ストレスは現代社会において避けられないものですが、過度なストレスは心身の健康に悪影響を及ぼします。何もせずに放置することは危険です。今回は、ストレスチェックで高ストレス判定になった場合の対策と、医師による面接指導の必要性や流れについてご紹介します。
高ストレス者を選ぶ基準
ストレスチェック制度は、従業員のストレスの状況を調べて、自分のストレスに気づかせることを目的としています。ストレスチェックでは、一般的に職業性ストレス簡易調査票という選択式の質問票を使って従業員のストレスの程度を点数化します。厚生労働省の『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』によると、高ストレス者とは
①調査票のうち、『心身のストレス反応』の評価点数の合計が高い者
②調査票のうち、『心身のストレス反応』の評価点数の合計が一定以上の者であって、かつ、『仕事のストレス要因』及び『周囲のサポート』の評価点数の合計が著しく高い者
とされています。
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事業者は衛生委員会や実施者からの助言などを参考にして、高ストレス者と判断する点数を決定します。また、数値基準だけでなく、補足的面談を行って高ストレス者を選ぶことも問題ないとされています。補足的面談は、すぐに対処が必要かどうかを確かめたり、数値以外の面から評価するために行います。
高ストレス者になったらどうすればいい?
もし自分自身が高ストレス者だった場合、何もせずに放置することは危険です。まずは自分で生活習慣や考え方を見直すことが大切です。例えば、
- 睡眠時間や食事内容を改善する
- 趣味やリラクゼーション法で気分転換する
- 家族や友人など信頼できる人に相談する
- ポジティブなことに目を向ける
などが有効です。
しかし、自分だけで解決できない場合や、仕事や日常生活に支障が出る場合は、専門家の助けを求めることが必要です。その際に利用できるのが医師による面接指導です。
医師による面接指導とは、ストレスチェックの結果から、面接指導の対象になった従業員に対して、事業主が医師から面接指導を受ける機会を提供する制度です。この制度の目的は、従業員のメンタルヘルス状態を詳しく診断し、適切なアドバイスや治療方針を示すことで、メンタルヘルス不調やうつ病などの早期発見・早期治療につなげることです。
従業員が常時50人以上いる事業場には産業医を置かなければならないため、基本的には事業者が選任した産業医が面接指導を実施します。50人未満で産業医がいない事業場がストレスチェックを実施し、医師による面接指導を行いたい場合は、地域産業保健センターのサービスを受けることができます。
弊社では、面接指導を行う医師のご紹介も可能ですので、是非お問い合わせください。
医師による面接指導の流れ
医師による面接指導を受けたい場合は、まずは事業主に申し出ます。事業主は従業員の申し出を受けたら速やかに医師と連絡を取り、面接指導の日程や場所を調整します。そして、従業員は事前に予約した日時に医師と面談します。面談では、
- ストレスチェックの結果の確認
- ストレス源やストレス反応の評価
- 心理テストや身体検査などの補助的検査
- ストレス対処法や生活改善法の指導
- 必要な場合は精神科・心療内科等への紹介
などが行われます。面談後は、医師から従業員へ医師面接指導報告書が交付されます。この報告書には、
- 面接指導日時・場所・時間
- 面接指導内容(ストレス源・ストレス反応・補助的検査結果等)
- 面接指導結果(診断名・治療方針等)
- 今後の対応(再診予定・紹介先等)
などが記載されます。
事業者は、医師が行った面接指導の結果とその後の対策に関する書類を1ヵ月以内に受け取ります。そして、医師の助言を参考にして、就業環境の改善やストレスの低減につながる措置を講じます。例えば、労働時間の調整や業務内容の見直しをするなどです。事業者は高ストレス者の健康管理に努めることが必要です。書類は5年間保管することになっています。
就業上の措置を実施する際は、従業員と十分な協議を行いましょう。本人が納得して、心身ともに健全に働けるようにサポートすることが大切です。また、措置を行った後も、定期的に勤務状況を確認してください。
面接指導の結果を理由に、解雇・退職強要や、本人の同意なしに職位変更・配置転換などをすることは禁じられています。また、事業者は面接指導実施後、労働基準監督署に報告書を提出します。報告書は決められた形式で作成する必要があります。詳しくは下記のリンクからご確認ください。
まとめ
今回は、ストレスチェックで高ストレス判定になった場合の対策と、医師による面接指導の必要性や流れについてご紹介しました。
面接指導を受けることで、従業員は自分のストレスに対処する方法を学び、メンタルヘルス不調の改善や予防につなげることができます。産業医との連携も強化して、従業員の中から高ストレス者が出ないような職場環境を整えていきましょう。