この記事でわかること
- 受検対象者を決める「常時使用する労働者」の2つの要件
- パート・アルバイト・契約社員・派遣社員が対象になるかの判断
- 対象者を確定したあとの案内手順と、受検率を上げる工夫
毎年のストレスチェック、「結局、誰に受けてもらえばいいの?」と迷いますよね。パートや派遣社員の扱いは、総務・人事のご担当者がいちばんつまずきやすいところです。この記事では、ストレスチェックの対象者を、担当者の目線で整理します。専門用語はそのつど噛み砕いて説明します。
ストレスチェックの対象者とは?まず結論を整理します
対象者は、原則として「常時使用する労働者」です。正社員かどうかという肩書では決まりません。
ストレスチェックは2015年12月から、労働安全衛生法第66条の10にもとづき、事業者に実施が義務づけられています。この「実施する義務」を負うのは会社側です。
そのうえで、誰を受検の対象に含めるかは、雇用形態の名前ではなく実態で判断します。厚生労働省の指針では、次章の2つの要件で「常時使用する労働者」かどうかを見ます。ざっくり言うと、契約の長さと働く時間の2点です。
「常時使用する労働者」を決める2つの要件
対象者かどうかは、契約期間と労働時間という2つの要件を両方満たすかで決まります。
判断の軸を表に整理しました。下の2つをどちらも満たす人が、法的な受検対象者です。

| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①契約期間 | 期間の定めがない、または1年以上使用される見込み(更新で1年以上になる人を含む) |
| ②労働時間 | 1週間の労働時間が、同じ仕事の通常の労働者の4分の3以上 |
たとえば、契約は1年更新でも実際は数年働いている人。週の所定労働時間がフルタイムの社員の4分の3以上ある人。この2つに当てはまれば、雇用形態が何であっても対象者になります。
逆に、どちらか一方でも欠ければ、法的な義務の対象からは外れます。次の章で、雇用形態ごとの具体例を見ていきます。
【雇用形態別】パート・アルバイト・派遣の判断
雇用形態の名前ではなく、先ほどの2要件を満たすかどうかで一人ずつ判断します。
現場にはいろいろな働き方の従業員がいます。ここでは迷いやすいケースを、形態別に分けて整理します。
パート・アルバイト・契約社員の判断
2要件を満たせば、パートもアルバイトも契約社員も、すべて受検対象者です。
「1年以上使用される見込み」があり、「週の労働時間が通常の労働者の4分の3以上」。この短時間労働者は、呼び名にかかわらず対象に含めます。
一方、週の労働時間が4分の3未満の人は、法的な義務の対象外です。ただし、職場全体のメンタルヘルスケアを進めたい場合や、集団分析の精度を上げたい場合は、会社の判断で受検の機会を用意してもかまいません。実務でお手伝いするなかでも、「対象外の人も希望者は受けられるようにした」という会社は少なくありません。
派遣労働者の取り扱い
派遣社員のストレスチェックは、雇用関係のある「派遣元(派遣会社)」に実施義務があります。
そのため、派遣先である自社のストレスチェックに、派遣社員を対象者として含める必要は、法的にはありません。ここは混同しやすいので注意してください。
ただし、派遣社員が働く職場のストレス状況を正しくつかむには、派遣先での集団分析や派遣元との連携を考えておくと安心です。私が相談を受けた中では、ストレスチェックの受検は派遣先である自社内で他の社員と同様に実施し、請求先を派遣元にするというケースがありました。職場環境の改善は、派遣先の協力があってこそ前に進みます。
対象外になるケースと、受検は強制できない点
労働時間が4分の3未満の人や、派遣先から見た派遣社員は対象外です。そして、対象者でも受検を強制はできません。
ここを取り違える担当者が多いので、2つに分けて整理します。まず「対象外になる人」。次に「対象者でも受検しない自由がある」という点です。
| ケース | 受検対象(法的義務) |
|---|---|
| 週の労働時間が4分の3未満の短時間労働者 | 対象外(自主的な受検は可) |
| 派遣社員(派遣先から見た場合) | 対象外(実施義務は派遣元) |
| 休職中の労働者 | 受検が難しい場合は対象から外せる |
| 役員(労働者にあたらない場合) | 対象外 |
会社には「実施する義務」がありますが、労働者側に「受検する義務」はありません。受検するかどうかは本人の意思に委ねられています。受検しなかったことを理由に、解雇や不当な配置転換などの不利益な取扱いを行うことは、法律で固く禁じられています。
だからこそ、対象者全員に受検の機会を案内した記録を残すことが大切です。「案内はしたが本人が受けなかった」状態と、「そもそも案内していない」状態は、会社の責任の重さがまったく違います。
対象者を確定したあとの実務手順
対象者が決まったら、安心して受けてもらえる体制づくりに移ります。
デリケートな個人のメンタルヘルスを扱うため、丁寧な説明とプライバシーへの配慮が欠かせません。基本の流れを整理しました。
- 衛生委員会で、対象者の範囲・実施時期・手順を審議し、社内規程として明文化する
- 対象者へ事前に案内し、結果の通知方法とプライバシー保護を明確に伝える
- WEB受検で、スマートフォンやPCからいつでも回答できる環境を整える
- 高ストレス者から申し出があったときに備え、医師の面接指導の機会を用意する
設置義務のない小規模事業場では、1の衛生委員会を従業員代表との話し合いの場で代えられます。2の案内では、結果が実施者(産業医など)から本人へ直接通知されること、本人の同意がない限り会社が中身を見ないこと、不利益な取扱いが禁止されていることを伝えてください。あわせて安全配慮義務にも触れておくと、従業員の納得感が高まります。安全配慮義務とは、ざっくり言うと「会社が従業員の心と体の安全に気を配る責任」のことです。受検率を上げる具体策は『ストレスチェックの受検率を上げる方法』にまとめました。
集団分析における対象者の扱い
集団分析は、対象者を部署などのまとまりで見て、職場の課題を可視化するために行います。
ストレスチェックは個人のケアだけでなく、組織の状態を映す集団分析を行ってこそ活きてきます。部署ごとの総合健康リスクを算出し、全国平均(100)と比べて職場の状況を評価します。

ただし、集団分析は原則として10人以上のまとまりで行います。対象者が少ない部署では個人が特定される恐れがあるためです。人数が少ないときは、本人の同意を得るか、近い部署と合算して分析する配慮が求められます。集団分析の活かし方は『ストレスチェックにおける集団分析』で詳しく紹介しています。
2028年の義務化拡大と対象者の関係
令和10年(2028年)4月1日から、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます。
これまで50人未満の事業場は、当分の間の努力義務とされてきました。しかし厚生労働省によると、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法で方針が変わりました。施行日は令和10年4月1日です。
小規模な会社がこれから実施を始めるときも、対象者の考え方は同じです。常時使用する労働者を2要件で見極め、パートや契約社員も実態で判断します。まずは対象者リストの作成から、無理のない範囲で準備を進めてください。
実際に小規模な事業場のご担当者からは、「誰を対象にするかの線引きが不安」という本音をよくうかがいます。最初の対象者の確定こそ、外部の専門家に相談する価値が大きいところだと感じています。
対象者の判断も実施も、外部委託で楽になります
外部委託を使うと、対象者の線引きから案内・集計・分析まで、担当者の負担を大きく減らせます。
対象者の判断は、雇用形態が多い職場ほど手間がかかります。外部委託なら、担当者が用意するのは従業員リストのみ。対象者の整理から受検案内、結果の通知までを委託先が引き受けます。
ストレスチェックサポートセンターは、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、自社でも健康経営を実践してきた当事者です。導入実績は100社以上、500〜20,000名規模まで対応してきました。リピート率は9割以上。個人情報はプライバシーマークのもと自社サーバーで管理し、最短3日で受検をスタートできます。英語・ベトナム語にも対応しているため、外国人スタッフを含む職場でも安心です。委託先選びの視点は『高ストレス者への対応』とあわせて整理すると、運用後のイメージがつかみやすくなります。
よくある質問(FAQ)
最後に、担当者の方からよく寄せられる質問にお答えします。
- 従業員が受検を拒否したら義務違反になりますか?
-
いいえ、なりません。受検は労働者に義務づけられたものではなく、会社が強制することはできません。受検を拒否した人がいても、それを理由に不利益な取扱いを行うことは法律で禁止されています。ただし会社には実施する義務があるため、対象者全員に受検の機会を案内した記録を残しておいてください。
- パートの「1年以上」はどう判断しますか?
-
過去に引き続き1年以上雇用されている場合はもちろん、契約期間の定めがあっても「更新により1年以上使用される見込み」も含みます。当初の契約が短くても、更新が繰り返され1年以上になる見込みなら、その時点で対象者に含めるのが実務上適切です。
- 派遣社員は自社で受けさせる必要がありますか?
-
法的な実施義務は、雇用関係のある派遣元(派遣会社)にあります。派遣先である自社が対象者に含める必要はありません。ただし職場の状況を正しくつかむため、派遣先での集団分析や派遣元との連携は考えておくとよいでしょう。
- 役員や休職中の人は対象になりますか?
-
労働者にあたらない役員は、原則として対象外です。休職中の人は、受検が難しい場合に対象から外せます。判断に迷うときは、衛生委員会で扱いを決めて社内規程に明記しておくと、毎年の運用が安定します。
- 50人未満の会社も対象者を決める必要がありますか?
-
はい、令和10年(2028年)4月1日から50人未満の事業場も義務化されます。対象者の考え方は規模にかかわらず同じで、常時使用する労働者を2要件で判断します。施行前の今のうちに、対象者リストの作り方を整えておくと安心です。
まとめ
ストレスチェックの対象者は、原則として「常時使用する労働者」です。判断の軸は、契約期間と労働時間という2つの要件にあります。この2点を満たせば、パートもアルバイトも契約社員も対象になります。一方、派遣社員の実施義務は派遣元にあり、派遣先から見ると対象外です。
そして、対象者でも受検を強制はできません。だからこそ、全員へ案内した記録を残すことが会社を守ります。令和10年(2028年)の義務化拡大も見据えて、自社の対象者を早めに整理しておきましょう。
誰が対象になるかの線引きに迷ったら、一人で抱え込む必要はありません。実務に即した進め方を、一緒に整理していきましょう。
本記事は、9年連続で経済産業省「健康経営優良法人」に認定され、3〜20,000名規模・100社以上のストレスチェック実施を支援してきたストレスチェックサポートセンター編集部が、厚生労働省など公的資料に基づいて作成しています。
シー・システム株式会社は「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門 ネクストブライト1000)」に認定されています。


