ストレスは、現代社会においての大きな問題です。適度なストレスは、やる気や集中力を高める効果がありますが、過度なストレスは、不安やイライラ、抑うつなどのメンタルヘルス不調を引き起こす可能性があります。メンタルヘルス不調は、個人の健康や生活に影響するだけでなく、職場の生産性や安全性にも悪影響を及ぼします。
そこで、労働者のストレス状況を把握し、メンタルヘルス不調の予防や職場環境の改善に役立てるために、ストレスチェック制度というものがあります。この制度は、2015年12月に施行された「産業医等による特定保健指導等及びストレスチェック等に関する法律」(通称:改正労働安全衛生法)に基づいています。
では、具体的にこの制度はどういうものなのでしょうか?今回は、ストレスチェック制度の流れとポイントについてご紹介します。
そもそもストレスチェック制度とは
ストレスチェック制度とは、事業者が常時使用する労働者に対して年1回以上行うもので、医師や保健師などが実施します。最大の目的は、労働者自身が自分のストレス状況に気付き、メンタルヘルス不調を未然に防止することです。また、検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげることも目指しています。
この制度は、常時50人以上の労働者を使用する事業場で実施義務があります。ただし、常時50人未満でも努力義務があるため、全ての事業場で推奨されています。
実施方法は、匿名かつ自由意思で行われます。検査内容は、厚生労働省告示第39号別表第1号(通称:ブリーフジョブストレス質問票)または「同第2号」(通称:簡易型ジョブストレス質問票)を用いたアンケート式です。検査結果において高ストレス者と判断された場合、医師または保健師から面接指導を受けることが可能です。
ストレスチェック制度のメリット
ストレスチェック制度は、従業員・事業者・社会にとって様々なメリットがあります。
従業員にとっては、自分のストレス状況を客観的に把握し、自己管理や相談を行うきっかけになります。また、面接指導を受けることで、ストレスの原因や対処法を専門家からアドバイスを受けることができます。これにより、メンタルヘルス不調の予防や改善、仕事や生活の質の向上につながります。
事業者にとっては、労働者のストレス状況を把握し、職場環境の改善策を検討することができます。また、従業員のメンタルヘルス不調を防止することで、欠勤や離職率の低下、生産性や安全性の向上など経営上の利益にも貢献します。
社会にとっては、ストレスチェック制度が普及することで、メンタルヘルス不調による社会的コスト(医療費・失業給付金・障害年金など)の削減や国民健康水準の向上に寄与します。
ストレスチェック制度の注意点
ストレスチェック制度を実施する際には、いくつかの注意点があります。
まず、検査結果は、個人に対して匿名で通知されます。事業者は、個人を特定できない形で集団分析を行います。また、面接指導を受けた場合、医師または保健師が守秘義務を負います。これらは、従業員のプライバシー保護や信頼関係の確保に重要です。
次に、検査結果や面接指導の内容は、労働者に対する不利益な取扱いや差別的な措置につながらないように注意しなければなりません。例えば、高ストレス者と判断された従業員を配置転換や降格処分にすることは違法です。
最後に、検査結果や面接指導の内容は、職場環境改善のための参考資料として活用しなければなりません。例えば、ストレス要因として多く挙げられた項目を改善策の検討や実施につなげることが望ましいです。
ストレスチェック制度の課題
ストレスチェック制度は、2015年12月から施行されていますが、その実施状況はどうなっているでしょうか?厚生労働省の調査によると、2021年度における常時50人以上の事業場での実施率は、約95%でした。しかし、常時30人未満では、約50%にとどまっています。
厚生労働省:令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況
また、実施率だけでなく、質的な側面も重要です。ストレスチェック制度を形式的に行うだけではなく、従業員・事業者・医師・保健師が協力して取り組むことが必要です。そのためには、制度の目的や意義を理解し、積極的に参加すること、検査結果や面接指導を真摯に受け止め、自己管理や相談を行うこと、職場環境改善のために具体的な改善策を検討し、実施することなどが求められます。
まとめ
今回は、ストレスチェック制度の概要やメリット、注意点、実施状況などを紹介しました。皆さんもぜひストレスチェック制度を活用してみてください。