「うちの会社は大丈夫だろうか」。従業員の長時間労働やメンタル不調を前に、そんな不安がよぎることはありませんか。安全配慮義務違反は、特別な悪意がなくても問われてしまう責任です。
この記事では、実際にどんな状況が違反とされるのかを、代表的な事例と裁判例で整理しました。あわせて、会社が負うリスクと、今日から始められる予防策まで現場目線でお伝えします。
この記事でわかること
- 安全配慮義務違反となる代表的な事例とパターン
- 裁判例から見える賠償の実際と、会社が負うリスク
- 違反を防ぐための実務ステップと相談先
安全配慮義務違反とは何か
安全配慮義務違反とは、会社が従業員の安全や健康を守る配慮を怠った状態をいいます。身体のケガだけでなく、心の不調も対象です。
そもそも安全配慮義務は、労働契約法第5条が根拠です。「使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。会社は従業員を雇う以上、その安全を守る配慮が求められます。
ここで言う「安全」には、過労やハラスメントによるメンタル不調も含まれます。職場のメンタルヘルス対策は、福利厚生ではなく法的な責務です。配慮を尽くしていれば、違反は問われません。
「危ないと分かる状況を放置した」「気づけたはずの不調を見逃した」。このような会社の落ち度が、安全配慮義務違反として責任を問われます。逆に言えば、予見して手を打っていれば守れる責任です。
安全配慮義務違反となる代表的な4つの事例
安全配慮義務違反は、大きく4つの場面で問われます。特別な業種に限らず、どの職場でも起こり得る落とし穴。一つずつ見ていきます。
まず押さえたいのは、「会社が危険を予見できたか」「結果を避ける手を打てたか」という2つの視点です。この観点で、よくある事例を見ていきます。
残業が月80時間を超える状態を放置し、従業員がうつ病や適応障害を発症するケースです。勤怠データで負担が見えていたのに対策を打たなかった場合、配慮を怠ったと判断されやすくなります。最も典型的な違反パターン。
パワハラやセクハラの相談を受けながら、調査や配置転換などの措置を取らなかったケースです。相談窓口に声が届いていた事実は、会社が予見できた証拠になります。放置がメンタル不調や休職を招くと、責任が問われます。
体調不良の訴えや欠勤の増加といったサインに気づきながら、業務量の調整をしなかったケースです。本人が「つらい」と伝えていた記録があると、なおさら不利になります。適切な配置転換や休養の判断が求められます。
健康診断やストレスチェックを実施せず、不調を把握する手段を持たないケースです。「気づく仕組みがなかった」こと自体が、配慮不足と見なされかねません。制度を回していない状態は、会社の立場を弱くします。
私が実施をご支援する中でも、事例1と事例3は特に相談が多い領域です。どちらも「見えていたのに動けなかった」という共通点があります。違反は悪意ではなく、対応の遅れから生まれるのだと実感しています。

裁判例に学ぶ違反のパターン
安全配慮義務違反は、過去の裁判例で会社の高額な賠償責任が認められてきました。特にメンタル不調や過労をめぐる判断が積み重なっています。
代表的なのが「電通事件」(参照: こころの耳)です。若手社員が長時間労働の末に自ら命を絶ち、会社の責任が争われました。最高裁判所は2000年の判決で、会社が業務量を把握し負担を軽減すべきだったと判断しています。長時間労働とメンタル不調の関係を、会社が予見すべき問題として明確にした事案。それが「電通事件」の意義です。
この判断は、その後の実務に大きな影響を与えました。会社は従業員の労働時間や健康状態を把握し、適切に手を打つことが求められます。「知らなかった」では済まされない、という考え方が定着しています。
現場の専門家も同じ視点を示しています。公認心理師の岩美正氏は、動画「職場のメンタルヘルス対策における安全配慮義務のポイント」で、義務の主体は事業者であり、日々従業員と接する管理監督者が現場での履行を担うと解説しています。リスク管理の体制づくりこそが違反の予防につながる、という指摘です(参照: YouTube解説動画)。
裁判で問われるのは「結果」より「過程」です。不調を防げなかった事実だけでなく、防ぐためにどれだけ手を尽くしたかが見られます。日々の記録が、会社を守る材料になります。
違反した会社が負うリスクと責任
安全配慮義務違反の中心となるのは、民法に基づく損害賠償責任です。刑事罰ではなく、民事上の賠償が問われます。
従業員が健康を損なった原因が会社の配慮不足にあると認められると、賠償を求められることがあります。対象は、治療費や休業中の損害、精神的苦痛への慰謝料など多岐にわたります。過労やメンタル不調の事案では、賠償額が高額になる傾向もみられます。
会社が負うのは、金銭面の負担だけではありません。失う信用と、現場への影響も見過ごせません。主なリスクを整理してみます。
| リスクの種類 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 損害賠償・慰謝料 | 治療費・休業損害・精神的苦痛への慰謝料の支払い |
| 社会的信用の低下 | 報道や口コミによるイメージ悪化・取引への影響 |
| 採用・定着への打撃 | 「働きにくい会社」という評判で人が集まらない |
| 現場の士気低下 | 同僚の不安や不信感が広がり、生産性が下がる |
健康診断やストレスチェックを実施していなかった事実は、配慮を怠った証拠として不利に働く恐れがあります。「制度を回していなかった」という一点が、会社の立場を弱くしかねません。罰則の全体像はストレスチェックの罰則でも整理しています。
ここまで読むと、安全配慮義務を軽く見るのは危険だと伝わったはずです。とはいえ、過度に恐れる話でもありません。やるべきことを順番に整えれば、会社は十分に守れます。自社だけでの対応に不安があれば、専門の代行サービスに相談する手もあります。まずは気軽にご相談ください。
ストレスチェックが違反予防の要になる理由
ストレスチェックは、安全配慮義務違反を防ぐための具体的な手段です。不調の芽を早く見つける「気づける仕組み」をつくれます。
違反の多くは、不調を予見できなかった、あるいは見逃したことから生まれます。メンタル不調は、本人も周囲も気づきにくいのが難しいところです。定期的に心の状態を可視化できれば、対応の遅れを防げます。
相談者ストレスチェックをやっていれば、安全配慮義務違反は防げるのでしょうか。実施さえすれば安心、と考えてよいですか。



実施は大切な一歩ですが、それだけでは足りません。高ストレス者への面接指導や職場改善までつなげて、はじめて配慮を尽くした記録になります。「実施して終わり」にしないでください。
2028年4月からは、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます。2025年5月に公布された改正労働安全衛生法で、施行日は令和10年4月1日と定められました。出典は厚生労働省の公表資料です。小規模な会社も、早めの準備が求められます。
制度の根拠は、労働安全衛生法第66条の10にあります。実施から面接指導、職場改善までを一連の流れで回すこと。それが、安全配慮義務の履行を裏づける記録になります。面接指導の流れもあわせて押さえておくと安心です。
安全配慮義務違反を防ぐ実務ステップ
違反は、次の4ステップで体制を整えると着実に防げます。ストレスチェックを軸に、対応の流れを設計するのがコツです。
まず、勤怠と健康診断・ストレスチェックの結果で従業員の状態を可視化します。負担の偏りや不調のサインを、データで早めにつかんでください。予見できる体制づくりが、すべての出発点です。
高ストレスと判定された人には、医師による面接指導を案内します。申し出があれば、速やかに機会を設けてください。ここを飛ばすと、配慮を怠ったと見なされかねません。
医師の意見をふまえ、業務量や配置を調整します。集団分析で負担の大きい部署が見えたら、職場環境そのものを見直してください。予防の動きが、配慮の質を高めます。
いつ・何を行ったかを記録に残します。実施から改善までの履歴が、いざというとき会社を守ります。記録こそが、配慮を尽くした何よりの裏づけです。
この4つを毎年同じ流れで回すと、体制が安定します。高ストレス者への具体的な向き合い方は高ストレス者への対応で詳しく扱っています。あわせてご覧ください。


従業員から「訴えたい」と言われたときの対応
従業員から不満や相談を受けたら、まずは丁寧に話を聴くことが第一です。対立を避け、事実を確認する姿勢が、その後の展開を大きく左右します。
従業員側の相談先には、労働基準監督署や労働局、弁護士などがあります。会社としては、外部に持ち込まれる前に社内で誠実に対応することが望まれます。記録を確認し、必要な配慮を取ってきたかを冷静に振り返ってください。
大切なのは、トラブルが起きてから慌てないことです。日頃から実施と対応の記録を残しておけば、「会社は配慮を尽くしていた」と示せます。予防こそが、最大の防御。日々の積み重ねがものを言います。
外部委託で違反予防の体制を整える
外部委託は、安全配慮義務違反を抜け漏れなく防ぐための現実的な選択肢です。専門家が制度に沿って運用するため、対応の質が安定します。
自社実施だと、面接指導の案内忘れや記録の不備が起きがちです。兼務の担当者が手作業で進めると、どうしても抜けが生まれます。委託すれば、実施から記録の保管までを一連の仕組みで回せます。
当社は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定されています。数名〜6,000名規模まで、100社以上の実施実績があります。リピート率は9割以上。安全配慮義務に直結する運用を、毎年安心して任せていただいています。
個人情報は、プライバシーマークを取得した自社サーバーで管理しています。Web受検・紙受検・併用に対応し、英語・ベトナム語の受検も可能です。最短3日で受検をスタートできます。委託先の選び方は代行サービスの選び方もご覧ください。
2028年4月からは50人未満の事業場も義務化の対象です。早めに委託の仕組みを整えると、違反予防と義務化対応を同時に進められます。「気づける仕組み」を、無理なく自社に組み込めます。
よくある質問(FAQ)
安全配慮義務違反について、担当者からよくいただく質問をまとめました。日々の判断の参考にしてください。
- 安全配慮義務違反に罰則はありますか
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刑事罰のような直接の罰則ではなく、民法に基づく損害賠償責任が中心です。従業員が健康を損ない、会社の配慮不足が認められると、賠償を求められる可能性があります。
- 慰謝料や損害賠償の相場はどのくらいですか
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事案ごとに大きく異なり、一律の相場はありません。過労やメンタル不調による重い結果では、治療費や休業損害、慰謝料が積み上がり高額になる傾向があります。個別の判断は弁護士など専門家にご確認ください。
- どんな状況が安全配慮義務違反になりますか
-
会社が危険や不調を予見できたのに、必要な手を打たなかった状況です。長時間労働の放置、ハラスメントへの無対応、不調のサインの見逃しなどが代表例にあたります。
- ストレスチェックを実施すれば違反を防げますか
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実施は重要な一歩ですが、それだけでは不十分です。高ストレス者への面接指導や職場改善まで含めて対応してください。実施から対応までの流れが、配慮を尽くした記録になります。
- 50人未満の会社にも安全配慮義務はありますか
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あります。安全配慮義務は会社の規模を問いません。ストレスチェックは2028年4月から50人未満も義務化されますが、配慮の責任は義務化の前から変わらず存在します。
- 管理職にも安全配慮義務の責任はありますか
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あります。日々従業員と接する管理監督者は、現場で義務を担う立場です。部下の不調のサインに気づいたら、放置せず会社の窓口につないでください。
まとめ
安全配慮義務違反は、長時間労働やハラスメント、不調の放置といった、どの職場でも起こり得る場面で問われます。共通するのは「予見できたのに動かなかった」という落ち度です。
会社を守る鍵は、気づける仕組みと、対応の記録です。ストレスチェックを実施から面接指導までつなげ、その履歴を残しておくこと。この積み重ねが、違反を防ぐ何よりの備えになります。
もし自社だけでの対応に不安があるなら、専門の代行サービスに任せる手があります。実施から記録の保管まで仕組みで回せば、担当者は本来の仕事に時間を使えます。迷ったら、まず相談してください。貴社の状況に合わせて、最適な進め方を一緒に考えます。
本記事は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、3〜20,000名規模・100社以上のストレスチェック実施を支援してきたストレスチェックサポートセンター編集部が、厚生労働省など公的資料に基づいて作成しています。
シー・システム株式会社は「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門 ネクストブライト1000)」に認定されています。












