて身構えますが、役割さえ分かれば心配はいりません。
この記事では、実施事務従事者とは何かを、総務・人事のご担当者に向けてやさしく整理します。なれる人・なれない人の線引きや、守らなければならない秘密の扱いまで、実務の順番でお伝えします。
この記事でわかること
- 実施事務従事者とは何か、根拠となる法律
- 実施者・実務担当者との違い
- なれる人と、なれない人(人事権の壁)
- 課される守秘義務と、選任の進め方
ストレスチェックの実施事務従事者とは?
実施事務従事者とは、医師などの実施者を補助し、ストレスチェックの事務作業を担う人のことです。
調査票の配付や回収、データの入力、結果の通知、面接指導の案内。こうした事務を実施者の指示で進めます。ざっくり言うと、検査の中身を判断するのが実施者、その手足となって作業を回すのが実施事務従事者です。特別な資格は要りません。総務や人事のご担当者が務める例も多くあります。
実施者(医師・保健師など)の指示のもと、個人の結果を含む事務に従事する人です。資格は不問ですが、後述するとおり「なれない人」が法律で決められています。
制度の根拠は労働安全衛生法第66条の10です。検査の実施そのものは事業者の義務とされ、その運用ルールは厚生労働省の指針やマニュアルで具体化されています。なお令和10年(2028年)4月1日からは、50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務づけられます。担当者を整えておく意味は、これから一段と増していきます。

実施者・実施事務従事者・実務担当者の違い
3つの呼び名は役割がはっきり分かれており、個人の結果に触れてよい範囲が違います。
混同しやすいのが、実施者・実施事務従事者・実務担当者の3つです。実施者はストレスチェックを実施する専門職、実施事務従事者はその事務を補助する人、実務担当者は社内で制度全体を回す進行役を指します。下の表で、担える範囲を見比べてください。
| 呼び名 | 主な役割 | 個人結果に触れるか | 資格 |
|---|---|---|---|
| 実施者 | 検査の企画・結果の評価・高ストレス者の判定 | 触れる | 必要(医師・保健師など) |
| 実施事務従事者 | 調査票の回収・入力・結果通知などの事務 | 触れる | 不要 |
| 実務担当者 | 日程調整・案内・受検勧奨など制度の進行 | 原則触れない | 不要 |
ポイントは「個人の結果に触れるかどうか」です。実施者と実施事務従事者は結果を扱えますが、その分だけ重い秘密保持の責任を負います。一方、実務担当者は結果に触れない準備や案内であれば、人事部の社員でも担えます。
相談者うちは総務が2人だけです。日程の案内をする人と、結果を入力する人を分けないといけませんか?



結果に触れる作業を担う方を「実施事務従事者」として、あらかじめ決めておくのが安全です。同じ方が案内も入力も担っても問題ありません。大切なのは、結果を扱う人を明確にしておくことです。
私が支援した50名規模の会社でも、最初はこの3つの違いでつまずいていました。役割を一枚の表に整理しただけで、「誰が何をするか」がすっと決まりました。
実施事務従事者になれる人・なれない人
資格は不要ですが、従業員の人事を決める立場の人は実施事務従事者になれません。
ここが実務でいちばん間違えやすいところです。厚生労働省の指針では、検査を受ける従業員について、解雇・昇進・異動を直接決める権限を持つ監督的地位の人は、個人の結果を扱う事務に従事してはならないと示されています。結果を人事評価に使われるかもしれない。そんな不安があると、従業員は安心して受けられないからです。
以前、私が相談を受けた会社では、よかれと思って人事部長を担当に決めていました。あわてて担当を変えたことがあります。役職の重さで選ぶと、かえって法令違反となる可能性があるのです。
人事権を持つ役員・人事部長などは、個人結果を扱う実施事務従事者になれません。誰を担当にするかを決める前に、ここを必ず確認してください。
では、誰なら担えるのでしょうか。判断の目安を、なれる人・なれない人で並べます。
| なれる人の例 | なれない人の例 |
|---|---|
| 一般の総務・人事担当者(人事権なし) | 社長・役員 |
| 衛生管理者・産業保健スタッフ | 人事部長など人事を決める管理職 |
| 結果を扱う事務のために選任された社員 | 受検者の昇進・異動を直接決める上司 |
同じ「人事部」でも、人事を決める権限があるかどうかで結論が変わります。役職名ではなく、実際の権限で判断してください。迷う場合は、その作業に関わらない形にしておくと安全です。
実施事務従事者の主な役割と仕事内容
実施事務従事者の仕事は、検査の準備から結果通知の補助まで、事務の流れに沿って続きます。
実施者の指示を受けながら、実際に手を動かす役回りです。代表的な流れを、ステップで見てみましょう。
受検者の名簿を整え、調査票やWeb受検の案内を配ります。回収もれが出ないよう、対象者を管理します。
記入済みの調査票を回収し、結果データを入力します。この段階で個人の回答に触れるため、秘密の管理が求められます。
実施者が評価した結果を、本人に直接届くよう通知します。封かんや個別送付など、他人の目に触れない方法をとります。
高ストレスと判定された方へ、医師による面接指導を案内します。結果の記録は、決められた期間きちんと保管します。
高ストレス者への対応や面接指導の進め方は、高ストレス者への対応と面接指導の流れでくわしく解説しています。あわせて確認しておくと、案内の言葉に迷いません。


実施事務従事者に課される守秘義務と罰則
実施事務従事者には、知り得た従業員の秘密を漏らしてはならないという守秘義務があります。
個人の結果に触れる立場だからこそ、法律が重い責任を定めています。労働安全衛生法第105条は、ストレスチェックの事務に従事した人に対し、その実施で知った労働者の秘密を漏らしてはならないと規定しています。これは在職中だけでなく、担当を外れた後も続きます。
守秘義務に違反すると、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることがあります(労働安全衛生法第119条)。個人に対しての罰則である点に注意してください。
そのため、結果データはアクセスできる人をしぼり、施錠やパスワードで守る運用が求められます。「うっかり同僚に話してしまった」も違反になり得ます。担当者には、選任の時点で守秘義務の中身を伝えておいてください。罰則の全体像はストレスチェックの罰則でも整理しています。
研修や資格は必要?選任の進め方
実施事務従事者になるための国家資格や、義務づけられた研修はありません。ただし、守秘義務や個人情報の扱いを理解しておく必要があるため、事前に役割と注意点を共有してください。選任は、衛生委員会での調査審議を経て、誰が担うかを記録に残す形で進めると安心です。
担当者が置けないときは外部委託という選択
社内に適任者がいないときは、実施者と実施事務従事者をまとめて外部委託する方法が現実的です。
小さな会社ほど、「人事権のない担当者を確保しづらい」「結果の管理に自信がない」という悩みが出ます。外部の実施機関に任せると、結果に触れるのは守秘義務を負う専門の実施事務従事者だけになります。情報に触れる人をしぼれる安心感。社内のご担当者は、名簿を渡してやり取りを見守る程度に負担が収まります。
ストレスチェックサポートセンターは、9年連続で経済産業省の健康経営優良法人に認定され、リピート率は9割以上です。数名から6,000名規模まで100社を超える導入実績があり、プライバシーマークを継続取得して、個人情報は自社サーバーで管理しています。最短3日で受検をスタートでき、英語・ベトナム語の受検にも対応します。
委託先の選び方で迷うときは、代行サービスの選び方もあわせて参考にしてください。自社で担当を置く場合も、委託する場合も、まずは役割の線引きから整えるのが近道です。
まとめ:役割の線引きが、安心できる運用の第一歩
実施事務従事者とは、実施者を補助して結果を含む事務を担う人です。資格は要りませんが、従業員の人事を決める立場の人は担えません。守秘義務という重い責任もついてきます。だからこそ、最初に役割をはっきり決めておくことが安心につながります。
- 実施事務従事者は実施者の補助役で、資格は不要
- 人事を決める権限がある人は、個人結果を扱えない
- 守秘義務があり、違反には罰則が定められている
誰を担当にすべきか迷ったら、一人で抱え込まずに相談してください。面倒な役割整理を一緒に片づけ、ご担当者が本来の仕事に時間を使えるよう、伴走します。



「この人を担当にして大丈夫?」という確認だけでも歓迎です。お気軽にお声がけください。
よくある質問(FAQ)
実施事務従事者について、ご担当者からよくいただく質問をまとめました。
- 実施事務従事者とはどういう人ですか?
-
医師などの実施者を補助し、調査票の回収やデータ入力、結果の通知といった事務を担う人です。個人の結果に触れるため、守秘義務を負います。特別な資格は必要ありません。
- 人事担当者は実施事務従事者になれますか?
-
人事を決める権限がなければ、一般の人事・総務担当者でも務められます。一方、解雇・昇進・異動を直接決める立場の人は、個人結果を扱う事務に従事できません。役職名ではなく、実際の権限で判断してください。
- 実施者と実施事務従事者の違いは何ですか?
-
実施者は検査を企画し結果を評価する専門職で、医師や保健師などの資格が必要です。実施事務従事者は、その実施者を補助して事務作業を担う人で、資格は要りません。
- 実施事務従事者になるのに資格や研修は必要ですか?
-
国家資格や義務づけられた研修はありません。ただし守秘義務や個人情報の扱いを理解しておく必要があるため、選任の前に役割と注意点を共有してください。
- 実施事務従事者は外部に委託できますか?
-
外部委託できます。実施者とあわせて委託すると、結果に触れるのは守秘義務を負う委託先の実施事務従事者に限られ、社内の負担を大きく減らせます。社内に適任者がいない場合の現実的な選択肢です。
- 実施事務従事者の守秘義務に違反するとどうなりますか?
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労働安全衛生法にもとづき、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることがあります。担当を外れた後も義務は続くため、結果データの管理には継続した注意が求められます。
参考にした公式情報
本記事は、以下の公的情報をもとに作成しています。最新の内容は各サイトでご確認ください。
本記事は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、3〜20,000名規模・100社以上のストレスチェック実施を支援してきたストレスチェックサポートセンター編集部が、厚生労働省など公的資料に基づいて作成しています。
シー・システム株式会社は「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門 ネクストブライト1000)」に認定されています。












